「高校を卒業した後、今の支援はどうなるのだろう」
「18歳になったら、すぐに成人向けの制度へ切り替わるのだろうか」
障がいのある子どもを育てるご家族にとって、18歳前後は、進路や福祉サービス、生活の組み立て方が大きく変わる時期です。
一般に「18歳の壁」と呼ばれますが、すべての制度が18歳の誕生日に一斉に変わるわけではありません。
実際には、
- 18歳になる時期
- 高校を卒業する時期
- 成人向け障害福祉サービスを利用し始める時期
- 20歳を迎える時期
に、それぞれ異なる手続きや検討事項があります。
大切なのは、18歳になってから慌てることではなく、高校卒業後にどのような生活を送りたいかを早めに具体化することです。
「18歳の壁」は一日で起こるものではありません
「18歳の壁」という言葉からは、18歳の誕生日を境に、それまで利用していた制度がすべて終了するような印象を受けるかもしれません。
しかし、実際の制度移行は、年齢だけでなく、在学状況や利用しているサービス、本人の希望、必要な支援内容によって異なります。
特に区別しておきたいのが、次の3つの時期です。
18歳になる時期
18歳になると法律上は成人となり、契約や手続きについて、原則として本人の意思がより重視されるようになります。
本人がどのような生活を希望しているのか、どの支援を利用したいのかを、家族や支援者が一方的に決めるのではなく、本人と一緒に整理していくことが重要です。
高校を卒業する時期
放課後等デイサービスは、主として学校に就学している障がい児を対象とするサービスです。
そのため、多くの場合、高校卒業が放課後等デイサービスから成人向け障害福祉サービスへ移行する大きな節目になります。
ただし、18歳以上でも、引き続き放課後等デイサービスを利用しなければ本人の福祉を損なうおそれがあると市町村が認めた場合には、満20歳まで利用できる特例があります。誰でも自動的に延長できるものではないため、早めに自治体へ確認する必要があります。
20歳になる時期
子どもの頃から障がいがある場合、20歳前の傷病による障害基礎年金を検討する時期が訪れます。
障害年金は18歳になった時点で自動的に支給されるものではありません。障がいの程度などの要件に該当する場合に、20歳を過ぎてから請求手続きを行います。
したがって、「18歳の手続き」と「20歳の障害年金」は分けて考える必要があります。
高校卒業後に利用できる主な障害福祉サービス
高校卒業後の進路は、一般就労だけではありません。
本人の希望、生活能力、体調、必要な介助、働くことへの準備状況などに応じて、さまざまな選択肢があります。
生活介護
生活介護は、常時介護を必要とする方に対して、主に日中、食事や排せつなどの介護、生活上の相談、創作活動や生産活動の機会などを提供するサービスです。
原則として、年齢や利用形態に応じた一定の障害支援区分が必要になります。
就労移行支援
一般企業などへの就職を希望する方に対して、就職に必要な知識や能力の向上、職場探し、就職後の定着に向けた支援を行います。
利用期間が定められているため、本人がどのような働き方を目指しているのかを確認したうえで選ぶ必要があります。
就労継続支援A型
雇用契約を結び、支援を受けながら働くサービスです。
一般企業での就労が難しいものの、雇用契約に基づいて継続的に働くことが可能な方が対象となります。
就労継続支援B型
雇用契約を結ばず、生産活動や作業を通じて、働くための知識や能力の向上・維持を目指すサービスです。
2025年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用する場合は、原則として利用申請前に就労選択支援を利用し、就労面に関する課題などの把握を受ける必要があります。ただし、就労経験がある方など、就労選択支援を経ずに利用できる場合もあります。
自立訓練
自立した日常生活や社会生活を目指し、生活能力や身体機能を高めるための訓練を受けるサービスです。
就労だけでなく、生活リズム、家事、外出、対人関係などに課題がある場合には、進路の選択肢になることがあります。
成人向けサービスは自動的に始まるものではありません
放課後等デイサービスを利用していたからといって、高校卒業後に成人向けサービスへ自動的に引き継がれるわけではありません。
成人向けの障害福祉サービスを利用するには、原則として市区町村へ申請し、新たな支給決定を受ける必要があります。
一般的には、次のような流れで進みます。
- 市区町村や相談支援事業所へ相談する
- 卒業後の生活や希望するサービスを整理する
- 利用する事業所を見学・体験する
- 障害福祉サービスの利用申請を行う
- サービス等利用計画案を作成する
- 必要に応じて障害支援区分の認定を受ける
- 支給決定後、事業所と利用契約を結ぶ
支給決定では、本人の心身の状況だけでなく、生活環境、介護者の状況、サービスの利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえて判断されます。
