生活介護事業所で看護職員を配置している場合、職員数や利用者の状態によっては「常勤看護職員等配置加算」を算定できる可能性があります。
ただし、この加算は、
看護師が事業所に1人いれば、自動的に算定できる
というものではありません。
現行の報酬告示では、主に次の要件が定められています。
- 看護職員を常勤換算で1人以上配置していること
- 指定権者へ必要な届出を行っていること
- 厚生労働大臣が定める状態の利用者に生活介護を提供していること
- 生活介護の単位ごとに配置要件を満たしていること
この記事では、2026年7月29日時点の厚生労働省の報酬告示、留意事項通知、Q&A、大阪市の公表資料をもとに、生活介護における常勤看護職員等配置加算の要件と実務上の注意点を整理します。
常勤看護職員等配置加算とは
常勤看護職員等配置加算は、生活介護事業所などが、医療的ケアを必要とする利用者を受け入れるために看護職員を配置している体制を評価する加算です。
対象となる看護職員は、次の職種です。
- 保健師
- 看護師
- 准看護師
加算の名称には「常勤」とありますが、常勤職員を必ず1人配置しなければならないという意味ではありません。
常勤職員と非常勤職員の勤務時間を合計し、常勤換算で1人以上となれば、配置要件を満たす可能性があります。
ただし、職員配置だけでなく、対象利用者へのサービス提供や届出も必要です。
令和6年度報酬改定で変わった点
令和6年度報酬改定前は、常勤看護職員等配置加算がⅠからⅢまでの区分に分かれていました。
令和6年度改定後は、この区分が一本化され、次の方式で算定する仕組みに変わっています。
利用定員に応じた所定単位数
× 常勤換算で算定した看護職員数
常勤換算数に小数点以下がある場合は、その部分を切り捨てます。
たとえば、次のように扱います。
- 1.0人:1人
- 1.8人:1人
- 2.0人:2人
- 2.9人:2人
- 3.0人:3人
つまり、看護職員の常勤換算数が1.8人であっても、加算額を1.8倍するのではなく、1人分として計算します。
ただし、令和6年度改定で変更されたのは、主にⅠからⅢまでの区分と計算方式です。
利用定員別の加算単位数
常勤看護職員等配置加算の基本単位は、次のとおりです。
| 生活介護の利用定員 | 基本単位 |
|---|---|
| 5人以下 | 32単位/日 |
| 6人以上10人以下 | 30単位/日 |
| 11人以上20人以下 | 28単位/日 |
| 21人以上30人以下 | 24単位/日 |
| 31人以上40人以下 | 19単位/日 |
| 41人以上50人以下 | 15単位/日 |
| 51人以上60人以下 | 11単位/日 |
| 61人以上70人以下 | 10単位/日 |
| 71人以上80人以下 | 8単位/日 |
| 81人以上 | 6単位/日 |
実際の加算単位数は、次の式で計算します。
利用定員別の基本単位
× 常勤換算後の看護職員数(小数点以下切捨て)
たとえば、利用定員20人の生活介護の単位で、看護職員の常勤換算数が2.4人の場合は、
28単位 × 2人 = 56単位/日
となります。
利用定員40人で、常勤換算数が1.8人の場合は、
19単位 × 1人 = 19単位/日
です。
対象となる利用者
現行の報酬告示では、加算の対象となる利用者は「別に厚生労働大臣が定める者」とされています。
厚生労働省告示では、常勤看護職員等配置加算の対象者を、医療的ケア児に関するスコア表の項目に掲げる、いずれかの医療行為を必要とする状態にある人と定めています。
スコア表には、たとえば次のような状態が含まれます。
- 人工呼吸器の管理
- 気管内挿管や気管切開
- 酸素吸入
- 頻回の吸引
- 中心静脈栄養
- 経管栄養
- 透析
- 定期導尿
- 人工肛門
- 頻回の体位交換
必ずしもスコアの合計が一定点数以上でなければならないという規定ではなく、告示上は、スコア表に掲げるいずれかの医療行為を必要とする状態であることが対象者の定義となっています。
したがって、事業所のすべての利用者について一律に算定する加算ではありません。
対象となる状態の利用者に生活介護を提供した日について、ほかの要件も満たしたうえで算定することになります。
「利用者ごとの要件」と「単位ごとの要件」の両方を確認する
常勤看護職員等配置加算では、次の二つを分けて確認する必要があります。
利用者ごとの確認
利用者が、厚生労働大臣が定める医療行為を必要とする状態に該当するかを確認します。
確認に用いる資料は、利用者の状態や自治体の運用によって異なりますが、たとえば次のような資料が考えられます。
- アセスメント
- 医療機関から提供された情報
- 看護サマリー
- 医師の指示内容
- 医療的ケアに関する情報
- 個別支援計画
- 看護記録
ただし、これらすべてが一律に加算届出の添付書類となるわけではありません。
どの資料をもって対象状態を確認するかは、指定権者の様式や取扱いも確認する必要があります。
単位ごとの確認
生活介護を複数の単位に分けて運営している場合、看護職員の配置要件は、生活介護の単位ごとに確認します。
