2026年10月30日、第67回障害福祉報酬改定検討チームが開催されました。
今回の検討対象は、
- 自立訓練
- 自立生活援助
- 地域移行支援
- 地域定着支援
- 地域生活支援拠点等
- 共同生活援助
- 強度行動障害の状態にある方等への支援
です。
厚生労働省・こども家庭庁から公表された資料は全161ページに及び、地域生活への移行・継続からグループホームの運営、強度行動障害のある方への支援まで、多くの見直し案が示されています。
特に共同生活援助では、
- 大規模住居等減算の見直し
- 自己評価・外部評価の制度化
- 地域連携推進会議の開催頻度の見直し
- 医療的ケア等への支援
- 強度行動障害の状態にある利用者への評価
など、事業所運営へ直接影響する可能性のある論点が並びました。
ただし、最初に確認しておきたい点があります。
今回示された内容は、令和9年度障害福祉報酬改定に向けた検討段階の案です。
現時点で、
- 地域連携推進会議が年2回に変更された
- 新しい外部評価が義務化された
- 8人以上のグループホームが一律に新たな減算対象になった
- 重度障害者支援加算の対象が拡大された
ということではありません。
この記事では、第67回資料の全体像を把握できるよう、特に実務への影響が大きい論点を中心に整理します。
この記事で確認できる内容
第67回の資料は非常に広範囲です。
すべてを最初から読む必要はありません。自事業所や関心分野に関係するところから確認してください。
- 自立訓練の見直し
- 自立生活援助・地域移行・地域定着支援
- 地域生活支援拠点等
- 共同生活援助の大規模住居等減算
- グループホームの自己評価・外部評価
- 地域連携推進会議
- 強度行動障害の状態にある方への支援
- 第67回全体から見える方向性
- 現時点で事業所が確認しておきたいこと
主要論点については、今後個別記事でも詳しく解説します。
第67回では何が検討されたのか
第67回障害福祉報酬改定検討チームは、2026年10月30日に開催されました。
厚生労働省の公式議題は、
「令和9年度障害福祉報酬改定に向けて(自立訓練、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、地域生活支援拠点等、共同生活援助、強度行動障害の状態にある者等への支援)」
です。
今回の資料を見ると、一つの大きな流れがあります。
それは、
施設・病院等から地域へ移ることだけではなく、地域へ移った後も安心して暮らし続けられる支援体制をどう作るか
という視点です。
自立訓練、自立生活援助、地域移行・地域定着支援、地域生活支援拠点、共同生活援助、強度行動障害支援は、一見すると別々の制度です。
しかし今回の資料では、それぞれが「地域生活」という一本の線でつながっています。
1.自立訓練で示された主な見直し
自立訓練については、大きく4つの論点が示されています。
高次脳機能障害のある方への評価
自立訓練では、高次脳機能障害のある利用者について、現在の利用実態や必要な専門的支援を踏まえ、報酬評価の在り方を見直すことが検討されています。
高次脳機能障害では、
- 記憶
- 注意
- 遂行機能
- 社会的行動
など幅広い課題が生じる場合があります。
身体機能だけを見るのではなく、生活・社会参加まで含めた支援が必要になります。
医療・介護・障害福祉をまたぐ「切れ目のないリハビリテーション」
病院でのリハビリテーションが終わった後、地域で障害福祉サービスを利用する際に、支援内容が途切れないことも論点となっています。
医療機関から自立訓練等へ移る際、
それまでのリハビリテーション内容や本人の生活機能をどのようにつなぐか
という視点です。
住宅施策との連携
自立訓練利用者等が地域で生活するには、訓練だけではなく住まいも必要です。
今回、居住サポート住宅などの住宅施策との連携を強化し、地域移行をより進める方向も示されています。
看護職員の配置要件
自立訓練(機能訓練)では、実際のサービス提供時間や利用者の状況を踏まえ、看護職員の配置要件を柔軟化する方向も検討されています。
ただし、具体的な基準変更はまだ決まっていません。
2.自立生活援助・地域移行・地域定着支援
ここでは、地域で生活する人を支える相談・伴走支援の見直しが中心です。
日常生活支援情報提供加算の対象拡大
現在、自立生活援助・地域定着支援の「日常生活支援情報提供加算」は、利用者の生活状況等について精神科病院等へ情報提供した場合に評価されています。
