2026年10月5日に開催された第65回障害福祉報酬改定検討チームでは、児童発達支援・放課後等デイサービスの児童指導員等加配加算と専門的支援体制加算を整理・統合し、新たな加算を創設する案が示されました。
この論点は、多くの事業所に直接関係する可能性があります。
令和8年3月の国保連実績では、児童指導員等加配加算の算定率は、
- 児童発達支援:84.7%
- 放課後等デイサービス:91.6%
となっています。
専門的支援体制加算についても、
- 児童発達支援:52.5%
- 放課後等デイサービス:46.7%
と、約半数の事業所が算定しています。
そのため、今回の見直しが実際の制度改正につながれば、児発・放デイの人員配置や報酬に影響する可能性があります。
ただし、最初に重要な点を確認しておきます。
現時点では、令和9年度障害福祉報酬改定に向けた検討案です。
新しい加算の名称、単位数、具体的な評価項目、算定要件、経過措置などは決まっていません。
また、今回「整理・統合」が検討されているのは、児童指導員等加配加算と専門的支援体制加算です。
専門人材による個別・集中的な支援の実施を評価する専門的支援実施加算まで廃止・統合すると示されたわけではありません。
この記事では、第65回検討チーム資料をもとに、なぜ現在の2つの加算が見直されるのか、今後どのような評価へ変わる可能性があるのかを整理します。
第65回・障害児支援の全体像はこちら
第65回検討チームで示された障害児支援24論点は、保存版のまとめ記事で整理しています。
令和9年度障害福祉報酬改定|第65回検討チームの重要論点まとめ
現在の「児童指導員等加配加算」とは
児童指導員等加配加算は、基本の人員配置に加えて職員を配置し、支援体制を強化している事業所を評価する加算です。
現在は、配置する職員について、
- 常勤専従か常勤換算か
- 児童福祉事業の経験年数が5年以上か5年未満か
- その他の従業者か
などによって評価が分かれています。
令和6年度報酬改定では、経験のある人材をより評価する方向から、配置形態や経験年数に応じた仕組みへ見直されました。
つまり、現在の加算では、
「基準より何人多く配置しているか」だけでなく、「どのような経験を持つ職員を、どのような形で配置しているか」
が評価されています。
「専門的支援体制加算」とは
専門的支援体制加算は、
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 一定の経験を持つ保育士・児童指導員
- その他、定められた専門職
などを、基準人員に加えて配置する体制を評価する加算です。
令和6年度報酬改定では、専門的な支援について、
専門的支援を提供できる「体制」
と、
専門人材による個別・集中的な支援の「実施」
を段階的に評価する仕組みとなりました。
前者が専門的支援体制加算、後者が専門的支援実施加算です。
今回、専門的支援実施加算まで統合する案ではない
ここは、今回の見直しを理解するうえで重要です。
第65回資料で明記されているのは、
「児童指導員等加配加算及び専門的支援体制加算」を整理・統合した新たな加算を創設する
という案です。
したがって現時点では、
児童指導員等加配加算
+専門的支援体制加算
+専門的支援実施加算
を全部一本化する
という話ではありません。
今後の具体案が出れば変更される可能性はありますが、第65回資料だけを根拠に「専門的支援実施加算も廃止される」と発信することはできません。
なぜ児童指導員等加配加算を見直すのか
大きな理由の一つが、算定率の高さです。
令和8年3月時点で、児童指導員等加配加算を算定している事業所は、
- 児童発達支援:84.7%
- 放課後等デイサービス:91.6%
に達しています。
特に放デイでは、ほぼ9割の事業所が算定しています。
厚生労働省資料では、令和8年度予算執行調査において、このような高い算定率を踏まえ、
支援強化のためのインセンティブとしての役割を果たしているとは言えない
との指摘があったことが紹介されています。
つまり、
特別に手厚い支援体制を取った事業所を評価する加算
だったものが、
多くの事業所が通常のように算定する加算
になっているのではないか、という問題です。
「加配しているか」だけでは支援の質を測りにくい
もう一つの理由は、現在の評価方法です。
児童指導員等加配加算では、職員の、
- 資格
- 経験年数
- 常勤・常勤換算
- 配置状況
などが重要になります。
専門的支援体制加算でも、専門職等を配置しているかが大きな要件です。
もちろん、専門人材や経験のある人材を確保することには意味があります。
一方、厚生労働省資料では、加算算定のため、
- 新規採用
- 法人内の配置転換
などによって要件を満たしている実態も確認されたとしています。
つまり、
「必要な職員が配置されている」ことと、「事業所全体として質の高いチーム支援ができている」ことは、必ずしも同じではありません。
人材確保が難しい地域ほど不利になりやすい問題も
現在の仕組みには、もう一つ課題があります。
資格や職種、経験年数など、特定の人材を確保できるかどうかが加算算定に大きく影響します。
しかし、障害児支援分野では、人材確保自体が難しくなっています。
厚生労働省資料では、中途採用で特に確保が難しい職種として、
- 保育士:67.5%
- 理学療法士等の機能訓練担当職員:56.6%
- 児童指導員:52.2%
という調査結果も示されています。
