「B型事業所って儲かるの?」「助成金が出るから始めやすいって聞いたけど…」
そんなワードを目にして、私は正直、胸がざわつきました。
もちろん、事業である以上、利益を出すことはとても大切です。
でも、B型事業所はただの“ビジネスチャンス”ではなく、障がいのある人の「暮らし」そのものに関わる仕事です。
この記事では、「儲けられるかどうか」だけを軸に福祉事業に参入しようとしている方、またはすでに参入したけれど戸惑いを感じている方に向けて、事業の本質や向き合い方の大切さをお伝えします。
検索キーワードが教えてくれる「B型事業所の誤解」
B型事業所について調べようと検索窓に打ち込むと、上位に出てくるのが「やめとけ」「儲かる」「助成金目当て」などの言葉。
これらのワードは、事業所そのものが誤解や偏見にさらされていることを物語っています。
しかし、こうした検索が生まれる背景には、実際に「安易な目的で参入してしまった事業者」が一定数存在するという現実もあるのかもしれません。
B型事業所は、国の制度に基づき運営されており、確かに助成金などがあります。でもそれは「儲かるからやる事業」ではなく、支援が必要な人に対して、日々の居場所と就労機会を提供するという“福祉的使命”を担う場です。
「儲かるから」だけの参入が失敗しやすい理由
実際に「B型事業所は儲かるらしいから始めた」という人のうち、数年以内に撤退しているケースもあります。
その理由は共通していて、だいたい次のようなものです。
- 思ったより利用者が集まらなかった
- 人材の確保や育成が想像以上に大変だった
- 行政対応や報酬請求の仕組みが複雑だった
- 利益が出るまでの期間が長すぎた
B型事業所は、開設すれば即収益が出るようなスキームではありません。
定員を満たし、信頼を築き、職員を安定的に確保し、ようやく黒字化するケースがほとんどです。
しかも、福祉報酬の制度は定期的に改定されるため、油断していると突然、採算が合わなくなることもあります。
そもそも「なぜ、B型事業所をやりたいのか?」
ここで、ぜひ立ち止まって考えてほしいのが「そもそも、なぜ自分はこの業界で起業したいと思ったのか?」という問いです。
- 身近な人が障がいを持っていて、支援の必要性を実感した
- 自分自身が当事者として福祉の力に救われた
- 地域に安心できる居場所を作りたいと強く思った
こうした“原体験に基づく想い”がある人の方が、長くこの仕事を続けている印象があります。
利益は必要です。でも、それは目的ではなく、「事業を持続可能にするための手段」。
目的はあくまで、利用者の生活を支え、その人の力を引き出すこと。
この原点を忘れてしまうと、事業は空虚になり、結果的に利益すら出せなくなっていきます。
「撤退」は経営者だけの問題ではない
他の業界と違い、福祉事業での撤退は単なる「経営判断」で済まされません。
なぜなら、そこには“通ってくれていた利用者”の暮らしがあるからです。
特にB型事業所は、日中の居場所として利用者の日常に深く根付いています。
中には「慣れた場所を離れることが極端に苦手な方」もいます。
その事業所が急に閉じてしまうことで、その方の生活そのものが崩れてしまう可能性すらあります。
この業界に参入するということは、人の人生に関わるということ。
だからこそ、軽い気持ちで始めるべきではないのです。
「儲け話」ではなく「地域を支える仕組み」だと考えてほしい
B型事業所は、地域で暮らす障がい者が安心して通い、社会とつながり続けるための“仕組み”です。
つまり、「人が地域で生きていくために必要な社会インフラの一部」なんです。
この分野に熱意を持って取り組む方が増えれば増えるほど、
利用者・家族・支援者・地域の誰もが「ここに来れば大丈夫」と思える場所が広がっていきます。
「どうすれば利益が出るか」ではなく、まず「なぜこの事業をやるのか」。
その本質から目をそらさずに取り組めば、結果的に収益も安定していく。
私はそう信じています。
熱意があるあなたへ|今からでも考えるべき3つの視点
もしあなたが今、不安を感じていたり、「始めてみたけど思ってたのと違う…」と感じていたりするなら、次の3つの視点を見直してみてください。
① 原点に戻る:「なぜ自分はこの事業をやるのか?」
動機の再確認です。あなたの中にある想いを言葉にして、何度でも見返せるようにしましょう。
② 計画を見直す:「どうすれば持続可能になるか?」
収支計画、採用、人材育成、地域連携、制度の理解。それらが具体化できているかチェックしてみてください。
③ 居場所づくりの覚悟:「自分の事業は誰のためにあるのか?」
“利用者にとっての居場所を守る責任”を、経営計画の中に織り込めているかどうかも大切です。
さいごに|地域の安心の一部になるために
福祉事業を始めるということは、誰かの人生に深く関わるということです。
B型事業所を「お金になるから」とだけ考えている人にとっては、決して楽な道ではありません。
けれども、心から「やりたい」と思える理由がある人にとっては、かけがえのない事業になるはずです。
地域に根ざし、支援を必要とする人たちと共に歩む。
その想いを胸に、これからの福祉を担う“本気の起業家”が増えてくれることを願ってやみません。
熱い想いをお持ちで、障がい者福祉分野への参入をお考えの方は、以下の問い合わせからご相談ください。