はじめに|支援記録の例文を探している方へ
支援記録をどのように書けばよいか分からず、具体的な例文を探している方も多いのではないでしょうか。
例文は、記録の順序や表現を考えるうえで参考になります。
ただし、例文に近い形で書いていても、個別支援計画や実際に行った支援とのつながりが分からなければ、記録として十分とはいえません。
支援記録で大切なのは、文章のうまさよりも、
- 何が起きたのか
- 職員がどのような支援を行ったのか
- 利用者がどのような反応を示したのか
- 次の支援に何をつなげるのか
が具体的に伝わることです。
この記事では、障害福祉の現場で参考にできる支援記録の例文20選を、OK例とNG例に分けて紹介します。
食事、活動、体調不良、家族連携など、場面別に整理しています。
記事後半では、記録を確認するときに使える「支援記録セルフチェックシート」もご案内しています。
この記事で見られる支援記録の例文
この記事では、次のような場面別の支援記録例文を紹介しています。
- 食事介助・食事拒否
- 偏食への対応
- グループ活動でのトラブル
- 外出支援
- 自傷行為への対応
- 発熱時の対応
- 家族との面談
- 医療機関との連携
すぐに例文を確認したい方は、以下の「場面別例文20選」からご覧ください。
【場面別】支援記録の例文20選とNG表現
ここでは、支援場面ごとに「伝わりやすい記録」と「避けたい表現」を比較して紹介します。
なお、例文はそのまま転記するのではなく、実際に確認した事実、本人の発言、行った支援に合わせて調整してください。
I. 日常生活支援・食事(5例)
| 場面 | 良い記録(OK例) | NG表現(悪い記録) |
|---|---|---|
| 食事の拒否 | 食事介助時、本人が「いらない」と発言し、首を横に振った。無理に勧めず、10分後に再度声をかけたところ、「一口だけ」と返答があった。大根の煮物を2切れ摂取した。拒否の理由について尋ねたが、返答はなかった。 | 「食事を拒否されて大変だった。結局あまり食べてくれなかった。」 |
| 偏食への対応 | 個別支援計画の目標「野菜を一口食べる」に基づき、かぼちゃの天ぷらを一口分提供した。本人は一口分を摂取し、その後、口角を上げて職員の方を見た。職員が「食べられましたね」と声をかけた。 | 「かぼちゃをちゃんと食べた。えらい。」 |
| 誤嚥リスク | 嚥下体操後に食事を開始した。プリンを飲み込んだ際に1回むせが見られたため、上体を起こして姿勢を調整した。以降はむせなく、残りを摂取した。 | 「食事中にむせて焦ったが、その後は大丈夫だった。」 |
| 食事量が少なかった場面 | 普段は完食しているが、本日は主食を約3分の1残した。体温は36.5℃で、本人から体調不良の訴えはなかった。次回利用時も食事量と体調を確認する。 | あまり食べなかった。体調が悪いのかもしれない。 |
| 休憩中の様子 | 食後、ソファーに座り目を閉じていた。利用者Bさんが声をかけたが、返答はなかった。職員が体調を確認したところ、本人から「大丈夫」と返答があったため、そのまま休憩を継続した。 | Bさんに話しかけられても無視していた。 |
II. 余暇・活動支援(5例)
| 場面 | 良い記録(OK例) | NG表現(悪い記録) |
|---|---|---|
| グループ活動で意見が食い違った場面 | 塗り絵活動中、利用者Cさんと同じ色鉛筆を取ろうとして、互いに声量が大きくなった。職員が間に入り、「順番に使いましょう」と説明した。本人はうなずき、別の色を選んで塗り絵を再開した。 | 利用者同士で喧嘩になりそうになった。介入して何とか収まった。 |
| 外出支援中に声量が大きくなった場面 | 電車移動中、本人の独り言の声量が大きくなった。事前に決めていた合図として肩に触れたところ、本人は職員を見て、その後は声量を下げて話した。 | 「電車でうるさかったので注意した。」 |
| 作業への集中が途切れた場面 | シール貼り作業を開始して15分後、手が止まり、周囲を見る様子が増えた。職員が「あと5分続けてから休憩しますか」と尋ねたところ、本人は「はい」と返答した。その後5分間作業を継続し、休憩に入った。 | 「集中力がなくて困る。」 |