第67回では、情報提供先を精神科病院等だけでなく、より広く病院・診療所へ拡大する方向が示されました。
背景には、障害のある方の高齢化や、生活習慣病・慢性疾患など継続的な健康管理が必要な利用者の増加があります。
女性自立支援施設の入所者も地域移行支援の対象へ
現行の地域移行支援では、障害者支援施設や精神科病院などの入所・入院者が主な対象となっています。
今回、
女性自立支援施設に入所している障害のある方についても、地域移行支援の対象へ加える案
が示されました。
資料では、女性自立支援施設に入所する人の中にも、精神障害者保健福祉手帳を所持する人や通院歴のある人などが一定数存在することが示されています。
地域で生活したいという希望がある場合、住居の確保や地域資源との調整が必要になるためです。
3.地域生活支援拠点等は「配置しやすくする」方向へ
地域生活支援拠点等は、
- 緊急時の相談・受入れ
- 地域移行
- 一人暮らしやグループホーム等の体験機会
- 専門的人材の確保・育成
- 地域の関係機関の連携
などを担う地域の仕組みです。
2024年度から障害者総合支援法に位置付けられ、市町村には整備に関する努力義務が設けられています。
拠点コーディネーターの配置要件を柔軟化する案
現在、地域生活支援拠点等機能強化加算では、情報連携等を担う拠点コーディネーターを常勤で配置することが要件となっています。
一方、地方では、
- 支援対象者が広域に分散している
- 月100回の支援回数を安定して確保しにくい
- 常勤職員を確保すること自体が難しい
といった課題があります。
第67回では、
2人目以降の配置や、地域事情から月100回の支援回数を安定して確保することが難しい場合には、非常勤配置を可能にするなど配置要件を柔軟化する案
が示されました。
これは「拠点機能を弱める」というより、地域差を踏まえて拠点コーディネーターを配置しやすくする方向です。
4.共同生活援助|大規模住居等減算を見直す案
今回の資料で、共同生活援助に関して特に影響が大きい論点の一つが、大規模住居等減算です。
厚生労働省は、グループホームについて、
地域の中で家庭的な生活環境を確保する
という制度本来の考え方を改めて示しています。
一方、住居が大規模化すると、
- 入所施設に近い居住形態になりやすい
- 支援が画一的になりやすい
- 利用者への見守り密度が下がりやすい
- 強度行動障害や医療的ケア等への個別対応が難しくなる場合がある
といった課題が指摘されています。
資料では、入居定員8人以上の共同生活住居が、2015年度の2,066住居から2024年度には6,655住居となり、この10年間で3.2倍に増加したことも示されています。
減算率そのものを見直す方向
現行では、
- 入居定員8人以上の共同生活住居
- 一体的運営で入居定員合計21人以上となる場合
- 日中サービス支援型では一定の大規模住居
などについて、大規模住居等減算があります。
第67回では、
- 8人以上の住居を複数有する事業所
- 21人以上の大規模住居
- 一体的運営によって21人以上となるケース
などについて、減算率の水準を見直す方向が示されています。
また、現在は減算対象となっていない日中サービス支援型共同生活援助の入居定員8人以上20人未満の住居についても、減算対象に加える案が示されました。
ただし、具体的な減算率はまだ決まっていません。
したがって、
「8人以上なら令和9年度から新たに減算」
と一律に説明することはできません。
5.グループホームに「自己評価+外部評価+公表」を導入する案
今回、運営実務への影響という意味で特に注目したいのが、
共同生活援助の継続的な質の評価・改善
です。
厚生労働省は、共同生活援助について、
- 支援経験の少ない事業者の参入
- 障害特性・障害程度を踏まえた支援が十分でないケース
- 事業所による質の改善状況のばらつき
などを課題として挙げています。
そこで、現在のガイドラインで示されているチェックシートを活用し、
事業所による自己評価
事業所自身が、提供するサービスについて評価・点検する。
地域連携推進会議による外部評価
自己評価結果をもとに、地域連携推進会議で第三者の観点からサービスを評価する。
評価結果の公表
自己評価・外部評価の結果を、
- 利用者・家族へ提供
- 障害福祉サービス等情報公表システム
- 法人ホームページ
- 事業所内の外部から確認しやすい場所
などで公表する。
これらを指定基準上に位置付ける案が示されています。
現時点ではまだ検討段階です。
地域連携推進会議を「年おおむね2回以上」へ?
