障がい福祉事業所のサービス管理責任者や管理者は、さまざまな立場の間に立っています。
利用者本人や家族の希望を受け止めながら、職員へ支援方針を伝え、法人の考え方とも調整する。
その一方で、個別支援計画、支援記録、加算、研修、委員会、行政への届出など、制度上求められる業務にも対応しなければなりません。
周囲からは責任者として頼られていても、自分が困ったときに相談できる相手がいない。
そんな状況になっているサビ管・管理者も、少なくないのではないでしょうか。
この記事では、精神障がいの当事者として福祉事業所を利用してきた行政書士の立場から、サビ管・管理者が抱えやすい悩みと、行政書士が一緒に整理できることをお伝えします。
サビ管・管理者は、簡単に弱音を吐けない
現場の職員から相談を受けるのも、利用者や家族から説明を求められるのも、管理者やサビ管です。
法人代表からは、事業所運営や収支について確認されることもあります。
さらに、運営指導や行政への届出があれば、必要な書類を確認し、事業所として説明できる状態を整えなければなりません。
そのため、
- 職員の前では不安そうに見せられない
- 法人代表には現場の苦しさを伝えにくい
- 利用者や家族には安心してもらわなければならない
- 行政には制度に沿って説明しなければならない
- 自分が判断しなければ業務が止まってしまう
という状況になりやすいのです。
責任者だから悩まないのではありません。
むしろ、責任者だからこそ、悩んでいることを周囲へ言いにくくなる場合があります。
本当に苦しいのは「何が正解か分からない状態」
障がい福祉事業所の運営には、明確に決まっていることと、現場で判断しなければならないことが混在しています。
たとえば、個別支援計画を作成する期限や、実施すべき研修・委員会などには一定のルールがあります。
一方で、実際の支援では、
- 本人の希望と家族の希望が異なる
- 支援員ごとに支援方針が違う
- 記録に何を残すべきか判断できない
- 現場の実態と書類の内容が合っていない
- 過去の書類が十分に整っていない
- 行政へどこまで説明すべきか迷う
- 法人代表と現場の認識が合わない
といった問題が起こります。
こうしたときに苦しいのは、単に仕事量が多いからだけではありません。
この対応でよいのか分からない
誰に聞けばよいのか分からない
間違っていた場合に、自分の責任になるのではないか
という不安を抱えたまま、判断を続けなければならないことです。
「できていないこと」を相談しにくい
制度や書類について相談しようと思っても、
こんなこともできていないと思われるのではないか
過去の不備を指摘されるのではないか
すぐに返還や処分の話をされるのではないか
と不安になることがあります。
しかし、書類が十分に整っていないことと、事業所が何も考えずに運営してきたことは同じではありません。
現場では、利用者対応や職員の欠勤、急な事故、家族への連絡などを優先するうちに、記録や会議録の作成が後回しになることがあります。
もちろん、必要な書類を整えなくてよいわけではありません。
ただ、すでに不足がある場合に必要なのは、責めることではなく、
- 現在、何があるのか
- 何が不足しているのか
- 過去について説明できることは何か
- 今後どのように改善するか
- どの業務から優先して整えるか
を分けて考えることです。
過去に実施していない研修や会議を、実施済みであるかのように作ることはできません。
一方で、今後使用する様式を整え、年間の実施計画を作り、同じ不足を繰り返さない運用へ変えることはできます。
利用者側から見てきたサビ管・管理者の姿
私は、精神障がいの当事者として複数の福祉事業所を利用してきました。
利用者として事業所にいると、管理者やサビ管が抱えているすべての事情が見えるわけではありません。
それでも、
- いつも職員から呼び止められている
- 電話対応に追われている
- 利用者対応の途中で行政から連絡が入る
- 職員同士の調整をしている
- 笑顔で対応しているが、明らかに疲れている
と感じる場面がありました。
利用者にとって、管理者やサビ管は事業所の中心に見えます。
しかし、その人自身を支える仕組みは、必ずしも用意されていません。
私は行政書士になった今も、このことを忘れないようにしています。
事業所の書類を確認するときも、単に「できている」「できていない」と評価するのではなく、なぜその状態になったのかを一緒に整理することが必要だと考えています。