| 好きな活動に取り組んだ場面 | 将棋に30分間取り組んだ。対戦相手のDさんに自分から駒の動かし方を説明し、対局終了後に「またやりたい」と発言した。 | 「今日も将棋をしていた。楽しそうだった。」 |
| 疲労が見られた場面 | 午後の活動中にあくびが5回見られ、作業の手が止まる時間が増えた。本人に休憩を提案したところ、「休みたい」と返答したため、別室で30分休憩した。休憩後、本人から「戻れます」と発言があり、活動を再開した。 | 「疲れているようだった。」 |
III. 自傷行為・体調不良への対応(5例)
| 場面 | 良い記録(OK例) | NG表現(悪い記録) |
|---|---|---|
| 自分の手を叩く行為が見られた場面 | 職員交代後、自分の手の甲を叩く行為が5回見られた。職員が「担当職員は後で戻ります」と説明し、本人の隣で待機した。その後10分間、同様の行為は見られなかった。 | 「突然手を叩き始めた。原因不明。」 |
| 入浴を拒否した場面 | 入浴前、本人が浴室入口で立ち止まり、浴槽の縁を両手でつかんだ。職員が入浴の手順を説明し、本人の好きな歌を一緒に歌った。約5分後、本人から「入る」と発言があり、入浴を開始した。 | 「入浴を嫌がって大変だった。無理やり入れた。」 |
| 「家に帰りたい」と発言した場面 | 本人が「家に帰りたい」と大きな声で3回発言した。静かな場所への移動を提案したところ、本人は了承した。移動後に「不安なことはありますか」と尋ねたところ、「お母さんに会いたい」と発言した。5分後には声量が下がった。 | 「感情的になっていた。」 |
| 発熱時の対応 | 10時の検温で体温37.8℃を確認した。平熱は36.5℃。顔に赤みが見られたため、午前中の活動を中止し、静養室で休んでもらった。11時に看護職員へ報告し、指示を受けた。 | 「熱が出たので休ませた。病院に電話した。」 |
| 頓服薬を使用した場面 | 19時、本人から頭痛の訴えと頓服薬の使用希望があった。体温は36.4℃。指示書と服薬条件を確認し、担当職員立会いのもと服用した。30分後、本人から「少し楽になった」と発言があった。 | 「薬をあげた。」 |
IV. 家族・関係機関との連携(5例)
| 場面 | 良い記録(OK例) | NG表現(悪い記録) |
|---|---|---|
| 家族との面談 | 母親と面談し、家庭での排泄状況について情報共有した。自宅でも日中は1時間ごとに声をかける方針を確認した。次週月曜日に電話で状況を確認する。 | 「お母さんと色々と話した。家でも頑張るらしい。」 |
| 医療機関との連携 | 歯科受診に同行した。虫歯治療が終了し、歯科医師から定期的なフッ素塗布について説明があった。次回受診は3か月後で予約した。 | 「歯医者に行った。治療が終わった。」 |
| 他事業所との情報共有 | 〇〇ヘルパーステーションの担当者から、「移動中に発言が少なく、視線を下に向ける時間が増えている」と情報提供があった。事業所でも今週の活動中の発言と様子を確認し、次回の情報共有時に報告する。 | 「ヘルパーさんから変な情報をもらった。」 |
| 利用者から意見があった場面 | 利用者Gさんから「午後の活動がつまらない」と発言があった。希望する活動を尋ねたところ、「音楽を聴きたい」と回答した。管理者へ共有し、次週までに対応を検討する。 | 「クレームが入った。」 |
| サービス担当者会議 | サービス担当者会議を実施し、支援方法について主治医および関係者と意見交換した。主治医から「職員間で声かけ方法を統一することが望ましい」と助言があった。事業所内で支援方法を整理し、次回会議まで実施状況を確認する。 | 「会議をした。」 |
🌟 支援記録の基本原則:押さえるべき3つのポイント
1. 事実と解釈を明確に分ける
客観的な事実(いつ、どこで、誰が、何を、どうした)と、それに対する支援者の解釈・評価を混ぜないことが鉄則です。
NG例
Aさんは今日もやる気がなく、食事を残した。
「やる気がない」は職員の解釈です。
OK例
Aさんは、配膳された食事を半分残した。職員が理由を尋ねたが、返答はなかった。
職員の評価を記録する場合も、その根拠となる言動や本人の発言を併せて残します。
2. 5W1Hを意識して具体的に書く
「何をしたか」だけではなく、
- いつ
- どこで
- 誰が
- 何を確認したか