たとえば、一つの事業所にA単位とB単位があり、
- A単位:看護職員を常勤換算1人以上配置
- B単位:看護職員の配置が常勤換算1人未満
となっている場合、事業所全体として看護職員が1人以上いるだけでは不十分です。
要件を満たしていない単位については、加算を算定できません。
留意事項通知でも、この加算は生活介護の単位ごとの看護職員配置に応じて算定し、要件を満たさない単位では算定できないことが示されています。報酬告示も、「当該指定生活介護等の単位の利用定員」に応じて算定する構造となっています。
看護職員の常勤換算はどう計算するか
常勤換算は、生活介護の看護職員として勤務する時間を合計し、事業所の常勤職員が勤務すべき時間数で割って算定します。
基本的な計算式は次のとおりです。
対象となる看護職員の勤務時間合計
÷ 常勤職員が勤務すべき時間数
たとえば、常勤職員の所定労働時間が週40時間で、
- 常勤看護師:週40時間
- 非常勤看護師A:週20時間
- 非常勤准看護師B:週16時間
の場合、勤務時間の合計は週76時間です。
76時間 ÷ 40時間 = 1.9人
加算単位数の計算では小数点以下を切り捨てるため、1人分として計算します。
ただし、同じ職員が複数のサービスや職種を兼務している場合、すべての勤務時間を生活介護の看護職員として計上できるわけではありません。
どの単位で、どの時間帯に、どの職種として勤務したかを明確に分ける必要があります。
多機能型事業所での利用定員の考え方
多機能型事業所では、基本報酬の定員区分と、常勤看護職員等配置加算に用いる定員区分が、必ずしも同じ扱いになるとは限りません。
令和6年度報酬改定Q&Aでは、生活介護の基本報酬、常勤看護職員等配置加算、人員配置体制加算について、多機能型事業所や主として重症心身障害児者を受け入れる事業所の具体的な取扱いが整理されています。
また、厚生労働省の体制等状況一覧表では、多機能型事業所や複数単位を運営する場合の定員規模について、サービスや運営形態による特例が示されています。
多機能型事業所では、
- 生活介護部分のみの利用定員を用いるのか
- 多機能型事業所全体の利用定員を用いるのか
- 主として重症心身障害児者を受け入れる特例に該当するのか
を、事業所の指定内容とQ&Aに照らして確認する必要があります。
一律に「必ず生活介護だけの定員で計算する」と判断せず、指定権者へ確認した方が安全です。
人員基準上の看護職員との関係
生活介護では、人員基準として、看護職員を生活介護の単位ごとに1人以上配置することが原則とされています。
ただし、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、生活支援員の総数については、利用者の平均障害支援区分に応じた配置基準もあります。
人員基準を満たしていることと、常勤看護職員等配置加算を算定できることは同じではありません。
人員基準上は看護職員を1人配置していても、常勤換算で1人に満たない場合は、加算の配置要件を満たさない可能性があります。
また、加算算定の際には、対象利用者や単位ごとの配置状況も確認する必要があります。
重度障害者支援加算(Ⅰ)との関係
生活介護の重度障害者支援加算(Ⅰ)は、単に看護職員を常勤換算で3人以上配置すれば算定できるものではありません。
現行の報酬告示では、主に次の条件が組み合わされています。
- 人員配置体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定していること
- 常勤看護職員等配置加算を算定していること
- 看護職員を常勤換算で3人以上配置していること
- 各加算の算定に必要となる生活支援員または看護職員の員数を超えて職員を配置していること
- 2人以上の重症心身障害者へ生活介護を提供していること
- 必要な届出を行っていること
したがって、常勤看護職員等配置加算を3人分算定していることは、重度障害者支援加算(Ⅰ)の要件の一部にすぎません。
算定前に必要な届出
常勤看護職員等配置加算は、要件を満たせば自動的に算定できるものではありません。
指定権者へ、介護給付費等算定に係る体制等に関する届出を行う必要があります。
厚生労働省は、常勤看護職員等配置加算・看護職員配置加算の届出様式を公表しています。
一般的には、次のような書類を確認します。
- 介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付費等算定に係る体制等状況一覧表
- 常勤看護職員等配置加算に関する届出書
- 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
- 看護職員の資格証
- 雇用条件や勤務時間を確認できる資料
- 複数単位や兼務状況を確認できる資料
- 指定権者が追加で求める書類
必要書類や届出期限は、指定権者と算定開始時期によって異なります。
大阪市の事業所は、大阪市が公表する最新の加算届出案内と様式を確認する必要があります。
