はじめに
障害福祉サービス事業者が自治体に行う指定申請や各種届出については、これまで自治体ごとに様式や提出方法が異なり、事業者・自治体双方に大きな事務負担が生じてきました。
こうした負担を軽減するため、国では障害福祉関係手続の電子化・標準化が検討されています。
2025年度には電子申請・届出に関するシステム導入が予定されていましたが、当初のスケジュールでの構築は見送られました。
しかし、電子化そのものが中止されたわけではありません。
その後、厚生労働省は方針を改め、電子申請・届出機能だけでなく、事業所台帳や業務管理体制に関する機能もまとめた**「事業者・自治体間の障害福祉関係手続に関するシステム」**の構築を進めています。
この記事では、2025年度の導入見送りから、その後どのように制度整備が進んでいるのか、2026年8月時点の情報を整理します。
2025年度に予定されていた電子申請・届出システム
障害福祉サービス事業者は、指定申請、変更届、加算届など、さまざまな手続きを自治体に対して行います。
従来は自治体ごとに、
- 使用する様式
- 添付書類
- 提出方法
- 提出期限
- 独自の取扱い
などが異なることも多く、複数の自治体で事業を行う法人にとっては特に大きな負担となっていました。
こうした状況を改善するため、国では障害福祉分野における行政手続の簡素化・電子化が検討され、電子申請・届出に対応する仕組みの整備が進められてきました。
一方、当初想定されていた2025年度中のシステム構築は見送られ、その後、より広い範囲を対象とする共通システムとして再構成されることになりました。
「電子化が中止された」という意味ではない
ここは誤解しやすいポイントです。
2025年度中のシステム導入が見送られたからといって、
障害福祉関係手続の電子化そのものが中止されたわけではありません。
厚生労働省は2025年6月2日、
「事業者・自治体間の障害福祉関係手続に関するシステム(事業所台帳管理システムを含む。)に係る共通化推進方針」
を決定しました。
現在は、この方針に基づいて新たな共通システムの構築が進められています。
新しい「障害福祉関係手続共通化システム」とは
厚生労働省が構築を進めているシステムには、大きく3つの機能が含まれる予定です。
1.電子申請・届出機能
障害福祉サービス事業者が行う指定申請や各種届出について、システム上で手続きを行えるようにする機能です。
2.事業所台帳管理機能
自治体が管理している障害福祉サービス事業所の情報を、共通の仕組みで管理するための機能です。
3.業務管理体制データ管理機能
障害福祉サービス事業者に求められる業務管理体制に関する情報について、共通システム上で管理するための機能です。
厚生労働省は、これら3つの機能を包含した新しいシステムを構築するとしています。
単に「紙の申請書をWeb上で提出できるようにする」というだけではなく、障害福祉関係手続全体を共通化する方向で整備が進められている点が重要です。
運用開始はいつになる?
2026年8月時点で、厚生労働省は令和9年度第4四半期の運用開始を想定しています。
令和9年度第4四半期は、2028年1月から3月ごろに当たります。
ただし、これは現時点での「想定」です。
今後のシステム開発やテスト、自治体側の準備状況などによってスケジュールが変更される可能性はあります。
そのため事業者としては、
「2028年になれば必ずすべての手続が一斉に電子化される」
と考えるのではなく、厚生労働省や指定権者から公表される最新情報を確認していく必要があります。
2026年3月には自治体向け説明会も実施
共通化の検討は、単なる構想段階ではありません。
厚生労働省は2026年3月24日、自治体向けに新システムについての説明会を実施しています。
説明会では、
- システムの概要
- 今後のスケジュール
- 自治体が準備すべき事項
などが示されています。
つまり、2025年度の導入見送り後も検討が止まったわけではなく、具体的なシステム構築と運用準備の段階へ進んでいると見ることができます。
電子化とは別に「標準様式化」はすでに進んでいる
もう一つ重要なのが、指定申請等に使用する様式の標準化です。
2025年3月31日、障害福祉サービス等事業者が自治体に対して行う指定申請等について、国が定める標準様式等を使用するための法令上の措置が講じられました。
この措置は2026年4月に施行されています。
つまり、
電子申請システムの本格運用はまだ先でも、行政手続の標準化自体はすでに進んでいる
ということです。
指定申請だけでなく、加算届出についても標準様式等が整備されており、厚生労働省のページでは2026年8月4日更新の様式も公表されています。
障害福祉事業所は今、何をしておけばいい?