- どのような支援をしたか
- その結果どうなったか
を順序立てて記録します。
3. 個別支援計画とのつながりを意識する
支援記録は、その日の出来事を並べるだけのものではありません。
個別支援計画に定めた目標や支援内容に対して、実際にどのような支援を行い、どのような変化があったのかを記録します。
「大変だった」「頑張った」といった感想ではなく、実際の支援内容と利用者の反応を具体的に残すことが重要です。
例文を参考にするときの注意点
例文は、記録の書き方を考えるための参考になりますが、そのまますべての事業所や利用者に当てはめることはできません。
■ 例文を参考にしやすいケース
- 日常的な食事や活動の記録
- 定型的な声かけや環境調整
- 実際に確認した事実を整理するとき
- 個別支援計画と支援内容が一致している場面
■ 特に慎重な記録が必要なケース
- 自傷行為や他害行為への対応
- 身体拘束や行動制限に関係する対応
- 服薬や医療機関との連携
- 事故やヒヤリハット
- 苦情やトラブルへの対応
- 家族や関係機関との重要な協議
これらの記録では、例文をコピーするのではなく、
- 実際に起きたこと
- 発生前後の状況
- 職員が行った対応
- 本人の反応
- 関係者への報告
- 今後の対応
を正確に記録する必要があります。
「例文として正しい」と「適切な記録」は同じではない
文章として読みやすい例文であっても、自事業所の支援記録として適切とは限りません。
たとえば、
- 個別支援計画とつながっていない
- 実際には行っていない支援が書かれている
- 支援の目的が分からない
- 本人の発言と職員の解釈が混在している
- 職員間で記録ルールが統一されていない
といった状態では、支援の経過を十分に説明できません。
例文は、あくまで書き方を考えるための参考として使い、実際の支援内容に合わせて記録することが重要です。
避けたいNG表現と改善方法
| NG表現 | 問題点 | 書き換え例 |
|---|---|---|
| 通常どおり | 何を行い、どのような様子だったか分からない | 個別支援計画に沿って作業手順を説明した。本人は説明後、作業を開始した |
| 頑張った | 職員の評価であり、具体的な行動が分からない | 職員の声かけ後、自分で上着を着た |
| 問題なし | 何を確認して問題がなかったのか分からない | 体温36.5℃。本人から体調不良の訴えはなく、予定していた活動に参加した |
| 落ち着いた | どのような変化があったのか分からない | 声量が下がり、椅子に座って職員の説明を聞いた |
| いつもどおり | 日々の具体的な様子が記録されていない | 普段と同様に9時30分から作業を開始し、途中で席を離れることなく30分間取り組んだ |
支援記録セルフチェックシート
ここまで例文を読んで、
自事業所の記録は、支援内容が伝わるものになっているだろうか
と感じた方もいるかもしれません。
支援記録では、次のような点を確認することが重要です。
- 記録が抽象的な表現だけになっていないか
- 職員が行った支援が具体的に書かれているか
- 利用者の反応や変化が記録されているか
- 個別支援計画との関係が読み取れるか
- 次に必要な対応が明確になっているか
事業所内で記録を確認するときに使える「支援記録セルフチェックシート」を無料で配布しています。
職員会議や記録確認の際にご活用ください。
まとめ
支援記録では、きれいな文章を書くことよりも、
- 実際に起きたこと
- 職員が行った支援
- 利用者の反応
- 支援後の結果
- 次に必要な対応
を具体的に記録することが大切です。
例文は書き方を考えるうえで役立ちますが、そのまま転記するのではなく、利用者の状況、個別支援計画、実際に行った支援に合わせて調整する必要があります。
また、日々の支援記録が整っていても、個別支援計画やモニタリングとのつながりが確認できなければ、支援全体の経過を説明しにくくなります。
現在の記録について、
- 個別支援計画の目標と記録内容がつながっているか
- 支援内容や利用者の反応が具体的に残っているか
- 同じ表現の繰り返しになっていないか
- モニタリングに活用できる記録になっているか
を整理したい場合は、支援記録・個別支援計画の整合性レビューをご確認ください。
