※この記事は行政書士事務所の開業準備中に執筆したものです。
現在は大阪市中央区で行政書士事務所を開業し、障がい福祉事業所の運営支援・開業支援を行っています。
はじめに
大阪府内で放課後等デイサービスや児童発達支援の開設を考えたとき、
「まず物件を探せばいいのか」
「どこに指定申請を出せばいいのか」
「どのくらい資金が必要なのか」
「人員は何人そろえればいいのか」
と迷う方もいると思います。
しかし、障害児通所支援の開設では、物件を契約して職員を採用すれば始められるわけではありません。
指定権者から児童福祉法に基づく指定を受ける必要があり、その前に、
- 開設予定地域の状況
- 指定権者
- 事前協議
- 人員基準
- 物件・設備基準
- 建築・消防関係
- 資金計画
などを確認する必要があります。
特に大阪府内では、開設場所によって指定申請先や手続が異なる点に注意が必要です。
この記事では、大阪府内で放課後等デイサービス・児童発達支援を開設する際に、最初に確認しておきたいポイントを整理します。
放課後等デイサービスと児童発達支援とは
どちらも児童福祉法に基づく「障害児通所支援」です。
児童発達支援
主として、就学前の障がいのある子ども等に対して、日常生活における基本的な動作や知識技能の習得、集団生活への適応などに必要な支援を行います。
放課後等デイサービス
学校に就学している障がいのある子ども等について、授業終了後や学校休業日に、生活能力向上のために必要な支援や社会との交流促進などを行います。
サービス内容は異なりますが、どちらについても指定を受けるには、人員・設備・運営等に関する基準を満たす必要があります。
最初に確認したいのは「誰が指定権者なのか」
「大阪府で開設するから大阪府に申請する」とは限りません。
大阪府では、障害児通所支援について指定・指導権限が一部の市へ移譲されています。
例えば、
- 大阪市
- 堺市
- 高槻市
- 東大阪市
- 豊中市
- 枚方市
- 八尾市
- 寝屋川市
- 吹田市
などでは、各市が指定・指導を担当しています。
それ以外の大阪府所管地域については、大阪府が指定を担当します。
したがって、開設準備の最初に行いたいのは、
「この住所の場合、どこが指定権者なのか」
を確認することです。
指定権者が違えば、申請書類、事前協議方法、期限、確認事項などが異なる場合があります。
開設場所によっては「地域のニーズ」も重要になる
児童発達支援・放課後等デイサービスでは、単に指定基準を満たしていれば必ず新規指定を受けられるとは限りません。
大阪府は、特定障害児通所支援事業である児童発達支援・放課後等デイサービスについて、各市町村の
- ニーズ
- 指定に関する意向
- 地域の状況
などを公表しています。
地域によって、
- 総量規制を実施している
- 一定の特色・専門性を有する事業所を求めている
- 医療的ケア児等への対応を求めている
- 開設前に市町村への事前説明・ニーズ確認を求めている
- 特段の総量規制を行っていない
など、状況は異なります。
つまり、
「大阪府では放デイが多いから開設できない」
とも、
「この地域には少ないから指定される」
とも一律には判断できません。
開設予定地ごとに最新の情報を確認する必要があります。
大阪府所管地域では事前に市町村の意向を確認
大阪府所管地域で児童発達支援・放課後等デイサービスの新規指定を申請する場合、大阪府は、事前協議前に各市町村の「指定に関する意見等」を確認するよう案内しています。
また、所在地の市町村の障がい児支援担当課へ、事業内容の説明や地域ニーズの確認等を行うことも求めています。
そのため、
物件を契約してから指定できるか確認する
のでは順序が逆になる可能性があります。
候補地域を決めた段階で、まず指定・開設の見込みを確認することが重要です。
大阪市では児発・放デイとも事前協議が必要
大阪市内で開設する場合、児童発達支援・放課後等デイサービスはいずれも、新規指定申請前の事前協議対象事業です。
大阪市の現在の手続では、おおむね、
- 指定希望月のスケジュール確認
- 事前協議
- 指定申請
- 申請面談・審査
- 指定時研修
- 指定書交付
- 指定日から事業開始
という流れになります。
事前協議対象事業では、原則として指定を希望する月の3か月前に事前協議を行う必要があります。
そのため、開設予定日は早めに決め、逆算して準備する必要があります。
物件は「契約する前」の確認が重要
放課後等デイサービス・児童発達支援では、物件選びが非常に重要です。
立地や家賃だけで決めるのではなく、
- 指定基準上必要なスペースを確保できるか
- 採光・換気等の基準を満たせるか
- 建築基準法上問題がないか