地域によって人材確保の難しさも異なります。
そのため、
特定資格者を採用できる地域・事業所ほど有利になる評価だけで、本当に支援の質を測れるのか
という問題があります。
そこで「2つの加算を整理・統合」する案
こうした課題を踏まえ、第65回資料では、
現行の児童指導員等加配加算と専門的支援体制加算の評価体系を抜本的に見直し、両加算を整理・統合した新たな加算を創設する
ことが検討されています。
ここで重要なのは、
「加配を評価しない」「専門職を評価しない」という方向ではない
ことです。
厚生労働省は、新加算でも、
- 専門人材の活用
- 経験ある人材の評価
という現在の方向性を維持するとしています。
そのうえで、それだけではなく、複数の要素を組み合わせて事業所全体の支援体制を評価する案です。
新しい加算では何を評価する可能性があるのか
第65回資料では、新しい加算について、
- 専門職等の配置
- 経験年数
- 専門人材の活用
- 経験ある人材の活用
- チーム協働による支援
- 支援ニーズの高いこどもの受入れ状況
- そのニーズに応じた支援体制
など、複数の評価項目を総合して評価する方向が示されています。
つまり、
PTを配置しているから何点
経験5年以上の児童指導員がいるから何点
という個別要件だけではなく、
その人材を、実際にどのような支援に活用しているか
まで見る方向です。
「チーム支援」が重要な評価軸になる可能性
今回、繰り返し出てくる言葉がチーム支援です。
支援ニーズの高いこどもに対して、一人の専門職だけで対応できるとは限りません。
たとえば、
- 児童指導員
- 保育士
- PT・OT・ST
- 看護職員
- 児発管
などが、それぞれの視点を持ち寄り、
一人のこどもについて共通の支援目標を持って関わる
ことが重要になります。
今回の検討案では、そのような多職種協働による支援を、事業所全体の支援体制として評価する方向が示されています。
「支援ニーズの高いこどもの受入れ」も評価候補
もう一つ注目したいのが、
支援ニーズの高いこどもの受入れ状況
です。
これまでの加算は、人員配置を中心に評価してきました。
しかし、実際には同じ人数・資格の職員を配置していても、
- 医療的ケアが必要
- 行動上の支援ニーズが高い
- 家族支援も含めた密度の高い支援が必要
など、事業所が担っている支援の難しさは異なります。
そこで新しい加算では、
誰を受け入れ、どのような体制で支援しているのか
も評価対象に加える方向が示されています。
ただし「支援ニーズが高いほど高単価」と決まったわけではない
ここも注意が必要です。
第65回資料では、
支援ニーズの高いこどもの受入れ状況や、それに応じた支援体制等を評価する
という方向が示されています。
しかし、
- どのこどもを「支援ニーズが高い」と判断するのか
- どの指標を使うのか
- 何点になるのか
- 加算単位はどうなるのか
までは示されていません。
したがって、
「重度のこどもを受け入れれば加算が増える」と現時点で断定することはできません。
現在の加算収入がそのまま維持される保証もない
今回の見直しは、児発・放デイの経営面でも重要です。
特に児童指導員等加配加算は、児発で84.7%、放デイで91.6%が算定しています。
つまり、多くの事業所にとって、現在の報酬構造の一部になっています。
これが新加算へ整理・統合される場合、
- 現在と同程度の単位になるのか
- より高い要件が設定されるのか
- 複数段階の評価になるのか
- 現在算定している事業所が引き続き算定できるのか
- 経過措置が設けられるのか
によって、影響は大きく変わります。
しかし、現時点ではこれらは決まっていません。
今の段階で新加算を前提とした収支計画を作るのは早いです。
「資格証をそろえる」だけでは足りなくなる可能性
現在の加算では、
- 資格
- 経験年数
- 配置状況
を確認するため、資格証や実務経験証明などが非常に重要です。
これらが不要になるわけではありません。
一方、新しい評価が、
専門人材+経験+チーム支援+支援ニーズへの対応
という複数要素になれば、
資格証だけでは事業所全体の支援体制を説明できなくなる可能性があります。
たとえば、
- 専門職がケース会議へどう参加しているか
- 個別支援計画と専門的支援がどうつながっているか
- 多職種でどのように支援方針を共有しているか
- 支援ニーズの高いこどもについて、どのような体制を組んでいるか
などが重要になる可能性があります。
ケース会議や個別支援計画とのつながりも重要に
ここは、前回の記事で取り上げた**「個別支援計画のチーム作成」**ともつながります。
第65回全体を見ると、
- 個別支援計画をチームで作る
- 職員研修を事業所全体で行う
- 多職種によるチーム支援を評価する
という方向が共通しています。
つまり、
専門職を配置する
↓
専門職だけが個別に支援する
のではなく、
専門職を含めたチームでアセスメントする
↓
個別支援計画へ反映する
↓
日々の支援へ落とし込む
↓
ケース会議等で評価する
という流れが、より重要になる可能性があります。
あわせて読みたい
第65回では、個別支援計画についても、児発管を中心にチームで協働して作成する方向が示されています。
個別支援計画は「児発管だけで作る」から変わる?チーム作成と役割分担を整理
これは「専門職評価を弱める」見直しではない
新加算の議論を見ると、
資格ではなくチームを見るなら、専門職の価値が下がるのでは?
