こんにちは。障がい者福祉分野を専門とする行政書士の田中慶です。
「B型事業所の報酬って、結局これからどう変わるの?」
「2026年の改定も見据えて、今どんな準備をすればいいのか分からない」
このような不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
就労継続支援B型は、2024年4月の報酬改定に加え、2026年6月に臨時改定が予定されており
今後の事業運営に大きな影響を与える可能性があります。
この記事では、
・2024年改定の重要ポイント
・2026年臨時改定を踏まえて今考えておくべきこと
を整理しながら、「結局何をすればいいのか」が分かるように解説します。
まず押さえたい基礎知識:報酬の仕組み
報酬改定の内容に入る前に、障害福祉サービスの報酬の基本的な仕組みを理解しましょう。
報酬とは?
障害福祉サービスの「報酬」とは、事業所が利用者さんにサービスを提供した対価として、国保連(国民健康保険団体連合会)から受け取る収入のことです。
一般的なビジネスのように「利用者さんから直接お金をもらう」のではなく、国保連を通じて公費で支払われます。
報酬の計算方法
報酬は、「単位数」×「単価」×「利用日数」で計算されます。
例
基本報酬が600単位、単価が10円、利用者さんが月に20日利用した場合:
600単位 × 10円 × 20日 = 120,000円
単位とは?
報酬の基準となる数値です。「1単位 = 10円」が基本ですが、地域によって異なります(都市部は単価が高い)。
基本報酬と加算
報酬は、「基本報酬」と「加算」で構成されます。
- 基本報酬:サービスを提供すれば必ず算定できる基本的な報酬
- 加算:一定の要件を満たした場合に、基本報酬に上乗せして算定できる報酬
加算をたくさん取得できれば、それだけ報酬が増えます。
報酬改定とは?
報酬改定とは、この単位数や加算の種類・要件を見直すことです。
3年に1度、厚生労働省が実施します。最新の改定は2024年4月に行われました。
2024年4月改定の基本的な方向性
今回の改定は、「工賃向上」と「質の高い支援」を重視する内容になっています。
なぜ工賃向上が重視されるのか
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばない「非雇用型」のサービスです。そのため、利用者さんに支払われる「工賃」は、最低賃金の保証がありません。
2022年の全国平均工賃は月額16,507円でした。これは決して高い金額とは言えません。
厚生労働省は、利用者さんの経済的自立を促進するため、工賃を上げることに取り組んでいる事業所を高く評価する方向に制度を変更しました。
工賃とは?
利用者さんが作業をした対価として、事業所から支払われるお金です。給与ではなく、生産活動の収益から支払われます。
B型事業所の報酬改定:7つの重要ポイント
2024年4月改定で変更された、B型事業所に関する重要なポイントを解説します。
ポイント1:平均工賃月額で基本報酬が変わる
最も大きな変更点は、平均工賃月額によって基本報酬が大きく変わる仕組みが強化されたことです。
平均工賃月額とは
事業所が利用者さん1人あたりに支払った工賃の平均額です。
計算式
前年度の工賃総額 ÷ 平均利用者数 ÷ 12ヶ月 = 平均工賃月額
改定の内容
- 平均工賃月額が高い事業所:基本報酬が引き上げ
- 平均工賃月額が15,000円未満の事業所:基本報酬が引き下げ
つまり、工賃を高く支払っている事業所ほど、報酬も高くなる仕組みです。
新規開設の方へ
新規指定の事業所は、初年度の1年間は「平均工賃月額10,000円未満」とみなして基本報酬を算定します。ただし、支援開始から6ヶ月経過後は、その6ヶ月間の実績に応じた報酬区分で算定することもできます。
※年度途中(5月~3月)に指定された事業所は、初年度と2年度目の1年間が「10,000円未満」とみなされます。
ポイント2:人員配置で報酬が変わる
B型事業所の基本報酬は、「職員の配置人数」によっても変わります。
人員配置の区分
- 6:1(利用者6人に対して職員1人)← 2024年4月に新設
- 7.5:1(利用者7.5人に対して職員1人)
- 10:1(利用者10人に対して職員1人)
職員を手厚く配置しているほど、報酬が高くなります。
2024年4月には、最も手厚い6:1の区分が新設されました。重度の障害がある方や、より支援が必要な方を受け入れる事業所を評価するためです。
人員配置とは?