- 消防法上必要な設備を整備できるか
- 用途地域等の問題がないか
- 利用者の安全を確保できるか
などを確認します。
大阪府も、障害児通所支援の事業開始前の注意事項として、都市計画法、建築基準法等への適合確認を求めています。
物件によっては、障害児通所支援事業所として利用するために工事や手続が必要になる場合があります。
そのため、
「契約してから行政に相談する」のではなく、契約前に指定・建築・消防面を確認する
ことが重要です。
人員基準も物件と並行して確認する
放課後等デイサービス・児童発達支援では、必要な職員を確保する必要があります。
一般的な障害児を対象とする事業所では、主に、
- 管理者
- 児童発達支援管理責任者
- 児童指導員または保育士
などの配置が必要です。
国が示している基準では、児童指導員または保育士について、障害児が10人までの場合は2人以上とされ、そのうち1人以上は常勤とされています。
また、児童発達支援管理責任者についても1人以上の配置が必要です。
ただし、必要な職員数や要件は、
- 利用定員
- 対象児童
- 重症心身障害児を対象とするか
- 医療的ケアを行うか
- その他の職員配置
などによって変わります。
「とりあえず○人採用すればよい」と考えず、予定する事業内容に合わせて確認してください。
児童発達支援管理責任者は早めに確保する
開設準備で特に重要なのが、児童発達支援管理責任者です。
大阪市の事前協議では、申請時点で児童発達支援管理責任者の要件を満たしていることが求められています。
児童発達支援管理責任者は、単に資格を持っている人を採用すればよいわけではなく、実務経験や研修要件等の確認が必要になります。
候補者が見つかった場合には、
- 実務経験
- 保有資格
- 研修修了状況
- 過去の勤務内容
などを早い段階で確認しましょう。
開設直前になって要件を満たしていないことが判明すると、開設スケジュール全体に影響します。
「特色のあるサービス」は指定基準とは別に考える
放課後等デイサービス・児童発達支援では、
- 運動
- ICT
- 学習
- 音楽
- アート
- SST
- 医療的ケア
- 家族支援
など、事業所ごとにさまざまな特色があります。
ただし、特色のあるプログラムを用意することと、指定基準を満たすことは別問題です。
まず、
障害児通所支援として必要な支援体制を整えること
が前提です。
そのうえで、地域のニーズや法人の強み、職員の専門性等を踏まえて支援内容を設計する必要があります。
現在は「5領域」を踏まえた支援も重要
現在の放課後等デイサービス・児童発達支援では、本人支援について、
- 健康・生活
- 運動・感覚
- 認知・行動
- 言語・コミュニケーション
- 人間関係・社会性
という5領域との関連を踏まえて支援を組み立てる考え方が重視されています。
こども家庭庁の現行ガイドラインでも、子どもの支援ニーズや生活状況を踏まえ、5領域を含めて育ち全体に必要な支援を組み立てることが示されています。
そのため、
「プログラミング特化」
「運動特化」
といった特色だけを決めればよいのではなく、
その活動によって子どものどのような発達・生活上の課題を支援するのか
を整理することが大切です。
開設費用は一律に「○百万円」とは言えない
放課後等デイサービス・児童発達支援を開設するには一定の資金が必要ですが、
「開設には必ず400万円必要」
「平均○○万円かかる」
と一律に示すことはできません。
必要額は、
- 物件の状態
- 家賃
- 敷金・保証金
- 内装工事
- 消防設備
- 備品
- 車両
- ICT環境
- 採用費
- 開設前人件費
- 専門家報酬
- 運転資金
などによって大きく異なるからです。
特に既存施設を利用する場合と、大規模な改修が必要な物件を使用する場合では、必要資金は大きく変わります。
開設資金は「実際の見積額」で積み上げる
資金計画では、インターネット上の「開業費用相場」だけを使うのではなく、
| 費用項目 | 自社の見積額 |
|---|---|
| 物件取得費 | 円 |
| 内装・改修工事 | 円 |
| 消防設備等 | 円 |
| 家具・備品 | 円 |
| 車両 | 円 |
| PC・ICT関係 | 円 |
| 採用費 | 円 |
| 開設前人件費 | 円 |
| 専門家費用 | 円 |
| 運転資金 | 円 |
| その他 | 円 |
| 合計 | 円 |
という形で、実際の見積額を積み上げる方が安全です。
この段階で、
「想定より工事費が高い」
「指定までの家賃負担が大きい」
「職員を早く採用すると開設前人件費が増える」
といった問題も見えてきます。
運転資金を忘れない
