同性介助の「原則」と「現実」──正しさだけでは、現場は回らないことがある

「同性介助は、利用者の尊厳を守るための基本です」

研修や運営指導(実地指導)の場で、必ずと言っていいほど投げかけられる言葉です。 もちろん、それに異論を唱える人はいないでしょう。異性に排泄や入浴の介助をされる心理的負担を考えれば、同性介助を徹底すべきなのは「正論」であり「理想」です。

しかし、その言葉が文脈を離れて受け取られたとき、結果として現場のスタッフや管理者を追い詰めてしまうことがある現実も、否定はできません。

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「正しい」と言えない現場の苦悩

特に重度の障がい者支援や、夜勤帯の少ない人員配置の中では、計算通りに同性介助が成立しない場面がどうしても出てきます。

  • 急な欠勤で、男性スタッフしかいない時間帯に女性の介助が必要になった
  • 女性スタッフの比率が低く、特定の職員にばかり身体的負担が集中している

「原則を守れないのは、努力が足りないからだ」 そんな無言のプレッシャーを感じ、現場は声を潜めて対応する。この「正しさを守りきれない罪悪感」が、現場を静かに疲弊させていくのです。

なお、制度上も運営指導上も、同性介助はあくまで「原則」であり、これを軽視してよいという話ではありません。やむを得ず例外的な対応を取る場合には、その理由と、尊厳を守るために講じた代替的な配慮を、組織として説明できる状態であることが大前提となります。

尊厳を守るのは「性別」だけか

もちろん、安易な妥協を推奨するわけではありません。 しかし、同性介助という「形式」を優先しすぎるあまり、現場が殺気立ち、利用者さんへの声掛けが冷たくなってしまったり、余裕のない無理な介助が行われたりしては、本末転倒ではないでしょうか。

尊厳を守るために本当に必要なのは、性別の合致だけではありません。

  • 「異性で申し訳ないけれど、丁寧にやらせてもらいますね」という真摯なコミュニケーション
  • 露出を最小限に抑えるなどの、技術的な配慮
  • 「今はできないが、次はどう改善するか」を組織として記録し、話し合える柔軟性

こうした「現場の工夫」こそが、不完全な現実の中で尊厳を繋ぎ止める最後の砦になります。

経営者・管理者の役割

管理者がすべきことは、「同性介助を100%徹底しろ」と号令をかけることだけではありません。

「今の配置では、どうしても同性介助が難しい場面がある」という現実を認め、その上で、現場が一人でその責任を背負わなくて済むような「説明責任の肩代わり」や「心のケア」を用意することです。

「正論」は大切です。でも、「正論」だけで現場は回りません。 不完全な現実を認め、その中で「今できる最善」を尽くしているスタッフを、まずは肯定することから始めてほしいのです。

最後に

今年度のシフト編成に頭を悩ませている管理者の方も多いでしょう。 理想通りにいかないパズルを前に、自分を責めないでください。

「正しさ」の重圧に押しつぶされる前に。 不完全な現場をどう支え、どう少しずつ良くしていくか。その「泥臭い歩み」にこそ、福祉の本質があると私は信じています。

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