配置が義務付けられている職員数のことです。「7.5:1」なら、利用者15人の事業所には職員2人(15÷7.5=2)の配置が必要です。
ポイント3:短時間利用が多いと減算される
2024年4月から、「短時間利用減算」という新しい減算が導入されました。
減算とは
一定の条件に該当する場合、報酬が減らされることです。
短時間利用減算の内容
- 利用時間が4時間未満の利用者が全体の5割以上の場合
- 所定単位数から30%減算
これは、短時間利用が多い事業所の実態に合わせた見直しです。
新規開設の方へ
事業計画を立てる際、利用者さんの利用時間を想定しましょう。短時間利用が多くなると、報酬が大きく減ります。
ポイント4:工賃向上に取り組むと加算がもらえる
2024年4月から、「目標工賃達成加算」という新しい加算が創設されました。
加算内容
- 10単位/日
算定要件
- 工賃向上計画を作成していること
- 目標工賃を達成していること
工賃を上げるために努力している事業所を評価する加算です。
工賃向上計画とは?
事業所が「今年度はこれだけの工賃を目指します」という計画を立て、都道府県に提出する書類です。作成は義務です。
ポイント5:個別支援計画を相談支援事業所に渡す義務
2024年4月から、個別支援計画を相談支援事業所にも交付することが求められるようになりました。
施行時期
- 2024年度:努力義務
- 2025年度から:義務化
個別支援計画とは?
利用者さん一人ひとりに対して、どのような支援を行うかを記載した計画書です。サービス管理責任者(サビ管)が作成します。
相談支援事業所とは?
障がいのある方の生活全体を支援する「相談支援専門員」がいる事業所です。利用者さんが複数のサービスを利用する場合、全体を調整する役割を担っています。
ポイント6:身体拘束をしないための取り組みが必須
身体拘束廃止に関する取り組みを行っていない場合、減算されます。
減算内容
- 所定単位数の1%減算
必要な取り組み
- 身体拘束等の適正化を推進する委員会を定期的に開催
- 身体拘束等の適正化のための指針を整備
- 従業者に対して、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施
これらの取り組みは、利用者さんの人権を守るために非常に重要です。
身体拘束とは?
利用者さんの身体を縛ったり、部屋に閉じ込めたりする行為です。原則として禁止されています。
ポイント7:その他の見直し
その他、以下のような見直しも行われました。
- 一般就労中の方が一時利用する場合の工賃計算から除外
- 施設外就労の実績報告書の提出義務が廃止
- 施設外支援の個別支援計画の見直し頻度を「1週間ごと」から「1ヶ月ごと」に変更
これから開設する方が知っておくべきこと
これから就労継続支援B型事業所を開設される方に向けて、特に重要なポイントをまとめます。
事業計画で考慮すべきこと
①工賃をどう設定するか
- 工賃が低いと、基本報酬も低くなる
- どのような作業を提供し、どれくらいの工賃を支払えるか計画する
- 工賃向上計画の作成が義務
②職員の配置をどうするか
- 6:1、7.5:1、10:1のどの区分を選ぶか
- 手厚い配置ほど報酬は高いが、人件費も高い
- バランスを考える必要がある
③利用時間をどう設定するか
- 4時間未満の短時間利用が多いと、30%減算される
- 基本的には4時間以上の利用を想定する
④加算をどれだけ取得できるか
- 基本報酬だけでは経営が厳しい場合が多い
- 目標工賃達成加算など、取得できる加算を検討する
- 加算には要件があるため、事前に確認が必要
収支シミュレーションの重要性
事業を始める前に、詳細な収支シミュレーションを作成することが非常に重要です。
シミュレーションに含めるべき項目
収入
- 基本報酬(人員配置と工賃による)
- 各種加算
- 生産活動収入(作業で得られる収入)
支出
- 人件費(職員の給与)
- 家賃・光熱費
- 材料費
- 工賃(利用者さんへの支払い)
- その他経費
注意
報酬の計算は複雑です。単位数、地域区分、加算など、様々な要素を考慮する必要があります。専門家に相談することをおすすめします。
開設までの流れ
B型事業所を開設するには、以下のような流れが必要です。
- 事業計画の作成(収支シミュレーション含む)
- 法人格の取得(株式会社、NPO法人など)
- 物件の確保
- 職員の採用(管理者、サービス管理責任者、支援員など)
- 指定申請書類の作成・提出
- 都道府県・市区町村による審査
- 指定(認可)
- 事業開始
指定を受けるまでに、通常2~3ヶ月かかります。
よくある質問
Q1. 工賃はどれくらい支払えばいいですか?
