大阪府がB型の指定・指導強化策を公表|運営指導・新規指定・総量規制はどう変わる?

目次

はじめに|「具体策は未公表」だった前回記事の続報です

2026年8月27日、大阪府は「令和8年度第1回大阪府障がい者自立支援協議会就労支援部会」を開催しました。

前回の記事では、会議の議題に**「大阪府所管就労継続支援B型事業所に対する指定・指導の強化について」**と掲げられたことを紹介しました。

ただし、その時点では配布資料や議事概要が公表されていなかったため、具体的に何を強化するのかまでは断定できませんでした。

その後、大阪府は9月2日に会議の配布資料を公開しました。

資料5では、大阪府所管の就労継続支援B型事業所に対する具体的な取組みとして、次の3点が示されています。

  1. 運営指導の強化
  2. 新規指定時の審査の強化
  3. いわゆる総量規制の導入可否等の検討

今回は、この資料5の内容に絞り、すでに始まっている取組みと、まだ検討段階にあるものを分けて解説します。

先に結論を示すと、運営指導と新規指定時の審査は、すでに強化策の実施時期が示されています。一方、B型への総量規制は、現段階では導入決定ではありません。

この区別を誤ると、事業者に不要な不安を与えたり、これから開設を考える法人へ不正確な説明をしたりすることになります。

大阪府が指定・指導を強化する背景

大阪府の資料は、指定・指導強化の背景として、まず全国的にB型事業所が急増し、不適切な運営を行う事業所があるとの指摘があることを挙げています。

国はこの状況を踏まえ、就労継続支援A型・B型を対象とする「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」を公表しています。

大阪府所管のB型でも、新規参入は従来の年間10数件程度から、令和7年度には36件へ増加したとされています。2026年4月1日時点の大阪府所管B型は192事業所です。

さらに、前年度に行った在宅支援の実態調査では、「植物等の育成」などを行っている事案が一定数確認されたと記載されています。

ここで注意したいのは、資料が個々の事案を直ちに不正や基準違反と認定しているわけではないことです。

一方で、大阪府がこの事例を指定・指導強化の背景として明記した以上、在宅で行われる活動が、B型における就労支援・訓練としてどのように成立しているのかを確認しようとしていることは読み取れます。

具体策1|運営指導に公認会計士等の専門家を活用

1つ目は、運営指導の強化です。

大阪府は、2026年8月から、在宅支援を実施している事業所を中心に、国のガイドラインに基づいて、訓練内容や緊急時の対応方法等を確認するとしています。

さらに、公認会計士等の専門家を活用し、収益から工賃が支払われているか等の確認・指導を行うことも示しました。

「福祉書類だけ」の確認では終わらない

B型の運営指導というと、個別支援計画、支援記録、モニタリング、人員配置、研修・委員会などを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、これらが重要であることは変わりません。

しかし、大阪府が公認会計士等の活用を明記したことで、少なくとも対象となる運営指導では、次のような事業活動と数字の関係も、これまで以上に説明できる状態が必要になります。

  • どのような生産活動を行っているか
  • その活動から、どのような収益が生じているか
  • 生産活動に必要な経費をどのように処理しているか
  • 工賃をどのような根拠で算定し、支払っているか
  • 会計上の数字と実際の取引・作業に整合性があるか

重要なのは、帳簿上の数字だけを整えることではありません。

実際の生産活動、取引、売上・経費、利用者の作業、工賃支払いが、一続きの実態として説明できることが必要です。

在宅支援で確認されるのは「在宅利用の有無」だけではない

資料では、在宅支援を実施している事業所を「中心に」確認するとしています。

在宅支援では、単に利用者が自宅で作業をしているというだけではなく、少なくとも次のような事項を見直しておく必要があります。

  • 在宅で行う訓練・作業の具体的な内容
  • 利用者の希望、障害特性、支援目標との関係
  • 職員がどのように支援し、状況を把握しているか
  • 緊急時に連絡・対応できる体制があるか
  • 作業実績や支援内容が記録されているか
  • 生産活動の成果と収益、工賃がどのようにつながっているか

ここでも、形式的な様式の有無だけではなく、実際にどのような支援を行っているのかが中心になります。

なお、「在宅支援を実施している事業所を中心に」という表現は、「在宅支援を行う全事業所へ必ず直ちに運営指導を行う」という意味ではありません。また、在宅支援を行っていないB型が確認対象外になるという意味でもありません。

