就労継続支援B型について調べている方の中には、
- B型事業所の平均工賃はいくらなのか
- 大阪府の工賃は全国平均より高いのか、低いのか
- 工賃が上がると事業所の基本報酬も上がるのか
- 2026年6月の報酬改定で何が変わったのか
といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
就労継続支援B型の工賃は、利用者の生活に関わるだけでなく、事業所の基本報酬区分にも影響する重要な数字です。
ただし、「全国平均を超えればよい」「工賃だけを上げればよい」と単純に考えられるものではありません。
この記事では、厚生労働省が公表した最新実績をもとに、全国と大阪府の平均工賃、過年度からの推移、2026年6月の基本報酬区分見直しとの関係を整理します。
就労継続支援B型の全国平均工賃は月額24,141円
厚生労働省が公表した令和6年度実績によると、就労継続支援B型事業所の全国平均工賃月額は、24,141円です。
令和5年度の全国平均は22,649円であったため、前年度から1,492円増加し、対前年度比は106.6%となりました。
全国平均工賃月額の推移
| 年度 | 全国平均工賃月額 |
|---|---|
| 令和2年度 | 15,776円 |
| 令和3年度 | 16,507円 |
| 令和4年度 | 17,031円 |
| 令和5年度 | 22,649円 |
| 令和6年度 | 24,141円 |
令和4年度から令和5年度にかけて平均工賃が大きく上昇していますが、これは事業所の生産活動収益だけが急激に伸びたという意味ではありません。
令和6年度報酬改定で平均工賃月額の算定方法が見直され、令和5年度実績から新しい算定方式が反映されたことも、数字が上昇した要因の一つです。
そのため、過年度の数字を単純に並べて、
B型事業所の工賃が数年間で急激に上がった
と評価するのは適切ではありません。
計算方法が変わったことも踏まえて数字を見る必要があります。
大阪府の平均工賃は月額19,747円
令和6年度の大阪府における就労継続支援B型の平均工賃月額は、19,747円です。
令和5年度の18,176円から1,571円増加していますが、令和6年度の全国平均24,141円と比べると、4,394円低い水準です。
| 区分 | 令和5年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|
| 全国平均 | 22,649円 | 24,141円 |
| 大阪府 | 18,176円 | 19,747円 |
ただし、全国平均や大阪府平均は、個々の事業所が達成しなければならない最低基準ではありません。
提供している作業の内容、利用者の障害特性、利用日数、地域の取引環境、事業所規模などによって、工賃水準は異なります。
平均額だけを見て事業所の支援の質を判断するのではなく、どのような利用者を受け入れ、どのような支援と生産活動を行っているかも併せて考える必要があります。
そもそも「工賃」とは何か
就労継続支援B型は、利用者と事業所が雇用契約を結ばない福祉サービスです。
利用者が生産活動に参加した対価として受け取る金銭は、給与ではなく「工賃」と呼ばれます。
指定基準では、事業所は、生産活動による収入から生産活動に必要な経費を差し引いた金額を、利用者に工賃として支払うこととされています。
つまり、原則として、
障害福祉サービスの給付費を、そのまま利用者の工賃に充てる
という仕組みではありません。
厚生労働省も、自立支援給付から賃金や工賃を支払うことは、災害等の例外を除いて指定基準違反になると案内しています。
工賃を上げるためには、生産活動の売上を増やすだけでなく、
- 原材料費や外注費を確認する
- 採算の合わない作業を見直す
- 作業単価を交渉する
- 自主製品の販売方法を改善する
- 利用者の得意分野に合う仕事を増やす
- 施設外就労などを検討する
といった、生産活動全体の見直しが必要になります。
平均工賃が高ければ基本報酬も高くなる?
