障がいのある子どもの卒業後について、
「一般就労を目指した方がよいのか」
「A型とB型は、何が違うのか」
「働くことが難しい場合は、どこへ通うのか」
「本人に合う進路を、どのように選べばよいのか」
と悩む保護者の方は少なくありません。
学校卒業後の進路には、一般企業への就職だけでなく、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、生活介護など、複数の選択肢があります。
大切なのは、進路先の名称だけで判断することではありません。
本人がどのような生活を望んでいるのか、どの程度の支援が必要なのか、どのような環境なら安心して通い続けられるのかを確認しながら選ぶことです。
この記事では、障がいのある子どもの学校卒業後に考えられる主な進路と、保護者が確認しておきたいポイントを解説します。
卒業後の進路は「就職するか、しないか」だけではない
学校卒業後の進路というと、一般企業へ就職できるかどうかだけで考えてしまうことがあります。
しかし、障がいのある方の進路は、それほど単純ではありません。
卒業後には、主に次のような選択肢があります。
- 一般企業への就職
- 障害者雇用による就職
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 生活介護
- 自立訓練
- 地域活動支援センター
- 進学や職業訓練
- 複数の支援を組み合わせた生活
本人の体調や障がい特性によっては、卒業後すぐに働くのではなく、生活リズムや対人関係を整える期間が必要な場合もあります。
最初に選んだ進路を、一生続けなければならないわけでもありません。
B型を利用しながら働くための準備を進め、将来A型や一般就労へ移ることもあります。
反対に、就職後に体調や生活状況が変化し、福祉サービスを利用することもあります。
進路は一度きりの決定ではなく、本人の成長や状況に応じて見直していくものです。
一般就労
一般就労は、企業などと雇用契約を結び、労働者として働く進路です。
一般の求人へ応募する場合と、障害者雇用枠を利用する場合があります。
一般就労の特徴
- 企業と雇用契約を結ぶ
- 労働基準法や最低賃金などが適用される
- 仕事内容や勤務時間は企業ごとに異なる
- 障害者雇用では、障がい特性に応じた配慮を相談できる場合がある
- 就労後に支援機関の定着支援を利用できる場合がある
一般就労を検討するときは、採用されるかどうかだけでなく、働き続けられる環境かを確認することが大切です。
例えば、
- 通勤を継続できるか
- 勤務時間は体力に合っているか
- 指示の出し方は分かりやすいか
- 困ったときに相談できる人がいるか
- 必要な配慮を会社へ伝えられるか
- 生活リズムを維持できるか
といった点を考えます。
本人が就職を希望していても、すぐに企業で働くことに不安がある場合は、就労移行支援などを利用して準備する方法もあります。
就労移行支援
就労移行支援は、一般就労を希望する障がいのある方に対して、就職に必要な訓練や求職活動、就職後の定着に向けた支援を行う障害福祉サービスです。
主な支援内容
- 生活リズムの安定
- 作業訓練
- ビジネスマナー
- パソコン技能
- 履歴書や応募書類の作成
- 面接練習
- 職場実習
- 求人探し
- ハローワークなどとの連携
- 就職後の職場定着支援
事業所によって、支援内容や得意分野は異なります。
事務職への就職に力を入れている事業所もあれば、軽作業、IT、接客、専門技能などに重点を置く事業所もあります。
就労移行支援を選ぶときは、就職者数だけでなく、本人が希望する仕事への支援があるか、就職後にどのような支援を受けられるかも確認しましょう。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、一般企業で働くことが現時点では難しい方が、事業所と雇用契約を結んで働く障害福祉サービスです。
A型の特徴
- 事業所と雇用契約を結ぶ
- 最低賃金が適用される
- 決められた勤務日や勤務時間がある
- 支援を受けながら働ける
- 利用にあたって選考が行われることがある
A型は、福祉サービスであると同時に雇用の場でもあります。
そのため、本人には、一定の時間働く力や、継続して通所する力が求められます。
一方で、事業所には、本人の障がい特性や体調に応じた支援を行う役割があります。
見学や面接では、
- 一日の勤務時間
- 週の勤務日数
- 仕事内容
- 給与や手当
- 休憩時間
- 欠勤や遅刻への対応
- 体調が悪いときの相談方法
- 一般就労への支援
- 職員の支援体制
を確認することが大切です。
「雇用契約があるから安心」と考えるだけでなく、本人が無理なく働き続けられるかを見極める必要があります。
就労継続支援B型
就労継続支援B型は、一般企業やA型で雇用契約を結んで働くことが難しい方に、作業や生産活動の機会と必要な支援を提供する障害福祉サービスです。
B型の特徴