対象事業所の選定方法や実施件数などは、今回の資料だけでは確認できません。

具体策2|2026年9月新規指定分から審査を強化

2つ目は、新規指定時の審査の強化です。

大阪府は、2026年9月の新規指定分から、国のガイドラインに基づき、次の対応を行うとしています。

  • 指定希望者に対し、開設予定市町へ開所意向や事業計画を事前説明するよう案内する
  • 協議を行う際は、代理人等ではなく、必ず申請法人の代表者等に対応させる
  • その他、より厳しい審査を実施する

市町への事前説明は「案内」と書かれている

一次資料に忠実に読むと、開設予定市町への事前説明については、**「事前説明を行うよう案内」**すると書かれています。

今回の2ページの資料だけから、府内一律の新たな法定要件や、事前説明を行わなければ必ず申請を受け付けない制度が創設されたとまでは断定できません。

実際に新規指定を進める場合は、大阪府の担当窓口と開設予定市町の双方に、説明の時期、提出・持参資料、協議方法を個別に確認する必要があります。

代表者等が事業計画を自分の言葉で説明できるか

代理人等ではなく、申請法人の代表者等に対応させるという方針は重要です。

行政書士などの代理人が申請書類を整えるだけではなく、事業を実際に運営する法人側が、少なくとも次の事項を説明できることが求められます。

  • なぜその地域でB型を開設するのか
  • どのような利用者ニーズを想定しているのか
  • どのような生産活動を行うのか
  • 仕事をどこから受注し、どの程度の売上を見込むのか
  • 必要経費と工賃をどのように見込んでいるのか
  • 利用者にどのような就労支援を行うのか
  • 人員をどのように確保し、継続運営するのか

「書類上、指定基準を満たしているか」だけではなく、指定後もB型として継続的かつ適切に運営できる計画かを確認する方向が、より明確になったと考えられます。

ただし、「代表者等」という文言であるため、法人代表者本人だけに限定されるのか、どの範囲の者まで含むのかは、実際の協議前に大阪府へ確認するのが安全です。

具体策3|総量規制は「導入可否を検討中」

3つ目は、B型に対する、いわゆる総量規制の導入可否等の検討です。

大阪府は、新規参入事業所の急増や、大阪市・東大阪市が総量規制を開始したことなどを踏まえ、2026年6月から府所管地域での導入可否等の検討を始めたとしています。

検討方法として挙げられているのは、次の事項です。

  • 先行導入事例の確認
  • 各団体からの意見聴取
  • 自立支援協議会からの意見聴取
  • 府所管9市3町への意向確認など

つまり、今回公表されたのは、総量規制の導入決定ではなく、導入するかどうかを検討しているという事実です。

開始時期、対象区域、判断単位、具体的な審査方法は、今回の資料では決まったものとして示されていません。

府内全圏域で供給超過|126%をどう読むか

資料5の裏面には、令和7年度の「サービス見込量」と「供給サービス量」の比較が掲載されています。

大阪府全域では、次の数値です。

  • サービス見込量:608,753人日/月
  • 供給サービス量:764,077人日/月
  • 達成状況:126%

また、資料は、府内のすべての圏域で供給サービス量がサービス見込量を上回っているとしています。

この数字から、府が総量規制の導入可否を検討する制度上の前提が存在すると整理していることは分かります。

しかし、ここには慎重な読み方が必要です。

大阪府資料は、総量規制について、供給サービス量がサービス見込量以上となっている、または新たな指定によって上回ると認められる場合に加えて、障害福祉計画等の達成に支障を生じるおそれがあると認める場合に、指定しないことができる制度だと説明しています。

