大阪市で就労選択支援事業所を開設するには?指定要件と事前協議の注意点

大阪市で就労選択支援事業所を開設する場合、一般的な障害福祉サービスと同じ感覚で、物件、人員、法人を準備するだけでは指定申請へ進めません。

就労選択支援には、就労支援事業者としての経験や一般就労実績に関する要件があります。

さらに大阪市では、正式な指定申請の前に事前協議を行い、「就労選択支援に係る有識者会議」による審査を受ける必要があります。

そのため、開設を検討するときに最初に確認すべきことは、物件の広さや職員の人数ではありません。

まずは、

  • 自法人が就労選択支援の実施主体になれるか
  • 一般就労実績の要件を満たしているか
  • 大阪市が求める事業計画を説明できるか

を確認する必要があります。

この記事では、大阪市で就労選択支援事業所の開設を検討している法人向けに、指定申請へ進む前に確認したい実務上のポイントを解説します。

※就労選択支援の制度全体や対象者については、別記事「就労選択支援とは?制度の仕組み・対象者・開設要件・人員配置をわかりやすく解説」で整理しています。

目次

最初に確認すべき「実施主体」の要件

就労選択支援は、法人格があれば誰でも参入できる障害福祉サービスではありません。

指定基準では、就労選択支援の実施主体について、原則として次の要件が定められています。

  • 就労移行支援または就労継続支援の指定事業者である
  • 過去3年以内に、その事業者の事業所から3人以上の利用者が新たに一般企業などへ雇用されている
  • または、これらと同等の就労支援の経験と実績があると指定権者から認められる

つまり、株式会社や一般社団法人を新たに設立し、初めての障害福祉事業として就労選択支援だけを開始する場合、原則的な要件を満たせない可能性があります。

物件を探したり、就労選択支援員を採用したりする前に、まず自法人が実施主体の要件に該当するかを確認する必要があります。

大阪市では就職者数を事業所ごとに確認する

複数の就労移行支援事業所やA型・B型事業所を運営している法人では、法人全体の就職者数を合計すればよいと考えやすいかもしれません。

しかし、大阪市は、複数の事業所を運営している場合について、少なくとも一つの事業所から、指定申請日の前月末を基準とした過去3年以内に3人以上の利用者が新たに一般企業などへ雇用されている必要があると説明しています。

就労期間の長さや、正社員・パートタイマーなどの就労形態は問われません。

一方で、複数事業所の就職者を一人ずつ合算して3人にする考え方ではありません。

開設を検討する段階では、次の資料を事業所ごとに整理しておく必要があります。

  • 一般就労した利用者の人数
  • 就職した時期
  • 就職先が通常の事業所に該当すること
  • どの事業所の利用者であったか
  • 就職実績を証明できる資料

就職者が3人に達しているかだけでなく、その実績を客観的に説明できるかまで確認しておきましょう。

「同等の経験と実績」があれば必ず指定されるわけではない

基準上は、過去3年以内に3人以上の一般就労実績がなくても、これと同等の障がい者に対する就労支援の経験と実績があると大阪市から認められれば、実施主体になれる余地があります。

ただし、「就労支援に関係する仕事をしていた」「代表者に福祉経験がある」というだけで、当然に認められるものではありません。

どのような支援を行い、どのような成果があり、就労選択支援を適切に実施できる根拠があるのかを、資料によって説明する必要があります。

実績要件を満たすか判断が難しい場合は、物件契約や採用を進める前に大阪市へ確認することが重要です。

大阪市では有識者会議による審査がある

大阪市では、就労選択支援の指定に当たり、「就労選択支援に係る有識者会議」が開催されます。

就労選択支援は、本人が就労先や働き方についてよりよい選択をできるよう支援する制度です。

そのため大阪市は、事業者が中立性を確保し、客観的な視点から支援を実施できるか、地域との連携体制が構築されているかなどを、有識者の意見を聴いたうえで確認します。

一般的な障害福祉サービスの指定申請では、人員・設備・運営基準を満たしていることが中心になります。

就労選択支援では、それに加えて、

  • なぜ就労選択支援を実施するのか
  • どのようなアセスメントを行うのか
  • 本人へどのような選択肢を提示するのか
  • 自法人のサービスへ誘導しない仕組みがあるか
  • 地域の関係機関とどのように連携するのか
  • アセスメント結果をどのように共有するのか