と感じるかもしれません。
しかし、厚生労働省資料は、
「専門人材の活用」と「経験ある人材の評価」の方向性を維持する
と明記しています。
つまり、
専門職の配置をやめる方向ではなく、配置した専門職を事業所全体の支援の中でどう生かしているかまで見る
方向です。
これは大きな違いです。
事業所はいま何をすればいいのか
現時点では、新加算に合わせて人員配置を変更する必要はありません。
まして、
今の加配加算がなくなるから職員を減らす
新加算を取るために専門職を急いで採用する
といった対応をする段階ではありません。
単位数も要件も未確定だからです。
一方、現在の運営について、
- 加配職員が実際にどのような支援を担っているか
- 専門職の知見が個別支援計画へ反映されているか
- ケース会議で多職種が連携できているか
- 支援ニーズの高いこどもの受入れ体制を説明できるか
- 個々の職員の資格だけでなく、事業所として支援方針を共有できているか
を確認しておくことには意味があります。
これは令和9年度改定対策ではなく、
現在配置している人材が、本当に支援の質につながっているかを確認する作業
です。
「加算を取るための配置」から「支援のための体制」へ
今回の見直し案を一言で表すなら、ここだと思います。
現在の仕組みでは、
この職種を配置すればこの加算
この経験年数ならこの単位
という形が比較的分かりやすくなっています。
これは制度運用上のメリットがあります。
一方で、
加算要件を満たす人を配置すること自体が目的になってしまうリスク
もあります。
今回の案は、
誰を配置したか
だけでなく、
その人材を使って、事業所全体でどのような支援を実現しているか
へ評価を広げようとするものです。
まとめ|「人を配置したか」から「事業所としてどう支援できるか」へ
第65回障害福祉報酬改定検討チームでは、
児童指導員等加配加算と専門的支援体制加算を整理・統合した、新たな加算を創設する案
が示されました。
背景には、
- 児童指導員等加配加算の算定率が非常に高い
- 現在の仕組みでは支援強化のインセンティブとして十分機能していないとの指摘
- 資格・職種・経験年数など個人の配置だけでは事業所全体の支援体制を評価しにくい
- 地域によって専門人材の確保状況が異なる
といった課題があります。
新しい加算では、
- 専門人材の活用
- 経験ある人材
- チーム協働
- 支援ニーズの高いこどもの受入れ
- そのニーズに応じた支援体制
など、複数の要素から事業所全体を総合的に評価する方向が検討されています。
ただし、
単位数、具体的な評価項目、算定基準、経過措置はまだ決まっていません。
また、現段階で整理・統合の対象として明記されているのは、児童指導員等加配加算と専門的支援体制加算です。
専門的支援実施加算まで統合すると決まったわけではありません。
今は制度を予測して人員配置を変更するのではなく、
現在配置している人材が、個別支援計画やケース会議、日々の支援の中で実際に生かされているか
を確認しながら、今後の具体案を待つ段階です。
「職員を配置していること」と「支援に生かせていること」、つながっていますか?
今回示された新加算は、まだ令和9年度改定として決定したものではありません。
未確定の要件を想定して、人員配置や加算運用を変更する必要はありません。
一方、個別支援計画、ケース会議、日々の支援記録、職員間の役割分担が実際の支援体制とつながっているかは、現在の適正な事業運営でも重要です。
行政書士田中慶事務所では、既存の障がい福祉事業所を中心に、運営状況の整理、記録・計画の確認、運営リスクの点検などを行っています。
一次資料
今回の記事は、以下の厚生労働省・こども家庭庁の一次資料をもとに整理しています。
厚生労働省「第65回障害福祉報酬改定検討チーム」
2026年10月5日開催。議題は「令和9年度障害福祉報酬改定に向けて(障害児支援)」です。第65回の資料一覧から原資料を確認できます。
厚生労働省・こども家庭庁「障害児支援に係る報酬・基準について」
児童発達支援・放課後等デイサービスの「論点1 チーム支援の推進に向けた事業所全体の支援体制の評価について」で、両加算の現状、算定率、見直しの背景、新加算の検討方向が示されています。