現在、地域連携推進会議の開催頻度は、
おおむね1年に1回以上
です。
第67回では、外部評価を行う場としての役割も持たせることから、
「おおむね1年に2回以上」へ見直す案
が示されました。
これはかなり実務的な影響があります。
ただし、2026年10月30日時点ではまだ検討案です。
現在すでに年2回開催が義務付けられているわけではありません。
この自己評価・外部評価については、後続記事で詳しく整理します。
6.日中サービス支援型の既存評価制度も整理する方向
日中サービス支援型共同生活援助では、現在、地域連携推進会議に加えて協議会等から評価を受ける仕組みがあります。
しかし資料では、
- 事業所側の負担
- 協議会側の負担
- 自治体等による実施状況の差
などが課題とされています。
そのため、新しい自己評価・外部評価の仕組みを整備することを前提に、
現在の日中サービス支援型に求められている協議会等による評価の仕組みを整理する方向
も示されています。
単純に評価を減らすのではなく、評価制度を一本化して実効性を高めるという考え方です。
7.強度行動障害|180日を超えた後の支援も評価する案
強度行動障害の状態にある方への支援も、第67回の重要テーマです。
現在、施設入所支援や共同生活援助では、重度障害者支援加算によって専門的な支援を評価しています。
支援開始後180日以内については、初期段階の集中的支援として上乗せ評価があります。
一方、180日を超えると報酬が下がる仕組みとなっています。
しかし、強度行動障害の状態にある方では、
生活リズムを整え、本人が安心して生活できる状態へ至るまでに長期間の専門的支援が必要となる場合があります。
そこで今回、
180日を超えた後についても一定の評価を行いながら、支援経過に応じた段階的な報酬設定を行う案
が示されました。
現行の「最初の180日を特に評価する」仕組みから、
長期的な支援負担も評価する仕組み
へ見直す可能性があります。
障害支援区分3以下でも対象になる可能性
もう一つ重要なのが、障害支援区分と行動面の支援負担の関係です。
強度行動障害の状態にある方の中には、
- 自分で移動できる
- 身体介助量は比較的少ない
一方で、
- 行動の制御が難しい
- 常時の見守りや環境調整が必要
など、行動面で大きな支援負担がある人もいます。
資料では、共同生活援助の障害支援区分3以下の利用者のうち、行動関連項目10点以上の人が952人存在することも示されています。
そこで、
障害支援区分3以下であっても、行動関連項目が10点以上の場合には重度障害者支援加算の算定対象とする案
などが検討されています。
これもまだ対象拡大が決定したわけではありません。
8.強度行動障害への「集中的支援」も見直す方向
令和6年度改定では、強度行動障害の状態が悪化した場合に、広域的支援人材が訪問・助言し、アセスメントや環境調整を行う集中的支援加算が創設されました。
しかし、現時点の算定実績は限定的です。
第67回では、
- 高度な専門性をより適切に評価する
- 訪問支援と遠隔支援で必要な手間・費用が異なることを反映する
- 訪問支援をより活用しやすくする
観点から、報酬水準や評価方法を見直す方向も示されています。
9.第67回全体から見える「地域生活」の方向
ここからは、個々の検討案そのものではなく、第67回の161ページを通して見える共通した方向を整理します。
1.「地域へ移す」だけではなく「地域で暮らし続ける」
これまで地域移行では、
病院や施設から地域へ出る
ことが強調されてきました。
今回の資料では、それに加えて、
地域へ移った後に、安心して暮らし続けられるか
がより重視されています。
そのため、
- 自立生活援助
- 地域定着支援
- 地域生活支援拠点
- グループホーム
- 医療との連携
などが一体的に議論されています。
2.グループホームは「住めればよい」ではない
共同生活援助では、
- 規模
- 支援の質
- 自己評価
- 外部評価
- 地域とのつながり
- 強度行動障害
- 医療的ケア
などが論点になりました。
これは、
住居を用意してサービス提供をしているだけではなく、その人に合った生活をどう支えるのか
という制度本来の役割をより重視する方向といえます。
3.「書類の有無」から「継続的な改善」へ
自己評価・外部評価で象徴的なのが、
一度基準を満たせば終わりではない
という考え方です。
評価する。
課題を見つける。
改善する。
その結果を再び評価する。
こうした循環を事業所運営へ組み込もうとする方向です。
これは、これまでの報酬改定でも見えてきた、
「書類が存在するか」から「実際の運営として機能しているか」へ
という流れとも一致します。
4.障害支援区分だけでは測れない支援負担を見る方向
強度行動障害への見直しでは、
障害支援区分だけでは実際の支援負担を十分に評価できないケースがある
という問題が示されています。
今後は、