利用者1人当たりの平均工賃は月額3,000円を下回ってはならないと定められています。
全国平均は約16,500円ですが、地域や作業内容によって大きく異なります。
Q2. 加算はどれくらい取れますか?
事業所の体制によって異なります。主な加算には以下のようなものがあります。
- 福祉・介護職員等処遇改善加算
- 目標工賃達成加算
- 重度者支援体制加算
それぞれ要件があるため、事前に確認が必要です。
Q3. 報酬だけで経営できますか?
報酬だけでの経営は、認められていません。
なぜなら、工賃は生産活動の利益(売上-経費)から支払う必要があるからです。原則として給付費から工賃を支払うことはできません。
開設準備でお困りの方へ
「報酬の計算が複雑で分からない…」
「収支シミュレーションをどう作ればいいか分からない…」
「指定申請の手続きが不安…」
このような不安をお持ちの方は、専門家に相談することをおすすめします。 💡
行政書士ができること
- 事業計画の作成支援:報酬制度を踏まえた実現可能な計画を一緒に作成
- 収支シミュレーション:人員配置、工賃、加算を考慮した詳細な収支計算
- 指定申請書類の作成・提出代行:複雑な書類作成を丸ごとサポート
- 加算取得の戦略立案:どの加算を取得すべきかアドバイス
- 開設後のフォロー:運営開始後の届出や変更手続きもサポート
障がい者福祉分野を専門とする行政書士として、開設準備から運営開始後まで、トータルでサポートいたします。
2026年6月の臨時改定で想定される影響
2024年改定はすでに適用されていますが、B型事業所については2026年6月に臨時改定が予定されています。
現時点では詳細は確定していない部分もありますが、方向性としては以下の点が議論されています。
- 新規事業所の報酬水準の見直し
- 工賃や支援内容に応じた評価の再整理
- 収益構造の見直し
つまり、2024年改定で整えた内容が、そのまま維持できるとは限らないという前提で考える必要があります。
重要なのは、「今の制度に合わせること」ではなく、制度が変わっても対応できる運営体制を作ることです。
そのためにも、
- 工賃水準
- 人員配置
- 利用時間の設計
といった基本構造を、早い段階で整理しておくことが重要になります。
まとめ:2024だけでなく「2026を見据えて考える」
就労継続支援B型の報酬制度は、2024年改定だけでなく、2026年の臨時改定も含めて考える必要があります。
目の前の制度に合わせるだけではなく、
「制度が変わっても継続できるか」という視点で整理することが重要です。
就労継続支援B型事業所の報酬制度は、複雑です。しかし、この制度を正しく理解することが、持続可能な事業運営の第一歩です。
2024年4月改定のポイントをまとめると、以下の通りです。
- 工賃を高く支払っている事業所ほど、報酬が高い
- 手厚い人員配置ほど、報酬が高い
- 短時間利用が多いと、減算される
- 工賃向上に取り組むと、加算がもらえる
- 個別支援計画を相談支援事業所に渡す義務(2025年度から)
- 身体拘束廃止の取り組みが必須
開設準備のサポートを承ります
当事務所では、就労継続支援B型事業所の開設準備を全面的にサポートしています。
- 事業計画の作成支援
- 収支シミュレーション
- 指定申請書類の作成・提出代行
- 加算取得の戦略立案
- 開設後のフォロー
「これから開設したいけど、何から始めればいいか分からない…」という方は、ぜひご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
障がい者福祉分野専門 行政書士 田中慶
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