- 事業所との雇用契約はない
- 作業収入に応じて工賃が支払われる
- 本人の体調や状態に応じた通所方法を相談しやすい
- 作業だけでなく、生活面や対人面の支援を受ける場合がある
- 将来のA型や一般就労を目指す事業所もある
B型事業所の内容は、事業所ごとに大きく異なります。
作業内容には、軽作業、清掃、農作業、製造、飲食、パソコン作業、デザイン、動画制作などがあります。
一方で、作業内容が似ていても、支援方針や雰囲気、通所日数、工賃、職員の関わり方は異なります。
B型を選ぶときは、
- 本人が興味を持てる作業があるか
- 体調に合わせた通所ができるか
- 苦手なことへの配慮があるか
- 個別支援計画に本人の希望が反映されるか
- 工賃の仕組みが説明されているか
- 将来の進路を一緒に考えてもらえるか
- 職員へ相談しやすいか
を確認しましょう。
工賃の高さだけで選ぶと、作業や支援が本人に合わず、通所が続かないこともあります。
生活介護
生活介護は、常に介護や日中の支援を必要とする障がいのある方に、日中活動の場を提供する障害福祉サービスです。
主な支援内容
- 食事や排せつなどの介護
- 健康管理
- 創作活動
- 生産活動
- 身体機能や生活能力の維持
- 余暇活動
- 家族からの相談
生活介護は、働くことを中心にしたサービスではありません。
本人の健康や安全を守りながら、日中をどのように過ごすか、生活の質をどのように高めるかを支援します。
事業所によって、医療的ケアへの対応、送迎、入浴、創作活動、生産活動などの内容が異なります。
見学時には、
- 看護職員の配置
- 医療的ケアへの対応
- 送迎範囲
- 食事や入浴の支援
- 一日の過ごし方
- 個別活動と集団活動の割合
- 緊急時の対応
- 家族との連絡方法
を確認しておくとよいでしょう。
自立訓練
自立訓練は、地域で生活するために必要な力を身につける障害福祉サービスです。
機能訓練と生活訓練があり、本人の障がいや必要な支援に応じて利用します。
生活訓練では、例えば次のような支援が行われます。
- 生活リズムを整える
- 金銭管理
- 食事や家事
- 服薬管理
- コミュニケーション
- 公共交通機関の利用
- 一人暮らしに向けた準備
- 就労や日中活動へ移るための準備
卒業後、すぐに就労系サービスへ進むことが本人の負担になる場合は、自立訓練を利用して生活の基盤を整える方法もあります。
進学や職業訓練
特別支援学校高等部などを卒業した後、大学、短期大学、専門学校、職業能力開発校などへ進む方もいます。
進学を検討するときは、入学できるかどうかだけでなく、学び続けるために必要な支援を確認します。
- 授業で必要な配慮
- 教材や試験方法の調整
- 校内の相談窓口
- 通学方法
- 生活面の支援
- 卒業後の就職支援
- 学費や奨学金
- 福祉サービスとの併用
学校によって支援体制は異なります。
オープンキャンパスや個別相談の際に、障がい学生への支援内容を具体的に確認することが大切です。
進路を考え始める時期
卒業後の進路は、卒業直前に考え始めると、選択肢が限られることがあります。
特に、福祉サービス事業所の利用を希望する場合は、見学、体験、実習、市区町村への申請、相談支援事業所との調整などが必要になります。
特別支援学校では、在学中から職場実習や事業所実習が行われることがあります。
実習は、進路先を決めるためだけのものではありません。
本人が、
- どのような作業を好むのか
- どの程度の時間なら活動できるのか
- どのような環境で疲れやすいのか
- どのような支援があれば力を発揮できるのか
- 本人が何を嫌だと感じるのか
を知る機会でもあります。
できるだけ早い段階から学校の進路担当者と相談し、複数の選択肢を見ておくことが大切です。
本人の希望を確認する
進路を考えるとき、保護者は将来の生活や収入、安全面を心配します。
その心配は当然です。
一方で、保護者がよいと思う進路と、本人が希望する進路が一致するとは限りません。
本人はA型で働きたいと思っているのに、家族はB型の方が安心だと考えている場合があります。
反対に、家族は一般就労を望んでいても、本人は生活介護やB型で落ち着いて過ごしたいと考えているかもしれません。
本人が言葉で希望を説明することが難しい場合でも、
- 表情
- 行動
- 通所後の疲れ方
- 好きな活動
- 苦手な環境
- 実習先へ行く前後の様子
- 支援者との関係
などから、本人の気持ちを確認できます。
本人の希望だけですべてを決めることも、保護者の判断だけですべてを決めることも難しいものです。
本人、家族、学校、相談支援専門員、事業所などで情報を共有し、本人にとって現実的で納得できる方法を探します。
見学だけでなく体験や実習をする
パンフレットやホームページだけでは、事業所の実際の雰囲気は分かりません。
できる限り、本人が見学や体験、実習へ参加することが大切です。
見学・実習で確認したいこと
- 職員は利用者へどのように声をかけているか