といった事業内容そのものが審査対象になります。

事業計画では「中立性」を具体的に説明する

既に就労継続支援B型や就労移行支援を運営している法人が、就労選択支援へ参入する場合、特に注意したいのが中立性です。

自法人がB型事業所を運営しているからといって、アセスメント後の進路を自法人のB型利用に結び付けることを前提にはできません。

利用者の希望、適性、能力、必要な配慮などを踏まえ、一般就労、就労移行支援、A型、B型、その他の選択肢を比較できる支援体制が求められます。

事業計画では、単に「中立的に支援します」と記載するだけではなく、たとえば次のような点を具体化する必要があります。

  • 他法人の就労系事業所に関する情報収集方法
  • 利用者へ比較情報を提供する方法
  • ケース会議へ参加を求める関係機関
  • 利益相反が生じる場合の対応
  • 自法人のサービスを案内する場合の判断基準
  • アセスメント結果を客観的に確認する仕組み

大阪市は、事業計画の記載が少なく、法令や審査基準との適合性を確認できない場合には、指定しないことがあると明示しています。

大阪市の事前協議で提出する主な資料

大阪市では、就労選択支援の事前協議を行政オンラインシステムで受け付けています。

事前協議では、主に次のような書類を提出します。

  • 事前協議書
  • 就労選択支援事業所の指定に係る記載事項
  • 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
  • 組織体制図
  • 管理者などの経歴書
  • 事業所の平面図
  • 採光・換気に関する書類
  • 就労選択支援に係る事業・開設計画

事前協議の段階から、人員、物件、組織体制、支援方針を具体的に示す必要があります。

「まず事前協議を出して、不足書類は後でそろえる」という進め方はできません。

大阪市は、事前協議や指定申請の際に必要書類がすべてそろっていなければ、受付できないと案内しています。

人員配置は就労選択支援員が中心になる

就労選択支援事業所には、管理者と就労選択支援員を配置します。

就労選択支援員は、常勤換算で利用者数を15で除した数以上必要です。

新規指定の場合は、前年度の平均利用者数がないため、予定する利用者数などによる推定数を使って配置人数を計算します。

就労選択支援員は原則として専従ですが、利用者への支援に支障がない場合には、他の職務を兼ねられる場合があります。

就労選択支援では、サービス管理責任者の配置は指定基準上必須とされていません。

ただし、サービス管理責任者が不要であることと、支援体制を簡単に組めることは別の問題です。

アセスメント、ケース会議、関係機関との連絡調整、結果の作成・共有などを実施できる勤務体制を整える必要があります。

※就労選択支援員の実務経験、養成研修、経過措置については、別記事「就労選択支援員になるには?経験・研修・資格ルートをタイプ別に解説」で詳しく整理しています。

2028年3月31日までの経過措置にも注意する

就労選択支援員は、原則として就労選択支援員養成研修の修了者である必要があります。

ただし、2028年3月31日までの間は、基礎的研修または基礎的研修と同等以上の研修の修了者を、就労選択支援員とみなす経過措置があります。

この経過措置は、将来にわたって研修受講が不要になる制度ではありません。

経過措置期間中に指定を受ける場合でも、今後の研修受講予定や職員育成計画まで考えておく必要があります。

また、2026年度の養成研修は申込回ごとに受付期間や会場が設定されており、申込みをすれば必ず希望回を受講できるとは限りません。

開設予定日から逆算し、早めに研修修了状況を確認しましょう。

既存事業所と併設する場合の設備共用

就労選択支援事業所には、訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室などの設備が必要です。

既存の就労移行支援事業所やA型・B型事業所と同じ建物で運営する場合でも、設備を当然に共用できるわけではありません。

大阪市は、それぞれのサービスの支援に支障がない広さを確保し、各サービスの利用者が混在しないよう区画を分ける必要があるとの考え方を示しています。

設備の共用が認められるかは、平面図、利用時間、支援内容、動線などを踏まえて総合的に審査されます。

既存事業所内の空いている部屋を使う予定であっても、指定基準を満たすとは限りません。

物件契約や内装工事の前に、平面図を作成して確認することが重要です。

大阪市の指定スケジュールから逆算する

大阪市では、有識者会議が年4回の区分で開催され、各回で原則として3か月分の指定予定案件が審査されます。

2026年7月29日時点では、2027年1月から3月までの指定に向けた事前協議の提出期限は、2026年10月15日です。

  • 事前協議の提出期限:2026年10月15日
  • 有識者会議:2026年10月30日
  • 審査結果のお知らせ:2026年11月中旬
  • 補正書類の提出:2026年11月下旬

