「うちは対象外」と思い込んでいませんか
2026年7月13日、厚生労働省は「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.2」を公表しました。
このうち問2から問4では、就労継続支援B型の基本報酬区分の見直しについて、見直しの対象または対象外となる具体的なケースが示されています。
今回取り上げられたのは、次の3つです。
- 合併や事業譲渡等に伴い、過去の報酬上の実績を通算した事業所
- 平均工賃月額によらない基本報酬区分から、平均工賃月額による区分へ変更した事業所
- 令和6年4月中に行うべき基本報酬区分の届出を失念し、5月以降に届け出た事業所
今回は、厚生労働省Q&Aの回答内容と、ご自身の事業所がどのケースに該当するか確認する際のポイントを整理します。
前提――令和5年度以降に指定されたB型は原則として見直し対象
Q&A問2では、令和5年度以降に指定を受けた就労継続支援B型事業所について、原則として基本報酬区分の見直し対象になると回答されています。
ただし、令和5年度以降に指定されたすべての事業所が、例外なく対象になるわけではありません。
合併や事業譲渡等に伴って過去の実績を通算した事業所については、実績通算の前後における報酬区分の変化によって、対象外として差し支えない場合があります。
ケース1――実績通算の前後で区分が変わらない、または下がった場合
Q&A問2は、国の事務連絡や過去のQ&Aに基づき、合併、事業譲渡等に伴って報酬上の実績を通算し、新たに指定を受けた事業所について取り上げています。
このような事業所も、令和5年度以降に指定を受けている以上、原則として基本報酬区分の見直し対象です。
ただし、提出書類等によって確認した結果、実績通算の前後における令和5年度から令和6年度の基本報酬区分が、
- 変わっていない
- 下がっている
という場合は、見直しの対象外として差し支えないとされました。
ここで重要なのは、単に「実績を通算した事業所だから対象外になる」というわけではない点です。
確認が必要なのは、実績通算の前後で、令和5年度から令和6年度にかけて基本報酬区分がどのように変化したかです。
ケース1の整理
- 実績通算後も区分が変わらない
→ 対象外として差し支えない - 実績通算後に区分が下がった
→ 対象外として差し支えない - 実績通算後に区分が上がった
→ 対象外となる例外には含まれない
実績通算後に区分が上がった場合の具体的な取扱いについては、過去の指定や届出の経緯を整理したうえで、指定権者への確認が必要です。
ケース2――令和6年4月に平均工賃月額による区分へ変更した場合
Q&A問3は、令和6年3月時点で、平均工賃月額によらない基本報酬区分を算定していた事業所について扱っています。
具体的には、令和6年3月時点で、当時の就労継続支援B型サービス費(Ⅲ)または(Ⅳ)を算定しており、令和6年4月から平均工賃月額による基本報酬区分へ変更した事業所です。
このケースについて厚生労働省は、令和6年度以降に新規開設された事業所と同様の取扱いとなり、基本報酬区分の見直し対象になると回答しています。
実務上は「工賃方式へ変更した事業所」と表現されることがありますが、過去のどこかの時点で区分を変更したすべての事業所が対象になるわけではありません。
確認すべき時点は、令和6年3月と令和6年4月です。
次の両方に該当するかを確認してください。
- 令和6年3月時点で、平均工賃月額によらない基本報酬区分を算定していた
- 令和6年4月から、平均工賃月額による基本報酬区分へ変更した
ケース3――令和6年4月中の届出を失念し、5月以降に区分が上がった場合
Q&A問4は、令和5年度以前から指定を受けていたB型事業所について、次のケースを扱っています。
- 本来、令和6年4月中に行うべき基本報酬区分の届出を失念した
- 令和6年5月以降に届出を行った
- 新しい平均工賃月額の算定式による区分が、令和6年3月時点より上がっていた
この場合、厚生労働省は、基本報酬の算定区分に関する届出は基本的に4月中に行うものであるとして、見直しの対象になると回答しています。
単に届出が遅れただけで、すべての事業所が見直し対象になるわけではありません。
今回のQ&Aで対象とされているのは、令和6年4月中に行うべき届出を失念し、5月以降に届け出た結果、令和6年3月時点より基本報酬区分が上がった場合です。
ケース3の確認条件
次の条件をすべて確認する必要があります。
- 令和5年度以前に指定を受けていた
- 令和6年4月中に行うべき届出を失念した
- 届出を令和6年5月以降に行った
- 届出後の区分が令和6年3月時点より上がった
届出が5月以降になった場合でも、区分が上がっていないケースまで、Q&A問4が一律に見直し対象としているわけではありません。
3つのケースを整理
| ケース | 厚生労働省Q&Aの取扱い |
|---|---|
| 実績通算の前後で、令和5年度から令和6年度の区分が変わらない、または下がった | 対象外として差し支えない |
| 令和6年3月時点では平均工賃月額によらない区分で、令和6年4月から平均工賃月額による区分へ変更した | 見直し対象 |