したがって、達成状況が100%を超えているという数字だけで、新規指定が自動的に拒否されるわけではありません。

また、府内全域の126%という数字だけを見て、すべての市町村・地域で利用者ニーズがないと判断することもできません。

実際には、地域、利用者像、支援内容、交通事情、既存事業所の受入状況などによって、必要とされるサービスは異なります。

ただし、新規開設を考える法人にとって、地域ニーズや既存供給量を十分に調べないまま計画を進めるリスクが、以前より高くなったことは確かです。

新規開設法人が今、確認しておきたいこと

大阪府所管地域でB型の新規指定を検討している法人は、物件契約や採用を先行させる前に、次の事項を確認する必要があります。

1.指定権者と開設予定市町へ事前確認する

総量規制は検討中ですが、新規指定時の審査強化は2026年9月新規指定分から始まると示されています。

事前説明の手順、協議者、必要資料、指定までのスケジュールを先に確認します。

2.地域ニーズを具体的に説明できるようにする

「B型の需要があると思う」という抽象的な説明ではなく、相談支援事業所、学校、医療機関、自治体などから得た情報と、想定利用者像を整理します。

3.生産活動の受注見込みを検証する

作業名を決めるだけでは足りません。発注元、単価、作業量、納期、必要設備、品質管理、継続性まで確認します。

4.収益・経費・工賃の関係を試算する

楽観的な売上だけを置かず、稼働率や受注変動も含めて試算し、利用者への工賃支払いが継続できる構造かを検討します。

5.代表者等が計画を説明できる状態にする

外部の専門家へ丸投げせず、法人自身が、事業の目的、支援内容、収支構造、リスクを理解しておく必要があります。

既存のB型事業所が今、確認しておきたいこと

既存事業所では、「運営指導が来たときに書類を整える」という発想ではなく、日常の運営実態を確認することが先です。

  • 生産活動の契約・受注・納品・入金の流れが確認できるか
  • 生産活動収入と必要経費を適切に区分・処理しているか
  • 工賃規程、工賃計算、支払実績が一致しているか
  • 利用者の作業と個別支援計画上の目標がつながっているか
  • 支援記録に、本人の状況と職員の具体的な支援が残っているか
  • 勤務表と実際の勤務、人員配置、役割が一致しているか
  • 在宅支援の方法、連絡体制、緊急時対応、支援記録が実態と一致しているか

就労支援事業会計の判断や税務処理は、公認会計士・税理士等へ確認すべき領域を含みます。

一方、会計だけを専門家へ任せても、生産活動と個別支援計画、日々の支援記録が分断されていれば、B型として行う支援の全体像は説明しにくいままです。

必要に応じて、それぞれの専門家が役割分担しながら確認することが重要です。

まとめ|決まったことと検討中のことを分けて備える

大阪府が9月2日に公表した資料により、8月27日の就労支援部会で示されたB型の指定・指導強化策が具体化しました。

現時点の整理は、次のとおりです。

  • 運営指導の強化:2026年8月から実施
  • 新規指定時の審査強化:2026年9月新規指定分から実施
  • 総量規制:2026年6月から導入可否等を検討中

とくに重要なのは、運営指導で公認会計士等の専門家を活用し、収益から工賃が支払われているか等を確認・指導すると明記されたことです。

B型運営では、今後さらに、

事業計画 → 生産活動 → 売上・経費 → 工賃 → 支援内容 → 個別支援計画・支援記録

を一続きで説明できることが重要になります。

ただし、総量規制について「大阪府所管地域でも導入が決まった」と伝えるのは不正確です。

決定済みの強化策には実務上の対応を進め、検討中の制度については大阪府の続報を確認する。この2つを分けて考える必要があります。

新しい規制を予想して形式的な書類を増やすのではなく、まず実際の運営を確認し、その事実を第三者へ説明できる記録と数字を整えることが、最も基本的な備えになります。

一次情報・参考資料

OPERATION RISK CHECK

運営指導の通知が来る前に、
今の運営を一度確認しませんか?

人員・勤務関係、個別支援計画・支援記録・モニタリング、運営基本書類、研修・委員会・訓練、主要な加算関係などについて、現在のリスクや不足、優先して確認したい事項を整理します。

障がい福祉事業所 運営リスク点検を見る

※本サービスは、運営指導等の通知が来る前の平時点検を目的としています。就労支援事業会計の監査、税務判断、公認会計士・税理士業務は対象外です。必要に応じて適切な専門家への確認をご案内します。
※事実と異なる記録や、未実施事項を実施済みとする記録は作成しません。
※行政機関からの指摘、報酬返還・減算等が生じないことを保証するものではありません。

役に立ったら、ぜひシェアしてください
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大阪市を拠点に、障がい福祉事業所の記録・個別支援計画、運営書類、法定研修、制度対応などの整理と運用を支援する行政書士です。
自身の福祉サービス利用経験と福祉現場での経験を踏まえ、制度の内容を解説するだけでなく、事業所、ご本人、ご家族が「次に何を確認し、どう動けばよいか」を分かりやすく整理することを大切にしています。
本ブログでは、障がい福祉の制度改定、事業所運営、支援記録、個別支援計画、親なきあとに関する制度・法務などについて、現場で役立つ視点から発信しています。

目次