- 障害支援区分
- 行動関連項目
- 実際の支援密度
- 支援期間
などを、より立体的に評価する方向へ進む可能性があります。
事業所はいま何をすればいいのか
第67回で多くの見直し案が示されましたが、現段階で制度を先取りして運用変更する必要はありません。
たとえば、
- 地域連携推進会議を今すぐ年2回に変更する
- 新しい自己評価制度を独自に開始する
- 大規模住居等減算を想定して報酬計算を変更する
- 重度障害者支援加算の対象者を独自に拡大する
必要はありません。
正式な改正前は、現在の基準・報酬体系に従います。
一方、現在の運営について、
- グループホームで提供している支援を振り返る仕組みがあるか
- 地域連携推進会議が形式だけになっていないか
- 利用者ごとの状態像と支援内容がつながっているか
- 強度行動障害の状態にある利用者への支援体制を説明できるか
- 地域の相談支援や医療機関等と連携できているか
- 運営上の課題を見つけた後、改善につなげられているか
を確認しておくことには意味があります。
これは令和9年度改定対策ではなく、現在の適正な運営を確認する作業です。
主要論点は個別記事でさらに詳しく解説します
本記事では、第67回の161ページの資料について、まず全体像を把握できることを優先して整理しました。
特に共同生活援助については、事業所運営や報酬に直結する論点が多いため、個別記事でも取り上げます。
グループホームの自己評価・外部評価
自己評価、地域連携推進会議による外部評価、結果公表、地域連携推進会議の「年おおむね2回以上」案について詳しく整理します。
【詳細記事:公開後リンク追加】
大規模住居等減算と重度者支援
大規模住居等減算の対象・減算率の見直し、日中サービス支援型への対象拡大案、強度行動障害等への支援評価について詳しく整理します。
【詳細記事:公開後リンク追加】
まとめ|第67回は「地域で暮らし続けるための支援」が大きなテーマ
第67回障害福祉報酬改定検討チームでは、
- 自立訓練
- 自立生活援助
- 地域移行支援
- 地域定着支援
- 地域生活支援拠点等
- 共同生活援助
- 強度行動障害の状態にある方等への支援
について幅広い見直し案が示されました。
特に注目したいのは、
- 拠点コーディネーターの配置柔軟化
- 大規模住居等減算の見直し
- グループホームの自己評価・外部評価
- 評価結果の公表
- 地域連携推進会議を年おおむね2回以上とする案
- 強度行動障害への180日超の継続支援評価
- 障害支援区分だけでは評価しきれない支援負担への対応
です。
しかし、これらはすべて現時点では検討段階です。
今すぐ制度変更を予測して運営を変える必要はありません。
一方、第67回全体からは、
「地域へ移行する」ことだけでなく、「本人が希望する地域で安心して暮らし続けられるよう、サービスの質と地域の支援体制をどう作るか」
という方向が強く見えています。
事業所としては、制度改定を先取りするよりも、
現在の支援・記録・会議・地域連携が、実際の利用者の生活につながっているか
を確認しながら、今後の具体的な改定案を見ていくことが重要です。
制度が変わる前に、現在の運営状況を整理しておきませんか?
第67回で示された内容は、まだ令和9年度改定として決定したものではありません。
未確定の制度を先取りして運用を変更する必要はありません。
一方、会議・記録・個別支援計画・職員体制・地域連携などが、現在の実際の運営とつながっているかを確認しておくことは重要です。
行政書士田中慶事務所では、既存の障がい福祉事業所を対象に、現在の運営状況を整理し、確認すべきポイントを一緒に整理する「障がい福祉運営 状況整理レビュー」を行っています。
一次資料
今回の記事は、以下の厚生労働省・こども家庭庁の一次資料をもとに整理しています。
- 厚生労働省「第67回障害福祉報酬改定検討チーム」
2026年10月30日開催。議題は「令和9年度障害福祉報酬改定に向けて(自立訓練、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、地域生活支援拠点等、共同生活援助、強度行動障害の状態にある者等への支援)」です。
第67回障害福祉報酬改定検討チーム資料一覧 - 厚生労働省・こども家庭庁「自立訓練、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、地域生活支援拠点等、共同生活援助、強度行動障害の状態にある者等への支援に係る報酬・基準について」
第67回の中心資料です。全161ページで、今回の記事で取り上げた各論点の現状・課題・検討の方向性が掲載されています。
第67回検討チーム資料(PDF) - 厚生労働省「障害福祉報酬改定検討チーム」一覧
第67回を含め、令和9年度報酬改定に向けた各回の開催日、議題、資料、議事録の掲載状況を確認できます。
障害福祉報酬改定検討チーム一覧
