はじめに:数字で見る「今そこにあるリスク」
令和6年度改定で、A型の評価設計が大きく変わりました。全国集計では約5割(50.7%)の事業所が当面の経営上の課題を抱える状況にあり、対応が遅れるほどスコアが下振れしやすい構造です。(厚労省資料の公表値) 厚生労働省
「うちは大丈夫」と感じている事業所ほど、まずは現在スコアの“見える化”から始めてください。今回は大阪市でA型を支援する行政書士の立場から、実務で効く5つの対策に絞って解説します。
まず押さえるべき“2つの急所”
- 生産活動(-20〜60点):過去3年間の生産活動収支と賃金総額の関係で6段階評価。3年すべて未達だと-20点。逆に3年連続達成で60点まで伸びます。 厚生事業団
- 経営改善計画(-50〜0点):期限内対応で0点、未対応等で-50点の減点。提出自体が“加点”ではないため、「落とさない運用」が重要です。 〖公式〗一般社団法人日本福祉事業者協会│福祉事業運営コミュニティ
この2本で最大-70点の差が出るため、他の努力を食い潰さない“守りの運用”を最優先に。
危険度クイックチェック(5項目)
- 過去3年で、生産活動収支≧賃金総額の年がゼロまたは1年のみ
- 経営改善計画の作成・体制・期限管理に不安がある
- 平均労働時間が4時間30分未満(労働時間は上位帯に入れると点が伸びやすい) 〖公式〗一般社団法人日本福祉事業者協会│福祉事業運営コミュニティ
- 「利用者の知識・能力向上」「地域連携活動」の公表運用が未整備
- 令和6年度スコアの社内試算をまだやっていない
1つでも当てはまるなら、この記事の対策を今日から着手してください。
基本報酬:改定後の“物差し”を確認
定員規模・人員配置・スコア帯で単位数が決まります。たとえばサービス費Ⅰ(7.5:1)・定員20以下の場合の目安は次のとおり。
- 170点以上:791単位
- 150〜170点未満:733単位
- 130〜150点未満:701単位
(※ほかの定員区分・サービス費Ⅱは別表。自治体係数・地域区分等で実入金は変動) 〖公式〗一般社団法人日本福祉事業者協会│福祉事業運営コミュニティ
例:130→150へ20点積み増しできれば、701→733単位帯に届く可能性。1日当たりの差分は32単位、利用延日×単価×地域加算等で月次のインパクトが可視化できます(社内試算推奨)。
A型が生き残るための5つの対策(大阪市の実務視点)
① 生産活動収支の“3カ年”黒字化ロードマップ
- 商品・受託の棚卸しと粗利改善(低生産性案件の縮退、単価交渉、内製/外注の最適化)
- 高付加価値化(BtoB軽作業→小ロット加工、EC併売、官公需活用)
- 作業設計の見直し(タクトタイム、段取り替え、標準作業票の整備)
- 原価の見える化(案件別P/L、賃金総額に対する収支ギャップの月次監視)
目標:最低でも「直近1年で≧賃金総額」に乗せ、翌年以降は2〜3年連続達成を狙う。これが-20/ -10 → +40 / +50 / +60への最短ルートです。 厚生事業団
② 経営改善計画は“落とさない設計”
- 年次スケジュール化(所轄への提出期限から逆算)
- 根拠データの保存様式を統一(会計・賃金・売上の突合)
- 責任者/代行者/点検者の三役分担
- 進捗レビューの議事録化(提出求めに即応できる状態に)
未対応の-50点は致命傷。0点維持=防御力最大化と捉え、仕組みで回避します。 〖公式〗一般社団法人日本福祉事業者協会│福祉事業運営コミュニティ
③ 労働時間の“安全帯”を確保(評価90点満額に近づける)
- 4時間30分以上を安定確保→5h/6h帯を狙う
- 体調配慮と柔軟シフト(短時間↔段階的延長)
- 休憩・中抜けの運用明確化(勤怠エビデンスの整備)
