就労選択支援と既存サービスの線引き──開始半年後に現場が戸惑う”境界”の話

2025年10月に「就労選択支援」がスタートしてから、半年が経とうとしています。 2026年度(令和8年度)の新年度準備が佳境を迎える今、現場では改めてこんな声が聞こえてくるようになりました。

「半年運用してみたけれど、結局、今までの就労移行支援と何が違うのか」 「自分たちの支援の価値が、アセスメントという仕組みに飲み込まれていないか」

制度はすでに動き出していますが、4月からの新体制を組むにあたり、既存のサービス(就労移行やB型)との「境界線」をどう捉え直すべきか。その戸惑いは、今まさに現場で再燃しているようです。

今日は、この「境界線」にまつわる現場の心理と、改めて見つめ直したい支援のあり方について整理してみたいと思います。

目次

「選ぶ」ことを切り出したことへの違和感

これまでの就労支援において、「本人に合った働き方を選ぶ」プロセスは、日々の支援の中に溶け込んでいたはずです。それを独立した「サービス」として切り出し、運用し始めて半年。

「私たちはこれまでも十分、本人の意向を汲んできた」 「数値化や客観性だけで、その人の可能性を測りきれるのか」

現場が感じるこの違和感は、これまでの伴走支援に対する強い「自負」があるからこそ生まれるものです。

境界線は「役割」の使い分けにある

既存のサービスが「その場での成長」や「社会への橋渡し」を担うものだとすれば、就労選択支援は「選択肢を可視化する」ためのものです。

  • 既存サービス: 信頼関係に基づいた、主観的・伴走的な支援(育む・繋げる視点)
  • 就労選択支援: 本人の強みや課題を整理し、適切な選択肢を提示するための、客観的・多角的なアセスメント(選ぶための整理・評価)

これらは対立するものではなく、日々の伴走で積み上げた「主観」を、就労選択支援という「客観のレンズ」で再確認するプロセスです。 「境界」は、役割を奪い合う線ではなく、お互いの視点を補完し合うための接点なのです。

4月からの支援を、再定義する

運用開始から半年。4月の新年度は、この新しい仕組みを「やらされるもの」から「使いこなすもの」へ変える絶好のタイミングです。

どんなに精緻なアセスメントツールが登場しても、本人の「働きたい」という火を絶やさないための日々の関わりや、社会へと繋いでいく粘り強い支援は、既存の現場にしかできません。

就労選択支援という新しい「境界」を、今一度、自分たちの支援を磨き上げるための「きっかけ」として捉え直してみる。その境界をどう使い、どう既存の支援と結びつけるかを設計すること。それもまた、4月からの管理者の大切な仕事になります。

最後に

「この仕組みは、利用者さんの選択肢をどう広げているか?」 2026年度の新体制でも、この原点を中心に置いてみませんか。

新しい境界線の向こう側に、利用者さんの新しい未来が拓ける。 そのための「補完し合う支援」を、新年度も共に作っていきましょう。

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