年度末の引継ぎで気づく、「伝わる記録」と「残すだけの記録」の違い

3月。福祉の現場でも、異動や退職に伴う「引継ぎ」が現実的なテーマとして立ち上がってくる時期です。

後任のスタッフのために、これまでの経緯をまとめ、記録をさかのぼる。その作業の中で、ふと気づくことはありませんか。

「あ、この時期の記録、何が起きたかはわかるけど、何を大切にしていたかが読み取れない」

数ヶ月前の自分の判断は、今の自分から見ると、少し距離のあるものに感じられます。今日は、引継ぎという「答え合わせ」の場面で見えてくる、記録の本質についてお話しします。

目次

「点」の記録と「線」の記録

引継ぎ資料を作るとき、私たちは改めて過去のケース記録を読み返します。そこで、二種類の記録に出会います。

ひとつは、**「残すだけの記録(点の記録)」**です。 「10時、散歩。12時、食事完食。14時、入浴」 事実は正確に書かれています。でも、それを読んだ後任のスタッフは、「で、結局どう関わればいいの?」と途方に暮れてしまうかもしれません。

もうひとつは、**「伝わる記録(線の記録)」**です。 「食事中、少し元気がなかったが、声をかけると笑顔が見られた(事実)。昨日からの疲れがあるのかもしれないと判断し、午後はゆっくり過ごしてもらった」 そこには、支援者の「着眼点」と「配慮」が残されています。これこそが、新しい担当者が本当に欲しがっている、支援のバトンです。

引継ぎを「苦行」にしないために

引継ぎ作業がこれほどまでに大変なのは、日々の記録が「残すための作業」になってしまっているからかもしれません。

もし日々の記録が、もし日々の記録が、先日お伝えした「『事実』と『解釈』の境界線──支援記録で迷いやすい、たった一つの分岐点」で触れた「ビデオに映る事実」と「自分の着眼点」に分かれて書かれていたら。引継ぎの際、あなたは膨大な記録の山から「大事なこと」を掘り起こす必要はなくなります。記録そのものが、すでに半分、引継ぎ資料になっているからです。

最高の引継ぎは「記録」の中に既にある

引継ぎは、単に情報を渡す作業ではありません。あなたがこれまで大切に積み上げてきた「利用者さんとの関係性」という宝物を、次の誰かに託す儀式のようなものです。

「これを読めば、私の代わりにこの人を守ってくれる」 そう思える記録が一行でもあれば、それは、とても誠実な引継ぎだと思います。

最後に

今、必死に過去の記録をさかのぼっているあなたへ。 もし「もっとこう書いておけばよかった」と思うことがあれば、それは後悔ではなく、あなたの「支援の質」が一段上がった証拠です。

その気づきを、今日書く「新しい記録」に込めてみませんか。 それが、未来の自分や仲間への、一番の贈り物になります。

今の支援記録が、次の担当者にも支援の意図まで伝わる記録になっているか確認してみませんか

記録に事実が残っていても、支援の意図や利用者様の変化が読み取れなければ、引継ぎやその後の支援に活かしにくくなることがあります。

支援記録・個別支援計画 整合性レビューでは、支援記録・個別支援計画・モニタリングを確認し、今できている部分と、より支援につながる形に整理した方がよい部分を一緒に確認します。

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この記事を書いた人

大阪市を拠点に、障がい福祉事業所の記録・個別支援計画、運営書類、法定研修、制度対応などの整理と運用を支援する行政書士です。
自身の福祉サービス利用経験と福祉現場での経験を踏まえ、制度の内容を解説するだけでなく、事業所、ご本人、ご家族が「次に何を確認し、どう動けばよいか」を分かりやすく整理することを大切にしています。
本ブログでは、障がい福祉の制度改定、事業所運営、支援記録、個別支援計画、親なきあとに関する制度・法務などについて、現場で役立つ視点から発信しています。

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