書類の問題に見えて、実際は運用の問題であることも多い
サビ管や管理者から相談を受ける課題は、最初は書類の問題として現れることがあります。
たとえば、
- 個別支援計画が期限内に作成できていない
- 支援記録の内容が毎日ほぼ同じ
- モニタリングの根拠が分からない
- 会議録が残っていない
- 研修や委員会の実施時期が分からない
といったものです。
しかし、確認を進めると、書き方だけが原因ではないことがあります。
役割分担が決まっていない
誰が原案を作り、誰が会議を開き、誰が同意を確認するのかが曖昧なため、サビ管一人に業務が集中している場合があります。
職員から必要な情報が集まらない
日々利用者と接している職員の気づきが、支援記録や申し送りへ残っていないため、計画作成に必要な情報が不足します。
様式が現場に合っていない
項目が多すぎたり、同じ内容を複数の書類へ記載したりする運用になっているため、作成が続かないことがあります。
法人内で優先順位が共有されていない
書類整備の必要性を管理者やサビ管だけが理解し、法人代表や他の職員に伝わっていない場合があります。
このようなケースでは、書類の文章だけを修正しても、しばらくすると同じ問題が起こります。
必要なのは、実際の業務の流れを確認し、続けられる運用へ組み直すことです。
第三者へ話すことで、問題を分けて考えられる
一人で悩んでいると、複数の問題が一つの大きな不安に見えてしまいます。
たとえば、
書類ができていない
職員も動いてくれない
運営指導が来たらどうしよう
加算も返還になるかもしれない
もう何から手を付ければよいか分からない
という状態です。
しかし、第三者と一緒に確認すると、
- すぐ対応する必要があるもの
- 次回更新時に見直すもの
- 今後の様式を整えればよいもの
- 法人内で判断してもらうもの
- 行政や他士業への確認が必要なもの
に分けられることがあります。
問題がすべてなくなるわけではありません。
それでも、優先順位が分かれば、今日から何をすればよいかは見えやすくなります。
行政書士田中慶事務所が一緒に整理できること
行政書士田中慶事務所では、大阪市の障がい福祉事業所を中心に、次のような支援を行っています。
- 個別支援計画と支援記録の整合性確認
- アセスメント、モニタリング、会議録の点検
- 運営書類や加算根拠資料の整理
- 法定研修・委員会・訓練の年間運用支援
- 現在不足している書類の確認
- 今後使用する様式や手順の整理
- 運営指導前の書類確認
- 制度改正や行政資料の位置づけの整理
- 行政へ提出する書類の作成支援
単に書類の不足を指摘するだけではなく、
現場で続けられる方法になっているか
誰が、いつ、何を行うのか
実際の支援と記録がつながっているか
まで一緒に確認します。
ただし、行政書士が対応できるのは、制度、許認可、届出、運営書類などの範囲です。
職員の労働条件や社会保険などは社会保険労務士、税務や会計は税理士、深刻な心身の不調については医療機関など、内容に応じて適切な専門家へつなぐ必要があります。
相談したからといって、すぐ契約する必要はない
今の状況を誰かに話すことと、すべての業務を外部へ依頼することは別です。
相談した結果、
- 事業所内で対応できる
- まず法人内で話し合う必要がある
- 自治体へ確認した方がよい
- 他士業へ相談した方がよい
- 現時点では急いで対応する必要はない
と分かることもあります。
重要なのは、曖昧な不安を抱えたまま、一人で判断を続けないことです。
まとめ|責任者にも、整理するための相手が必要です
サビ管や管理者は、事業所の中で多くの人から頼られる立場です。
しかし、責任者だからといって、すべてを一人で判断できるわけではありません。
- 現場の支援
- 職員との関係
- 法人の方針
- 制度上の要件
- 計画や記録
- 行政への説明
これらが重なれば、どこから手を付ければよいか分からなくなるのは不自然なことではありません。
私は、利用者として福祉現場を見てきた経験と、行政書士として制度や書類を確認する立場の両方から、サビ管・管理者が抱えている課題を一緒に整理します。
何でも解決できるわけではありません。
それでも、
今、何が問題なのか
何から対応すればよいのか
誰に確認すべきなのか
を分けて考えることはできます。
事業所を支える責任者にも、安心して状況を整理できる相手が必要です。