相談支援事業所では、本人の希望や生活上の課題を整理し、サービス等利用計画の作成や、利用開始後の見直しを支援します。
障害支援区分が必要かは、利用するサービスによって異なります
成人向けサービスを利用する際、必ずすべての人が障害支援区分の認定を受けるわけではありません。
障害支援区分は、介護の必要度を示すものであり、主に介護給付に分類されるサービスで利用要件に関係します。
例えば、生活介護、居宅介護、短期入所などでは、一定の障害支援区分が必要になる場合があります。
一方、就労移行支援や就労継続支援A型・B型などは、原則として障害支援区分を利用要件としていません。
そのため、「成人になると区分が下がってサービスを受けられなくなる」と一括して考えるのではなく、希望するサービスについて区分認定が必要かを個別に確認することが重要です。
準備は高校2年生頃から始めても早すぎません
卒業後に利用したい事業所が決まっていても、定員や受け入れ体制によって、希望どおりに利用できるとは限りません。
また、事業所の雰囲気、支援内容、作業内容、送迎の有無、昼食、医療的ケアへの対応などは、実際に見学しなければ分からない部分があります。
目安としては、次のように準備を進めるとよいでしょう。
高校2年生頃
- 卒業後の生活や進路について家族で話し始める
- 学校や相談支援専門員から情報を集める
- 地域にどのような事業所があるか確認する
- 本人が希望している生活や活動を整理する
高校3年生の前半
- 候補となる事業所を見学する
- 実習や体験利用に参加する
- 通所方法や送迎、利用日数を確認する
- 生活介護や就労支援など、希望するサービスを絞る
高校3年生の後半
- 市区町村への利用申請を進める
- サービス等利用計画案を作成する
- 必要に応じて障害支援区分の認定を受ける
- 利用予定事業所との契約準備を進める
- 学校や現在の支援者から引継ぎを行う
自治体やサービスによって手続きの時期は異なります。卒業直前では間に合わないこともあるため、具体的な期限は早めに市区町村へ確認してください。
障害年金は20歳前から資料を整理しておく
20歳前に初診日がある病気やけがによって一定の障がいがある場合、20歳以降に障害基礎年金を請求できる可能性があります。
ただし、障害者手帳を持っていることや、障害福祉サービスを利用していることだけで、障害年金の受給が決まるわけではありません。
請求に備えて、18歳頃から次の情報を整理しておくとよいでしょう。
- 最初に医療機関を受診した時期
- これまでの通院歴や転院歴
- 学校生活で必要だった配慮
- 日常生活で家族が行っている支援
- 一人では難しいこと
- 就労や対人関係で生じている困難
- 福祉サービスの利用状況
障害年金の請求手続きや受給可能性については、年金事務所、市区町村の国民年金窓口、障害年金を扱う社会保険労務士などへ相談することが考えられます。
本人の希望を中心に、関係者で情報を共有する
制度移行では、手続きを終えることだけが目的ではありません。
大切なのは、本人が高校卒業後にどのような生活を送りたいのかを確認し、その生活に必要な支援を整えることです。
そのためには、
- 本人
- 家族
- 学校
- 相談支援専門員
- 自治体
- 放課後等デイサービス
- 卒業後に利用する事業所
- 医療機関
などが、本人の状態や希望、必要な配慮を共有する必要があります。
特に、学校や放課後等デイサービスで蓄積された支援方法、本人が落ち着きやすい環境、苦手な場面、意思表示の方法などは、卒業後の事業所にとって重要な情報です。
書類だけを渡して終わるのではなく、必要に応じて支援者同士が直接話し合える機会を設けることも検討しましょう。
まとめ|18歳になってからではなく、高校卒業後の生活から考える
「18歳の壁」は、18歳の誕生日に突然現れる一つの壁ではありません。
高校卒業、児童向けサービスの終了、成人向け障害福祉サービスの利用開始、20歳前障害による障害年金など、複数の制度変更が続く時期を表した言葉です。
準備する際は、まず次の点を確認しましょう。
- 高校卒業後、本人はどのような生活を希望しているか
- 日中はどこで、どのように過ごすか
- 生活介護や就労支援など、どのサービスが合っているか
- 障害支援区分の認定が必要か
- 相談支援専門員や自治体への相談を始めているか
- 20歳の障害年金に向けた資料を整理しているか
- 現在の支援方法を卒業後の事業所へ引き継げるか
制度の名称を知るだけでは、卒業後の生活は決まりません。
本人が望む暮らしを中心に、必要なサービス、手続き、支援者を一つずつつないでいくことが、切れ目のない支援につながります。
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18歳前後は、高校卒業後の進路、成人向け福祉サービス、20歳の障害年金など、準備する時期がそれぞれ異なります。
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