大阪市の前年度実績届との関係
大阪市は、前年度実績によって基本報酬や加算区分が変わるサービスについて、年度ごとに届出案内を公表しています。
令和8年度の案内では、生活介護について、前年度実績に伴う届出対象として、主に次の項目が挙げられています。
- 人員配置体制加算
- 視覚・聴覚言語障害者支援加算
- 就労移行支援体制加算
- 高次脳機能障害者支援体制加算
常勤看護職員等配置加算は、この前年度実績届の一覧には明示されていません。
したがって、常勤看護職員等配置加算の新規算定や配置変更については、通常の加算届出の期限・様式を別途確認する必要があります。
なお、大阪市は、届出後に内容の不備や算定要件不足が判明した場合、過誤調整の対象となる旨を明記しています。
届出後も毎月確認すること
加算届が受理された後も、算定要件を継続して満たす必要があります。
特に次のような変更には注意が必要です。
- 看護職員の退職
- 長期休職
- 非常勤職員の勤務時間減少
- 他サービスとの兼務時間の変更
- 生活介護の単位構成の変更
- 営業日や営業時間の変更
- 対象利用者の利用終了
- 対象となる医療的ケアの状況変更
たとえば、看護職員の常勤換算数が1人を下回れば、配置要件を満たしません。
複数単位のうち、一部の単位だけが配置要件を満たさなくなった場合は、その単位での算定を見直す必要があります。
また、対象となる利用者がいなくなった場合も、算定対象がなくなります。
実務上整えておきたい記録
看護職員の配置に関する資料
- 月ごとの勤務形態一覧表
- 勤務シフト
- タイムカードや出勤簿
- 雇用契約書
- 辞令
- 兼務状況が分かる資料
- 単位ごとの勤務時間
- 常勤換算の計算表
- 資格証の写し
対象利用者に関する資料
- 利用者の医療的ケアの状態が分かる資料
- アセスメント
- 個別支援計画
- 医療機関や家族から提供された情報
- 必要に応じた医師の指示内容
- 看護記録
- 日々の支援記録
ただし、医師の指示書や受給者証だけをもって、加算対象かどうかが自動的に決まるとは限りません。
告示上の対象状態との対応関係を確認し、どの資料を算定根拠とするかを整理します。
届出に関する資料
- 体制届の控え
- 加算届出書の控え
- 提出日時を確認できる記録
- 行政からの補正連絡
- 補正後の最終書類
- 算定開始日を確認できる資料
よくある算定上の注意点
1.予定上の勤務時間だけで計算している
届出時の予定表では常勤換算1人以上でも、実績が不足すれば要件を満たしません。
毎月の実勤務時間で確認します。
2.兼務時間を重複して計上している
同じ時間帯を、生活介護と別サービスの看護職員勤務へ重複して計上することはできません。
3.小数点以下を含めて加算単位を計算している
常勤換算1.8人の場合は、1.8人分ではなく1人分として計算します。
4.対象状態に該当しない利用者へ算定している
現行の報酬告示では、厚生労働大臣が定める状態の利用者へのサービス提供が要件です。
5.一つの単位だけ要件を満たしているのに、全単位で算定している
看護職員の配置は生活介護の単位ごとに確認します。
要件を満たさない単位では算定できません。
6.退職や勤務時間変更後も請求を続けている
人員の変更があった時点で、常勤換算数と単位ごとの配置を再計算します。
7.対象利用者や看護支援の記録がない
利用者の対象状態や、実際に行った看護支援を説明できる資料を整理しておく必要があります。
行政書士が支援できること
行政書士は、常勤看護職員等配置加算について、次のような支援を行うことができます。
- 現行の算定要件の整理
- 厚生労働大臣が定める対象状態との対応確認
- 単位ごとの看護職員配置の整理
- 常勤換算表の作成
- 勤務形態一覧表との整合性確認
- 加算届出書類の作成・提出支援
- 個別支援計画や看護記録との整合性確認
- 算定開始後の確認表や記録様式の整理
- 運営指導前の書類点検
ただし、利用者の医学的状態を行政書士が診断・判定することはできません。
医学的な確認が必要な場合は、医師や看護職員の判断・情報提供が必要です。
また、就業規則、労働条件、社会保険など社会保険労務士の業務に該当する事項は、社労士と連携して対応します。
まとめ
生活介護の常勤看護職員等配置加算は、令和6年度報酬改定によって、ⅠからⅢまでの区分が廃止され、看護職員の常勤換算数を利用定員別の単位数に乗じる方式へ変更されました。
ただし、現行制度は看護職員の配置だけで算定できる仕組みではありません。
主な要件は次のとおりです。
- 看護職員を常勤換算で1人以上配置する
- 指定権者へ必要な届出を行う
- 厚生労働大臣が定める医療的ケアを必要とする状態の利用者へ生活介護を提供する
- 生活介護の単位ごとに配置要件を満たす
- 利用定員別の基本単位に、常勤換算後の看護職員数を乗じる
- 看護職員数の小数点以下は切り捨てる
- 多機能型や複数単位では、定員区分と配置単位を個別に確認する
- 届出後も勤務実績と対象利用者を継続して確認する
