はじめに
障がい者福祉事業所では、日々の業務として、支援記録の記載があると思います。これから、新規参入を考えられている事業主様にとって、帳票類の書式の準備と、記載運用のルール化など、頭を悩ます事項になるかもしれません。また、すでに開業されている事業所様でも、日々の業務のなかでも工数がかかって、利用者様への支援が手薄になるといった本末転倒な事が起こっていたりしないでしょうか。支援記録は、日々の関わりを振り返り、利用者さんの様子や変化をチームで共有するための大切なツールです。「こんなことがあったな」「次はこうしてみよう」と考えるヒントにもなります。一人ひとりの思いや成長を見守るために、記録を通して気づきを重ね、より良い支援につなげていくことが目的です。効率的に有用な情報の共有ツールとして活用していくために、支援記録についてまとめました。
支援記録の書き方
基本的な書き方の手順
まずは「いつ・どこで・誰に・何をしたか」を簡潔に書くことから始めましょう。その上で、支援の目的や相手の反応、気づいたことなどを添えると、内容がより伝わりやすくなります。完璧を目指すより、「あとで読み返してわかること」が大切。大事な事として、「事実」か「主観」かについては、区別して記録する必要があります。そこは、切り離すようにするか、もしくは「事実」だけを記録するという風にルール化するのもよいと思います。
記録内容の具体例
たとえば「午前中、Aさんと散歩へ。途中でベンチに座り、桜を鑑賞。表情が穏やかで、笑顔も見られた」など、具体的な場面や様子を記録します。後から見た人にも伝わりやすくなります。ちょっとした気づきも大切な情報になります。
利用者のニーズに応じた記録
支援記録は、利用者さん一人ひとりのニーズに合わせて書くことが大切です。たとえば「自立を目指している方」には、その日にできたことや工夫した様子を中心に記録します。困りごとがある方には、どんなサポートが有効だったかを残しておくと、次につながります。相手の目線に寄り添って書くことがポイントです。
ケース記録の改善方法
記録内容の見直し
支援記録はただのメモではなく、利用者さんの大切な情報を記録するものです。そのため、日々の記録内容を見直すことはとても大切です。「これで良いのか?」と自問しながら記録を振り返ることで、より効果的な支援ができるようになります。
1. 利用者さんの状況を具体的に
記録を見返すとき、利用者さんがどのような状態だったかを、なるべく具体的に記載することがポイントです。「元気だった」と書くだけでは不十分なこともあります。例えば、「今日は明るく話しかけてくれた」や「ちょっと不安そうだったが、少しずつ落ち着いてきた」など、感情や態度も含めて記録に残すと、後から読み返すときに状況がよく伝わります。
2. どんな支援をしたかを明確に
何をしたのかを振り返りやすくするために、支援の内容を整理して記載することが大切です。「話を聞いた」という記録でも、その内容や過程を具体的に書くことで、支援の質やその後の対応に繋がります。「どんな質問をしたのか」「どんな反応があったか」「その後どうなったか」など、ちょっとした工夫で記録がより充実したものになります。
3. 支援の結果や効果を評価する
支援をした後、その結果や効果を感じた点を記録に反映させることで、今後の支援方法に活かすことができます。良い結果だけでなく、うまくいかなかった場合も、なぜそうなったのかを振り返ることが大切です。これにより次回に向けての改善点を見つけやすくなります。
4. 反省と次回の目標を考える
記録が終わった後は、反省点や次回の支援の目標を考える時間を作りましょう。どんなことがうまくいったのか、どんな部分を改善できるかを振り返ることで、支援の質が向上します。また、次回に向けてのアクションを記録として残すことで、次回の支援がスムーズに進みやすくなります。記録内容の見直しを行うことで、支援がより一層効果的になり、利用者さんにとっても良い結果を生むことができます。少しの工夫で、記録がより充実したものになりますので、ぜひ意識して取り組んでみてください。
実地調査と改善点の把握
支援記録をより良いものにするためには、実際に行った支援がどのように影響を与えたのかを把握することが大切です。実地調査を通して、支援がどのように展開され、利用者さんがどんな反応を示したのかを観察し、改善点を見つけ出すことで、次回に繋がるより質の高い支援を行うことができます。
1. 実地調査を通じて得られるもの
実地調査とは、支援を実際に行っている現場での観察やフィードバックを指します。記録に頼らず、現場で起こった出来事をその場でしっかりと把握することが重要です。例えば、支援中に利用者さんが見せた表情や反応を注意深く観察し、その場でのやり取りを振り返ることで、記録内容によりリアルな情報を反映させることができます。
2. 利用者さんの反応を注意深く見る
支援を行っている最中、利用者さんがどんな態度や感情を示しているかに注目しましょう。「大丈夫」と言っても顔が曇っている、あるいは、無理に笑顔を作っている場合など、言葉だけではわからない心理的な変化があるかもしれません。こうした細かな反応に気をつけ、支援のアプローチを見直すことで、より効果的な支援ができるようになります。このときに注意したいのは、利用者様の表情などの「事実」と、その時の状況から推察される職員の「主観」が、混ざらないようにすることです。
3. 改善点の把握
実地調査を通して得た情報を元に、支援のどの部分がうまくいったのか、どこに改善の余地があるのかを把握することが重要です。たとえば、支援がスムーズに進んだ場面と、少し行き詰まった場面を振り返り、その原因を考えることが必要です。「この方法は有効だった」「この支援の進め方に工夫が必要かもしれない」といった気づきを記録に反映させることで、次回の支援に活かすことができます。
4. フィードバックと反省
支援後に、実際に支援を受けた利用者さんからのフィードバックを求めることも、改善点を見つけるためには有効です。利用者さん自身が感じたことや気になる点を聞くことで、自分では気づかなかった課題が浮き彫りになることがあります。また、支援チームでの振り返りも有益です。チームでの意見交換を通じて、新たな視点が得られることもあるので、積極的に行うと良いでしょう。
実地調査と改善点の把握を通して、支援の質がどんどん向上していきます。現場での小さな気づきが大きな成果を生むこともあるので、日々の観察を大切にしながら、より良い支援を目指していけたらよいのかなと思います。
まとめ
下準備として、効率的かつ漏れなく記録を残せるような工夫された、書式やツールを用意しておくことが肝要です。そして、記録の残し方のルールを職員間で統一する様なルール作りを行うことも必要でしょう。目指すべき記録は、「誰が記録しても、効率的に記録出来て、品質が担保されている」ことです。
そのための書式づくりなど、障がい福祉事業所の運営面でのサポートは、行政書士でも行っています。一度、障がい者福祉分野に特化した行政書士にご相談してみるのもいいと思います。
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