その後、指定月に応じて指定申請書の提出・面談期限が設定されます。

  • 2027年1月1日指定:2026年12月10日
  • 2027年2月1日指定:2027年1月10日
  • 2027年3月1日指定:2027年2月10日

事前協議期限を逃すと、希望する開設日を数か月ずらさなければならない可能性があります。

なお、これ以降の事前協議日程や最新の提出期限は、大阪市公式サイトの「就労選択支援ついて」をご確認ください。

※日程、提出方法、必要書類は変更される場合があります。実際に申請する際は、必ず大阪市の最新案内をご確認ください。

物件契約前に確認したいこと

就労選択支援の開設準備では、先に物件を契約することはおすすめできません。

少なくとも、契約前に次の点を確認する必要があります。

  • 実施主体の要件を満たしているか
  • 一般就労実績を証明できるか
  • 必要な就労選択支援員を配置できるか
  • 事前協議期限までに事業計画を作成できるか
  • 訓練・作業室などの設備を確保できるか
  • 既存事業所との区画・動線を分けられるか
  • 建築基準法や消防法上の問題がないか
  • 有識者会議で説明できる地域連携体制があるか

実施主体の要件を満たしていない状態で物件を契約すると、指定申請へ進めないまま、家賃だけが発生する可能性があります。

また、物件や人員が基準を満たしていても、事業計画の内容から中立性や地域連携を確認できなければ、指定に至らない可能性があります。

開設準備はどの順番で進めるべきか

大阪市で就労選択支援事業所を開設する場合は、次の順番で整理すると手戻りを減らしやすくなります。

1.実施主体の要件を確認する

既存の指定事業、一般就労実績、就労支援の経験を整理します。

2.開設希望日と事前協議期限を確認する

希望する指定月に対応する有識者会議と事前協議期限を確認します。

3.就労選択支援員の候補者を確認する

実務経験、研修修了証、経過措置の対象になるかを確認します。

4.支援内容と地域連携体制を設計する

アセスメント方法、ケース会議、情報提供、中立性の確保方法を整理します。

5.物件候補を選定する

平面図、区画、動線、設備、建築・消防関係を確認します。

6.事業・開設計画を作成する

有識者会議で事業の必要性と具体的な運営方法を説明できる内容にします。

7.事前協議書類を提出する

必要書類がすべてそろった状態で、大阪市行政オンラインシステムから提出します。

まとめ

大阪市で就労選択支援事業所を開設する場合、最初に確認すべきなのは物件や法人形態ではありません。

まず確認すべきなのは、

  • 実施主体の要件を満たしているか
  • 過去3年以内の一般就労実績を証明できるか
  • 就労選択支援員を配置できるか
  • 中立性のある事業計画を作成できるか
  • 地域の関係機関との連携体制があるか
  • 大阪市の事前協議期限に間に合うか

という点です。

特に大阪市では、事前協議と有識者会議があるため、人員・設備基準を満たすだけでは指定申請を進められません。

法人の実績、支援方針、人員、物件、申請スケジュールを順番に整理し、物件契約や採用を行う前に、開設可能性を確認することが大切です。


就労選択支援の開設準備を始める前に

行政書士田中慶事務所では、大阪市で就労選択支援事業所の開設を検討している事業者様を対象に、指定申請へ進む前の状況整理を行っています。

  • 実施主体の要件を満たしているか
  • 一般就労実績をどの資料で説明するか
  • 就労選択支援員を配置できるか
  • 物件候補が設備基準に合うか
  • 有識者会議に向けて何を整理すべきか
  • どの指定月を目標にすべきか

といった点を、現在の準備状況に合わせて整理します。

物件契約や採用を進める前の段階でもご相談いただけます。

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開設は、物件・人員・制度を順番に整理することで、進め方が見えやすくなります。

物件・人員・制度の順序を整理しておくことで、途中の手戻りを減らしやすくなります。

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