はじめに
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」に基づく新たな障害福祉サービス「就労選択支援事業所」が、令和7年(2025年)10月1日からスタートします。同法令和7年10月1日施行の第五条13項には、「この法律において「就労選択支援」とは、就労を希望する障害者又は就労の継続を希望する障害者であって、就労移行支援若しくは就労継続支援を受けること又は通常の事業所に雇用されることについて、当該者による適切な選択のための支援を必要とするものとして主務省令で定める者につき、短期間の生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に関する適性、知識及び能力の評価並びに就労に関する意向及び就労するために必要な配慮その他の主務省令で定める事項の整理を行い、又はこれに併せて、当該評価及び当該整理の結果に基づき、適切な支援の提供のために必要な障害福祉サービス事業を行う者等との連絡調整その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。」と記載されています。一読して、「あ~、そういうことね。」ってなる方は、ほとんどいないですよね。
今回は、利用できる人・開設できる人(法人)・支援できる人についての条件を分かりやすくお話ししていきます。
就労選択支援事業所とは?令和7年10月から始まる新制度を解説
対象となる利用者
- 新たに就労継続支援A型またはB型の利用を希望する者
- 既に就労移行支援または就労継続支援を利用しており、支給決定の更新等を希望する者
- 特別支援学校在学者
もう少し、細かな規定はありますが、平たく言えば、上記の3つのいずれかに該当される障がい者になります。
既存の障害福祉サービスとの違いとは?
既存の就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)はサービスごとに分かれており、利用者が自ら選択・移行する負担が大きかったのに対し、本制度では一体的な支援でスムーズな移行を実現し、支援の継続性と本人の選択の自由が大きく向上することが期待されています。
就労選択支援事業所の開設要件
就労選択支援を提供する事業者は、以下の要件を満たす必要があります。
- 就労移行支援または就労継続支援(A型・B型)を提供している事業者であること
- 過去3年以内に3人以上の利用者が一般就労に移行した実績があること、またはこれと同等の就労支援の経験・実績を有すると都道府県知事が認めること
上記のように、既存の事業所で、すでにある程度の実績が認められる事業所が、就労選択支援事業所の開設が可能となるようです。
人員配置の基準と必要な資格~就労選択支援に求められる職種とは~
配置が必要な職種とその人数基準
- 管理者:事業所には管理者の配置が必要です。
- サービス管理責任者:就労選択支援は短時間のサービスであることから、サービス管理責任者の配置は求められません。
- 就労選択支援員:利用者15人に対して1人以上(常勤換算)の配置が必要
サービス管理責任者(サ責)が不要であるところが、就労移行・就労継続支援との違いになりますね。
「就労選択支援員」になるには?
今までの、「職業指導員」「生活支援員」と違い、人員配置基準に「就労選択支援員」が必須となりました。そこで、「就労選択支援員」の要件をまとめました。
- 「就労選択支援員養成研修」の修了者であること
では、その「就労選択支援員養成研修」受講には、要件があるのでしょうか?
障害者の就労支援に関する基礎的研修(※1)の修了や通算5年以上の就労支援分野での勤務実績(※2)が必要となっています。
つまりは、
① 障害者の就労支援に関する経験・研修
├─ 基礎的研修の修了者
└─ または 通算5年以上の就労支援分野での勤務実績あり
↓
② 「就労選択支援員養成研修」を受講・修了
↓
③ 「就労選択支援員」として配置可能
↓
④ 就労選択支援事業所にて支援を実施
という、段階を踏む必要があると言う事になります。
ただし、令和9年度末までは、以下の通りの経過措置が取られます。
- 就労選択支援員とみなす
- 基礎的研修を修了した者
- 基礎的研修に相当する研修を修了した者
- 就業支援基礎研修(就労支援員対応型)
- 訪問型職場適応援助者養成研修
- サービス管理責任者研修専門コース別研修(就労支援コース)
- 相談支援従事者研修専門コース別研修(就労支援コース)
- 就労選択支援員養成研修を受講可能
- 基礎的研修と同等以上の研修の修了者
※1:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構等が行う「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修」
※2:
- 就労移行支援事業所、就労継続支援事業所及び就労定着支援事業所における管理者、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員、就労支援員及び就労定着支援員
- 障害者職業センターにおける職業カウンセラー、職場適応援助者(企業在籍型を除く。)
- 障害者就業・生活支援センターにおける生活支援担当者、就業支援担当者
- 障害者職業能力開発助成金による能力開発訓練事業を行う機関における就職支援責任者、訓練担当者
- 令和9年度末までに基礎的研修又は基礎的研修と同等以上の研修を修了していることを以て就労選択支援員として勤務した実績
まとめ
就労選択支援員養成については、現時点(令和7年5月19日時点)では、令和7年6月ごろから、定員80人規模の研修を、年10回程度実施予定となっています。
「就労選択支援」については、これから五月雨式に情報が出てくると思います。ただ、令和7年10月1日以降にB型事業所を利用する場合は、基本的に就労選択支援を利用する必要があることは決定していますし、今後順次、A型事業所や就労移行事業所の利用に際しても、就労選択支援の利用が必須となるようです。
私見ですが、障がい者就労に関しては、今後「就労選択支援」を“ハブ”事業として、展開されていくのではないかと感じています。就労選択支援の開業を考えている方もそれ以外の就労系事業所を考えている方、すでに運営されている方も、「就労選択支援」についてのアンテナは敏感にしておく必要があると思います。また、定期的に、このブログでもお話ししていければと思います。また、私のホームページでも紹介する予定ですので、その時は、ご確認ください。
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