就労選択支援事業所の開設資金と収益モデル|損益分岐点までのシミュレーション

就労選択支援事業所の開設を検討する上で、最も気になるのが「本当に採算が取れるのか?」という点ではないでしょうか。

初期費用はいくら必要?月々の運営費はどれくらい?何人利用者がいれば黒字になる?

この記事では、就労選択支援事業所の開設資金と収益モデルを、具体的な数字を使って徹底解説します。

就労選択支援事業所の開設要件や指定申請の流れについては
「就労選択支援事業所の開設完全ガイド」で解説しています。

就労選択支援制度の全体像については
「就労選択支援とは?」の記事で解説しています。

目次

開設に必要な初期費用

就労選択支援事業所の開設には、400万〜1,200万円の初期費用が必要です。

初期費用の内訳

項目金額目安備考
物件取得費用50万〜150万円敷金・礼金・前家賃・仲介手数料
内装工事・設備導入費100万〜500万円相談室の設置、バリアフリー化など
備品購入費50万〜150万円デスク、PC、ソフトウェア、訓練器具など
人件費(開設前)50万〜200万円管理者・支援員の給与(1〜2ヶ月分)
申請手数料3万〜5万円指定申請手数料
行政書士報酬20万〜80万円依頼する場合
広告宣伝費20万〜50万円パンフレット、ウェブサイト制作など
運転資金100万〜300万円3ヶ月分の運営費
合計400万〜1,200万円

💡 サービス管理責任者が不要なメリット

就労選択支援では、サービス管理責任者(サビ管)の配置が不要です。

サビ管を雇用すると、月額30万〜50万円の人件費が必要ですが、就労選択支援ではその負担がありません。

人件費を年間360万〜600万円削減できるため、他の就労系サービスと比べて開設しやすくなっています。

費用を抑えるポイント

  • 居抜き物件を活用:内装工事費を大幅削減
  • 中古品・リース活用:備品購入費を抑える
  • 補助金・助成金の活用:自治体の開設支援制度を確認
  • 兼務による人件費削減:管理者と支援員を兼務(可能な場合)

月々の運営費用

開設後、毎月必要な運営費用を見ていきましょう。

運営費用の内訳(利用定員10名の場合)

項目金額目安備考
人件費60万〜120万円管理者1名、支援員1名の場合
家賃10万〜30万円地域により大きく変動
水道光熱費2万〜5万円
通信費1万〜3万円インターネット、電話など
消耗品費2万〜5万円事務用品、訓練教材など
保険料1万〜3万円損害賠償保険など
その他経費5万〜10万円研修費、交通費、会議費など
合計約80万〜170万円

人件費の詳細

運営費用の中で最も大きな割合を占めるのが人件費です。

管理者の給与相場

  • 月給:25万〜35万円
  • 年収:300万〜420万円
  • 社会保険料込み:月35万〜50万円

就労選択支援員の給与相場

  • 月給:22万〜30万円
  • 年収:264万〜360万円
  • 社会保険料込み:月30万〜42万円

最小構成(管理者1名+支援員1名):月65万〜92万円

収益モデルと報酬単価

就労選択支援の報酬は、利用者1人1日あたりの単価で計算されます。

基本報酬(2025年度)

就労選択支援サービス費:1日あたり1,210単位(大阪の場合/1単位=10.91円)

主な加算

  • 福祉専門職員配置加算:社会福祉士等の有資格者を配置
  • 処遇改善加算:職員の処遇改善に取り組む場合
  • その他各種加算:サービス提供体制により

収益シミュレーション(利用定員10名の場合)

前提条件:

  • 平均利用者数:8名/日
  • 営業日数:20日/月
  • 1人1日あたり基本報酬:1,210単位(約12,100円)
  • 加算等を含めた実質単価:約13,000円

月額収入の計算

基本報酬のみ:
8名 × 20日 × 12,100円 = 1,936,000円

加算込み(実質単価13,000円の場合):
8名 × 20日 × 13,000円 = 2,080,000円

月額収入:約200万円

損益分岐点の分析

「何人利用者がいれば黒字になるのか?」を具体的に計算してみましょう。

ケース①:最小構成(管理者1名+支援員1名)

項目金額
月額固定費約100万円
損益分岐点(利用者数)1日平均4名
計算式100万円 ÷ (13,000円 × 20日) = 約3.8名 → 4名

結論:利用定員10名の事業所で、毎日4名が利用すれば損益分岐点に到達します。

ケース②:標準構成(管理者1名+支援員2名)

項目金額
月額固定費約140万円
損益分岐点(利用者数)1日平均6名
計算式140万円 ÷ (13,000円 × 20日) = 約5.4名 → 6名

結論:利用定員10名の事業所で、毎日6名が利用すれば損益分岐点に到達します。

就労選択支援の特性に注意!