では、事業所側は共通システムが導入されるまで何をすればよいのでしょうか。
結論として、今すぐ特別なシステムを導入する必要があるわけではありません。
むしろ重要なのは、現在行っている申請・届出や書類管理を整理しておくことです。
自治体ごとの最新様式・提出方法を確認する
共通システムが運用されるまでは、実際の申請・届出方法について各指定権者の案内を確認する必要があります。
標準様式化が進んでいても、具体的な提出方法や運用については自治体の案内を確認してください。
提出書類をデータで管理する
指定申請、変更届、加算届などで提出した書類について、
- 何を提出したのか
- いつ提出したのか
- どの内容で届出しているのか
を確認できる状態にしておくことが重要です。
PDF等で整理しておけば、今後電子申請が進んだ場合にも対応しやすくなります。
届出内容と実際の運営を一致させる
電子化されるかどうかにかかわらず、重要なのは提出書類の内容と実際の運営状況が一致していることです。
例えば、
- 管理者やサービス管理責任者等の変更
- 運営規程
- 営業日・営業時間
- 定員
- 加算の算定状況
- 人員配置
などについて、変更があったにもかかわらず必要な届出が行われていない状態は避けなければなりません。
システムが変わっても、届出内容を正確に管理する必要性そのものは変わりません。
電子化によって何が変わる可能性がある?
厚生労働省の資料では、新システムによって申請業務をシステム上で完結させることで、様式間の共通項目の再入力や添付書類を減らすことなどが想定されています。
これが実現すれば、事業者側にとっては、
- 同じ情報を何度も入力する負担
- 大量の添付資料を準備する負担
- 自治体ごとに異なるシステムへ対応する負担
などが軽減される可能性があります。
一方で、電子化によって「確認が緩くなる」わけではありません。
むしろ情報がデータとして整理されることで、指定情報や届出内容と実際の運営との整合性が、これまで以上に重要になる可能性があります。
行政書士が支援できること
障害福祉サービス事業所の指定申請や変更届、加算届などでは、制度上必要となる書類だけでなく、自治体ごとの手続や提出時期を把握しておく必要があります。
行政書士は、
- 指定申請書類の作成・提出支援
- 変更届等の手続支援
- 自治体ごとの申請・届出方法の確認
- 提出書類の整理
- 届出内容と事業所の現状の確認
などを通じて、事業所の行政手続きを支援することができます。
ただし、システム導入時期や自治体の審査結果を保証することはできません。
制度やシステムの移行期だからこそ、国や自治体から公表される一次情報を確認しながら対応することが重要です。
まとめ|「導入見送り」から「共通化」へ
2025年度に予定されていた障害福祉分野の電子申請・届出システムは、当初の予定どおりには導入されませんでした。
しかし、その後電子化が中止されたわけではありません。
現在は、
電子申請・届出機能
+事業所台帳管理機能
+業務管理体制データ管理機能
を一体化した共通システムの構築が進められています。
厚生労働省は2025年6月に共通化推進方針を決定し、2026年3月には自治体向け説明会を実施しました。現時点では令和9年度第4四半期、つまり2028年1~3月ごろの運用開始が想定されています。
また、電子システムの運用開始を待たず、指定申請等に使用する様式の標準化は2026年4月からすでに進んでいます。
事業所として大切なのは、「電子化されるまで何もしない」ことではありません。
現在の申請・届出内容を正確に把握し、書類を整理し、実際の運営状況との整合性を確認しておくこと。
こうした基本的な管理が、今後の電子化・共通化への一番確実な準備になります。
※本記事は2026年8月26日時点で厚生労働省が公表している情報をもとに作成しています。今後、システムの仕様や運用開始時期等が変更される可能性がありますので、実際の申請・届出にあたっては厚生労働省および各指定権者の最新情報をご確認ください。
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