- 利用者は落ち着いて過ごしているか
- 本人が困ったときに相談できそうか
- 作業や活動に無理がないか
- 室内の音、明るさ、においは本人に合うか
- 休憩場所があるか
- 一日の予定が分かりやすいか
- 本人の希望を聞く姿勢があるか
- 送迎や昼食の内容
- 欠席時や体調不良時の対応
体験後には、本人へ「楽しかった?」とだけ聞くのではなく、
- 何が楽しかったか
- 困ったことはなかったか
- 職員の説明は分かりやすかったか
- また行きたいと思うか
- 疲れ方はどうだったか
を確認すると、本人の感じ方を把握しやすくなります。
相談支援専門員の役割
障害福祉サービスを利用する際には、相談支援専門員がサービス等利用計画の作成や関係機関との調整を行うことがあります。
相談支援専門員は、本人や家族の希望を確認し、利用できるサービスや事業所を一緒に整理する役割を担います。
進路を考える段階で相談することで、
- 地域にどのような事業所があるか
- サービスを利用するために何が必要か
- 申請をいつ始めるか
- 複数のサービスをどう組み合わせるか
- 卒業後の生活全体をどう支えるか
を整理できます。
ただし、相談支援専門員に任せれば、自動的に本人に最適な事業所が決まるわけではありません。
本人や家族が感じている不安、希望、生活上の課題を具体的に伝えることが大切です。
福祉サービスを利用するまでの流れ
障害福祉サービスを利用する際の一般的な流れは、次のとおりです。
- 学校や相談支援事業所へ相談する
- 利用したい事業所を探す
- 見学、体験、実習を行う
- 市区町村へサービス利用を申請する
- 必要な調査や聞き取りを受ける
- サービス等利用計画案を作成する
- 市区町村から支給決定を受ける
- 事業所と利用契約を結ぶ
- 卒業後に利用を開始する
サービスや自治体、本人の状況によって手続きは異なります。
利用したい事業所が決まっても、定員に空きがなければ、すぐに利用できないことがあります。
卒業後の利用開始時期から逆算し、学校や自治体へ早めに確認しましょう。
進路先を選ぶときに工賃や給与だけを見ない
A型の給与やB型の工賃は、進路を考えるうえで重要な情報です。
将来の生活を考えれば、収入を確認することは欠かせません。
しかし、収入だけで進路先を選ぶと、本人に合わない場合があります。
給与や工賃が高くても、
- 通所を続けられない
- 作業が本人に合わない
- 職員へ相談できない
- 疲れがたまり生活全体が崩れる
- 必要な支援を受けられない
のであれば、長く続けることは難しくなります。
反対に、最初は通所日数が少なくても、安心して通える場所から始め、徐々に活動を広げる方法もあります。
本人の生活全体を見ながら、収入、支援内容、通いやすさ、将来の選択肢を総合的に考えることが大切です。
保護者が確認しておきたい卒業後の生活
進路先が決まると安心し、それ以外の準備が後回しになることがあります。
しかし、卒業後は学校生活が終わり、生活全体が大きく変わります。
次のような点も確認しておきましょう。
- 朝起きる時間
- 通所や通勤の方法
- 帰宅後の過ごし方
- 昼食
- 服薬や通院
- 金銭管理
- 余暇活動
- 家族が支援できないときの対応
- 短期入所などの利用
- 将来の住まい
- 家族以外の相談先
日中活動の場だけでなく、生活全体を支える仕組みを作っておくことで、本人と家族の負担を軽減できます。
進路は後から見直してよい
進路を選ぶとき、
「ここで失敗したら、将来が決まってしまう」
と不安になることがあります。
しかし、本人の状況や希望は変化します。
卒業時にはB型が合っていても、数年後にA型や一般就労へ挑戦することがあります。
一般就労を始めた後、いったん福祉サービスを利用して生活を立て直す場合もあります。
今の本人に合う進路を選び、その後も定期的に見直す。
その考え方が大切です。
事業所の個別支援計画やモニタリングの場でも、本人の希望や今後の目標を確認します。
進路先が決まった後も、本人が現在の生活をどう感じているかを聞き続けましょう。
まとめ
障がいのある子どもの学校卒業後には、一般就労だけでなく、就労移行支援、A型、B型、生活介護、自立訓練、進学など、さまざまな選択肢があります。
進路を考える際に大切なのは、
- 本人がどのような生活を望んでいるか
- どのような支援が必要か
- 体調や障がい特性に合っているか
- 安心して通い続けられるか
- 将来の選択肢を広げられるか
- 卒業後の生活全体を支えられるか
という点です。
進路先の名称や、給与・工賃の金額だけで判断するのではなく、見学、体験、実習を通じて本人との相性を確認しましょう。
また、保護者だけで抱え込まず、学校の進路担当者、相談支援専門員、自治体、事業所などへ早めに相談することも重要です。
卒業時に選んだ進路が、本人の一生を固定するわけではありません。
今の本人に合う場所を選び、成長や生活の変化に応じて見直していく。
その積み重ねが、本人らしい卒業後の生活につながります。