| 令和6年4月中の届出を失念し、5月以降の届出による区分が令和6年3月時点より上がった | 見直し対象 |
この3つのケースは、現在の平均工賃月額だけを見ても判断できません。
事業所の指定時期、過去に算定していた基本報酬区分、区分変更の時期、届出日、実績通算の有無などを遡って確認する必要があります。
ご自身の事業所を確認するポイント
次のいずれかに該当する事業所は、今回のQ&Aとの関係を確認しておく必要があります。
- 令和5年度以降に新規指定を受けた
- 合併、吸収分割、事業譲渡等に伴って新規指定を受け、過去の実績を通算した
- 令和6年3月時点で、当時のB型サービス費(Ⅲ)または(Ⅳ)を算定していた
- 令和6年4月から、平均工賃月額による区分へ変更した
- 令和6年4月中に行うべき基本報酬区分の届出を行わなかった
- 令和6年5月以降の届出によって、令和6年3月時点より区分が上がった
合併や事業譲渡等があった場合でも、単に法人の名称や代表者が変わっただけでは、今回の実績通算のケースに該当するとは限りません。
重要なのは、組織再編等に伴って新規指定を受け、報酬上の実績を通算したかどうかです。
確認に必要な資料
事業所がどのケースに該当するか確認するには、少なくとも次の資料を揃えておく必要があります。
- 指定通知書
- 令和5年度と令和6年度の基本報酬区分に関する届出書
- 平均工賃月額の算定資料
- 届出の提出日が確認できる資料
- 合併・事業譲渡等があった場合の指定関係書類
- 実績通算の取扱いについて指定権者と確認した記録
- 国保連請求上で実際に算定していた報酬区分が分かる資料
大切なのは、現在の区分だけを確認することではありません。
今回のQ&Aは、
- いつ指定されたか
- 令和6年3月と4月にどの区分だったか
- いつ届出を行ったか
- 実績通算の前後で区分がどう変化したか
という過去の経緯を対象としています。
「見直し対象」とは、必ず報酬が大きく下がるという意味ではない
今回のQ&Aでいう「見直し対象」は、すべての事業所について一律に基本報酬区分を引き下げるという意味ではありません。
令和8年度報酬改定では、B型の基本報酬区分について、令和6年度の平均工賃月額の算定方法の変更により、従前より報酬区分が大きく上昇した事業所等を対象とした見直しが行われています。
Q&A VOL.2問2から問4は、その見直しについて、個別の経緯を持つ事業所が対象になるのか、対象外として差し支えないのかを追加で示したものです。
したがって、
見直し対象になる=必ず最低区分まで下がる
という意味ではありません。
実際にどの区分を算定することになるかは、令和8年度の見直し内容、事業所の過去の区分や実績、提出書類などを踏まえて確認する必要があります。
今回のQ&Aから一律に判断できないこと
今回のQ&Aから、次のように一律に判断することはできません。
- 令和5年度以降に指定されたB型は、すべて同じように区分が引き下げられる
- 合併や事業譲渡をした事業所は、すべて見直し対象外になる
- 実績を通算した事業所は、すべて従来の区分を維持できる
- 令和6年4月以降に区分を変更した事業所は、すべて見直し対象になる
- 届出が遅れた事業所は、区分の変化にかかわらずすべて対象になる
- 多機能型事業所からサービスを分離すれば、必ず今回の見直し対象になる
Q&Aは、それぞれ具体的な前提条件を置いて回答しています。
一部の条件だけを取り出すのではなく、指定時期、区分変更の時期、実績通算の有無、届出時期、区分が上がったか下がったかを一体として確認する必要があります。
まとめ
今回のQ&A VOL.2問2から問4のポイントは、次のとおりです。
- 令和5年度以降に指定を受けたB型事業所は、原則として基本報酬区分の見直し対象となる
- 実績通算の前後で、令和5年度から令和6年度にかけて区分が変わらない、または下がった事業所は、対象外として差し支えない
- 令和6年3月時点で平均工賃月額によらない区分を算定し、令和6年4月から平均工賃月額による区分へ変更した事業所は対象となる
- 令和6年4月中の届出を失念し、5月以降の届出による区分が令和6年3月時点より上がった事業所は対象となる
- 現在の平均工賃月額だけでなく、指定日、過去の報酬区分、実績通算、区分変更日、届出日を確認する必要がある
「うちの事業所が、問2から問4のどのケースに該当するのか分からない」
「過去の届出や報酬区分を、どこまで遡って確認すればよいのか分からない」
そのような場合は、まず指定通知書、過去の基本報酬区分の届出書、平均工賃月額の算定資料などを揃え、指定権者に取扱いを確認することが重要です。
当事務所では、就労継続支援B型事業所を対象に、過去の指定・届出経緯や報酬区分に関する資料を整理し、指定権者への確認が必要な論点を明確にするサポートを行っています。
当事務所だけで報酬区分を最終決定するものではありません。
資料と過去の経緯を整理したうえで、必要に応じて指定権者へ確認しながら進めます。
現在の取扱いを確認したい事業所は、お問い合わせください。