就労継続支援B型の基本報酬には、平均工賃月額に応じて評価する報酬体系があります。
この体系を選択している事業所では、原則として前年度の平均工賃月額が、翌年度の基本報酬区分を決める要素の一つになります。
ただし、基本報酬は平均工賃だけで決まるわけではありません。
- 人員配置区分
- 利用定員
- 選択している報酬体系
- 前年度の平均工賃月額
- 新規指定事業所に関する取扱い
- 経過措置の適用
などを確認する必要があります。
したがって、
工賃を少し上げれば、翌年度の報酬が必ず上がる
とは限りません。
現在の平均工賃がどの区分に該当し、次の区分までどの程度の差があるのかを確認したうえで、事業所全体の収支を考えることが重要です。
2026年6月に基本報酬区分の基準が見直された
令和8年度障害福祉サービス等報酬改定により、就労継続支援B型の平均工賃月額に応じた基本報酬区分の基準が見直されました。
改定は、原則として2026年6月1日から適用されています。
見直しの背景には、令和6年度報酬改定で平均工賃月額の算定方式を変更した結果、高い報酬区分に移る事業所が増えたことがあります。
厚生労働省は、算定方式の見直しの意図とは異なる形で高い報酬区分の事業所が増えたとして、基本報酬区分を分ける基準額を引き上げました。
現在の区分には、たとえば、
- 1万円未満
- 1万円以上1万5,000円未満
- 1万5,000円以上1万8,000円未満
- 1万8,000円以上2万円未満
- 2万円以上2万3,000円未満
- 2万3,000円以上2万5,000円未満
- 2万5,000円以上2万8,000円未満
- 2万8,000円以上3万円未満
などが設けられています。さらに高い工賃区分もあります。
自事業所の算定区分を確認するときは、古い報酬表ではなく、2026年6月以降の基準を使用する必要があります。
既存事業所には経過措置が設けられている
基本報酬区分の基準が変わると、前年度と同程度の工賃を支払っていても、報酬区分が下がる事業所が出る可能性があります。
そのため、一定の既存事業所については、事業運営への急激な影響を避けるための経過措置が設けられています。
具体的な適用可否は、令和5年度・令和6年度・令和7年度の算定区分や、新規指定の時期などによって異なります。
「前年と同じ区分で請求してよい」と自己判断せず、自治体への届出内容や厚生労働省Q&Aを確認する必要があります。
2026年6月以降の新規指定事業所には別の取扱いもある
2026年6月1日以降に新規指定を受けた一定の就労継続支援B型事業所には、応急的な報酬単価として、所定単位数の98.4%に相当する単位数が適用されます。
ただし、地域に必要な事業所として扱われる場合など、対象外となるケースもあります。
これは、既存事業所の基本報酬区分見直しとは別の制度です。
これからB型事業所の開設を検討する場合は、
- どの平均工賃区分で算定を始めるのか
- 応急的報酬単価の対象になるのか
- 地域の指定状況や自治体の取扱い
- 想定利用者数と人員配置
- 生産活動収支
まで含めて、収支計画を作る必要があります。
全国平均を目標にすればよいわけではない
全国平均24,141円は、事業所運営を考えるうえで参考になる数字です。
しかし、すべての事業所が一律に全国平均を目標にすればよいとは限りません。
工賃を無理に上げようとして、
- 採算の合わない仕事を大量に受ける
- 職員が生産活動だけに追われる
- 利用者の希望や障害特性に合わない作業を増やす
- 支援記録や個別支援計画が形だけになる
- 工賃を維持するために給付費へ依存する
といった状態になれば、B型事業所としての支援の目的から外れてしまいます。
工賃向上は重要ですが、利用者本人の希望、働き方、体調、得意不得意を踏まえた支援と両立させる必要があります。
自事業所で確認したい5つの数字
平均工賃や基本報酬区分を確認するときは、少なくとも次の数字を整理しておきましょう。
1.前年度の工賃支払総額
利用者へ実際に支払った工賃の合計額を確認します。
2.平均工賃月額
自治体へ報告した平均工賃月額と、基本報酬区分の届出に用いた数字が一致しているか確認します。
3.生産活動の売上と経費
売上だけでなく、材料費、外注費、販売手数料などを差し引いた収支を確認します。
4.現在の基本報酬区分
2026年6月以降の基準で、自事業所がどの区分に該当するかを確認します。
5.次の区分までの差額
次の工賃区分までいくら必要なのか、そのために必要な生産活動利益はいくらかを計算します。
ただし、報酬区分を上げることだけを目的にせず、利用者支援や事業所全体の収支とのバランスを確認することが大切です。
まとめ
就労継続支援B型の令和6年度全国平均工賃月額は、24,141円です。
大阪府の平均は19,747円で、全国平均を下回っています。
一方、令和5年度以降の工賃額には、平均工賃月額の算定方式が変わった影響も含まれているため、過年度との単純比較には注意が必要です。
また、2026年6月からは、平均工賃月額に応じた基本報酬区分の基準が見直されました。
事業所として重要なのは、全国平均だけを見ることではありません。
- 自事業所の平均工賃月額
- 生産活動の収支
- 現在の基本報酬区分
- 経過措置の適用
- 利用者の希望や障害特性
- 支援内容と生産活動のバランス
を一つずつ確認することが大切です。
工賃は、利用者の働く意欲や生活を支える重要なものです。
同時に、工賃の数字だけで支援の良し悪しを判断するのではなく、どのような支援の結果としてその工賃が実現しているのかまで考える必要があります。