就労選択支援は、利用期間が原則1ヶ月と短期です。

そのため、常に新規利用者を確保し続ける必要があります。

安定経営のためには:

  • 相談支援事業所との強固な連携
  • 特別支援学校への継続的な営業
  • ハローワークとの協力関係

これらが不可欠です。

リアルな収支シミュレーション

開設1年目の収支を、月ごとにシミュレーションしてみましょう。

開設1年目の収支予測(利用定員10名)

平均利用者数月額収入月額支出損益累計損益
開設前0名0円100万円▲100万円▲100万円
1ヶ月目3名78万円100万円▲22万円▲122万円
2ヶ月目5名130万円100万円+30万円▲92万円
3ヶ月目7名182万円100万円+82万円▲10万円
4ヶ月目8名208万円100万円+108万円+98万円
5ヶ月目9名234万円100万円+134万円+232万円
6ヶ月目10名260万円100万円+160万円+392万円
7〜12ヶ月10名260万円100万円+160万円×6+1,352万円

結論:利用定員10名で、開設4ヶ月目から黒字化が可能です。1年目で約1,300万円の利益が見込めます。

✅ 就労選択支援は採算性が高い

報酬単価が1日12,100円と高額なため、就労選択支援は他の就労系サービスと比べて採算性が高いサービスです。

他サービスとの比較:※加算は一切算定していない場合になります。

  • 就労継続支援B型:1日約5,000円〜7,000円/人
  • 就労移行支援:1日約10,000円前後/人
  • 就労選択支援:1日約12,100円/人

ただし、利用期間が短期(原則1ヶ月)のため、常に新規利用者を確保し続ける必要があります。

安定経営のための戦略

就労選択支援事業所を安定的に経営するための、3つの戦略をご紹介します。

戦略1

他の障害福祉サービスを併設する

就労選択支援単独では採算が取りにくいため、他サービスとの併設がおすすめです。

併設におすすめのサービス:

  • 就労移行支援:就労選択支援から自然な流れで移行
  • 就労継続支援B型:利用期間が長く、安定収入が見込める
  • 相談支援事業:利用者紹介のルートを確保

複数サービスを展開することで、収益の安定化と利用者の囲い込みが可能になります。

戦略2

開設前から利用者確保の営業を開始

開設してから利用者募集では遅すぎます。開設3ヶ月前から営業を始めましょう。

営業先リスト:

  • 相談支援事業所(最重要)
  • 特別支援学校
  • ハローワーク(障害者窓口)
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 医療機関(精神科等)

開設初月から利用者5名以上を確保することを目標にしましょう。

戦略3

加算を最大限取得する

基本報酬だけでは収益が少ないため、加算の取得が重要です。

取得すべき加算:

  • 福祉・介護職員等処遇改善加算:職員の処遇改善計画を作成

まとめ:開設資金と収益モデルのポイント

💰 開設資金

  • 初期費用:400万〜1,200万円
  • 月額運営費:80万〜170万円
  • サビ管不要で人件費を削減できるのがメリット

📊 損益分岐点

  • 利用定員10名(管理者1名+支援員1名):1日平均4名で損益分岐
  • 利用定員10名(管理者1名+支援員2名):1日平均6名で損益分岐
  • 報酬単価が高額(1日12,100円)なため、採算性が高い
  • 短期利用のため、常に新規利用者の確保が必要

🎯 安定経営の3つの戦略

  1. 他の障害福祉サービスを併設
  2. 開設前から利用者確保の営業を開始
  3. 加算を最大限取得

就労選択支援事業所は、報酬単価が高額(1日12,100円)なため、採算性が高いサービスです。

利用定員10名で、1日平均4〜6名の利用者がいれば損益分岐点に到達し、それ以上の利用者がいれば十分な利益が見込めます。

ただし、利用期間が短期(原則1ヶ月)のため、常に新規利用者を確保し続けることが安定経営のカギとなります。

開設をご検討中の方へ

「収支計画が心配…」「本当に黒字化できるか不安…」という方は、まず無料相談をご利用ください。

あなたの地域の市場環境や、現実的な収支計画について、一緒に検討しましょう。

✅ 当事務所のサポート内容:

  • 現実的な収支計画の作成サポート
  • 加算取得のアドバイス
  • 利用者確保の営業戦略の提案
  • 他サービス併設の検討サポート

事業所運営や加算・開業について、
「これで合っているのか不安…」という段階でも大丈夫です。

状況を整理しながら一緒に考えますので、
必要なタイミングでLINEからご相談ください。

※営業連絡は行いません

📝 この記事を書いた人
行政書士 田中慶

私自身、障がい者福祉サービス(就労移行事業所・A型事業所)を利用していた経験があります。

「制度はわかったけど、うちの場合はどうすればいいの?」
「現場の実際を知りたい」

そんな“制度と現実の間”で迷っている方の相談相手として、利用者側と支援者側、両方の視点を持つピア行政書士として、一緒に最適な道を探します。

📌 【2025年最新】就労選択支援事業所の開設完全ガイド|必要な手続きと準備 開設の全体像とスケジュールを解説しています。(11/1公開)

📌 【大阪市】就労選択支援事業所の指定申請で絶対に失敗しない方法|補正遅延で220万円損する前に 必要書類と事前協議での落とし穴を解説しています。(11/8公開)


この記事が、あなたの開設判断の一助となれば幸いです。

就労選択支援事業所の経営は簡単ではありませんが、適切な戦略で安定経営は可能です。

不安なことがあれば、いつでもご相談ください。一緒に、持続可能な事業所を作り上げましょう。

目次