労働時間は配点が大きく、生産活動の伸びを下支えする土台です。 〖公式〗一般社団法人日本福祉事業者協会│福祉事業運営コミュニティ
④ 新設評価の“取りこぼしゼロ”(公表運用がカギ)
- 利用者の知識・能力向上(0〜10点):訓練・資格・一般就労準備の実施+公表をセットで。
- 地域連携活動(0〜10点):大阪市内の官公庁・企業・社協等と連携し、報告書作成+公表を定例化。
「やっているのに公表していない」が最大の機会損失。評価要件は“実施+公表”です。 〖公式〗一般社団法人日本福祉事業者協会│福祉事業運営コミュニティ
⑤ 加算は“取りやすさ×効果”で優先順位付け
- 処遇改善系(一本化後の取得・運用)
- 集中的支援加算(必要性・体制)
- 体制加算:算定要件に対する証跡管理まで含めて設計
令和6年度は加算体系も見直しあり。「やれることから確実に」が収益の下振れを防ぎます。(詳細は所轄通知で運用差あり)
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よくある誤解と落とし穴(大阪市でのご相談あるある)
- 「うちは赤字じゃないから平気」 → 判定は“賃金総額との比較”。黒字でもスコア要件を満たさないケースがある。 厚生事業団
- 「計画は書けばOK」 → 期限管理と運用が評価の本体。未対応は-50。 〖公式〗一般社団法人日本福祉事業者協会│福祉事業運営コミュニティ
- 「公表は後回し」 → 新設2項目は公表がスコア条件。実施だけでは点にならない。 〖公式〗一般社団法人日本福祉事業者協会│福祉事業運営コミュニティ
大阪市での実務ポイント(所轄対応を踏まえた進め方)
- 所轄(大阪市・各区担当)との初期コミュニケーション
連絡経路・様式・期限のズレ解消から。 - 社内の“スコア管理台帳”を作成
評価項目ごとに証跡ファイルの所在まで紐づけ。 - 地域連携は“見える連携”へ
社協・企業・学校等とテーマ設定→実施→報告書+公表を四半期で回す。
成功までのロードマップ(最短90日プランの一例)
1–2週目:データ収集・現状スコア試算/計画スケジュール化
3–4週目:生産活動の案件P/L改善案/労働時間の帯上げ設計
5–8週目:新設2項目の実施+公表フロー構築/証跡ルール化
9–12週目:月次レビュー運用開始/次年度スコア見込みの更新
まとめ:危機は“設計”でチャンスに変わる
急所は「生産活動」と「経営改善計画」(落とさない仕組み化)
- 労働時間と新設評価は“公表まで”がセット
- 大阪市内は“地域連携の土壌”を活かせる(見える取り組みへ)
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私自身、障がい者福祉サービス(A型・B型事業所)を利用していた経験があります。
「現場の実際を知りたい」
そんな“制度と現実の間”で迷っている方の相談相手として、利用者側と支援者側、両方の視点を持つピア行政書士として、一緒に最適な道を探します。
出典・参考(主要)
- 厚生労働省「就労継続支援A型の状況について(R6.11.14資料)」:評価項目の配点や現状把握(生産活動:-20〜60、労働時間:〜90 等)。 厚生労働省
- 厚労省Q&A(R6.8.29 VOL.5 抜粋):「生産活動」の6段階判定(3年連続未達=-20点 等)。 厚生事業団
- 一般社団法人日本福祉事業者協会コラム:改定後の基本報酬単位表(サービス費Ⅰ/Ⅱ・定員区分・スコア帯)、新設評価の要点。 〖公式〗一般社団法人日本福祉事業者協会│福祉事業運営コミュニティ
※本記事は令和6年度改定時点の公表資料に基づき作成。最終判断は最新の告示・通知・自治体要綱をご確認ください。大阪市内は運用の細部が異なる場合があります。