障害福祉・障害児支援事業では、指定を受けてサービス提供を始めても、すぐに給付費が入金されるわけではありません。
その間も、
- 給与
- 社会保険料
- 家賃
- 水道光熱費
- 通信費
- 車両費
- 消耗品費
などは発生します。
さらに、開設当初から定員いっぱいの利用者がいるとは限りません。
そのため、開設費だけでなく、
利用者数が予定より少ない期間も事業を継続できる運転資金
まで考えておく必要があります。
事業計画では「定員=利用者数」と考えない
例えば定員10名の事業所を作ったとしても、開設初日から毎日10名が利用するとは限りません。
利用者確保には、
- 相談支援事業所
- 学校
- 医療機関
- 保育所・幼稚園
- 地域の関係機関
- 保護者
などとの関係づくりも重要になります。
したがって事業計画では、
定員ではなく、実際にどの程度の利用が見込めるのか
を慎重に考える必要があります。
開設までの基本的な順番
具体的な手続は指定権者によって異なりますが、考え方としては次の順番で整理すると分かりやすいでしょう。
1.開設予定地域を決める
まず、どの市町村で開設したいのかを整理します。
2.指定権者と地域の状況を確認する
指定申請先、総量規制、地域ニーズ、事前説明の有無などを確認します。
3.指定スケジュールを確認する
希望する開設日から逆算して、事前協議・申請期限を確認します。
4.物件候補を確認する
契約前に、指定基準、建築、消防等の確認を行います。
5.人員体制を確認する
児童発達支援管理責任者、児童指導員・保育士等の要件と配置を確認します。
6.事前協議を行う
指定権者の案内に従って必要書類を提出します。
7.指定申請
事前協議を経て、正式な指定申請へ進みます。
8.審査・研修等を経て指定
指定権者による審査等を経て、指定日から事業を開始します。
「物件」「人員」「申請」は別々ではなく同時に考える
開設準備で難しいのは、
- 物件が決まらないと図面を作れない
- 人員が決まらないと勤務体制を作れない
- でも先に契約・採用しすぎると固定費が発生する
という関係にあることです。
だからこそ、
開設希望日を決め、行政のスケジュールから逆算しながら、物件と人員を並行して整える
必要があります。
「まず物件」
「まず採用」
「まず法人設立」
と一つずつ独立して進めるより、全体のスケジュールを見ながら進めた方が安全です。
行政書士に相談できること
行政書士は、放課後等デイサービス・児童発達支援の開設にあたり、
- 指定権者の確認
- 指定申請スケジュールの整理
- 人員・設備基準の確認
- 事前協議書類の作成支援
- 指定申請書類の作成
- 運営規程等の作成・確認
- 開設準備全体の整理
などを支援できます。
ただし、行政書士へ依頼したから指定が保証されるわけではありません。
指定基準を満たし、指定権者による審査を受けたうえで指定されます。
そのため、開設支援で大切なのは「必ず指定を取る方法」を探すことではなく、
指定基準・地域の状況・事業計画を確認しながら、実際に運営できる事業所を準備すること
です。
まとめ|「どこで、どんな事業所を作るか」から考える
大阪府内で放課後等デイサービス・児童発達支援を開設するときは、
「大阪府で放デイを始める」
という大きなくくりだけでは十分ではありません。
開設予定地によって、
- 指定権者
- 事前協議の方法
- 指定申請スケジュール
- 地域ニーズ
- 総量規制等の考え方
が異なる場合があります。
そのため最初に、
- どの地域で開設するか
- その地域の指定権者はどこか
- 新規指定が可能な状況か
- いつ指定を受けたいか
- どのような支援を行いたいか
を整理することが重要です。
そのうえで、物件、人員、資金、事前協議、指定申請を順序よく進めていきます。
放課後等デイサービス・児童発達支援は、指定を取ることがゴールではありません。
指定後に、子どもと家族へ継続して適切な支援を提供できる事業所を作ること。
そこから逆算して、開設準備を進めていきましょう。
※本記事は2026年8月26日時点の大阪府、大阪市、こども家庭庁等の公表情報をもとに作成しています。指定手続、地域の意向、総量規制、指定基準等は変更される場合があります。実際の開設にあたっては、開設予定地を所管する指定権者の最新情報をご確認ください。
放課後等デイサービス・児童発達支援の開設では、地域の状況、物件、人員配置、事業計画などを事前に整理しておくことが重要です。
「この地域で開設できるのか」「何から準備すればいいのか」という段階から、開設までの流れを一緒に整理できます。
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