4月1日からの新体制。多くの管理者が「スタッフに完璧な正解(マニュアル)を示さなければならない」という重圧を感じている時期かもしれません。
しかし、福祉の現場において、あらゆるケースに当てはまる「唯一の正解」は存在しません。制度が変わり、利用者の状況が変わり、正解が刻一刻と形を変える中で、今、現場が本当に持っておくべきなのは「固定された正解」ではなく**「判断のプロセスを共有する視点」**です。
「何が正しいか」より「なぜそう決めたか」
「この対応で合っていますか?」 スタッフからそう問われたとき、つい「〇〇が正解だよ」と即答したくなります。しかし、正解だけを与え続けるとスタッフの思考は停止し、現場は指示待ちの集団になってしまいます。
これからの不安定な時代に強いチームは、「答え」を共有しているチームではなく、**「納得感のある決め方(判断根拠)」**を共有しているチームです。
「法令のこのルールと、利用者さんのこの想いを天秤にかけて、今回はこちらを優先しようと決めた」 管理者がその「葛藤のプロセス」を言葉にしてスタッフに見せること。それが、正解のない中で進むための唯一の地図になります。
「暫定的な正解」で走り出す勇気
「やってみなければわからないこと」が山積みの新年度。完璧な正解を求めて立ち止まるより、「現時点での最善(暫定的な正解)」を持って一歩踏み出す。そして、うまくいかなければ、その都度みんなで修正していく。
この**「修正することを前提とした文化」**こそが、現場の心理的安全性を高めます。「間違えてはいけない」という恐怖を、「より良く変えていけばいい」という安心感へ。管理者の役割は、正解を出すことではなく、この「試行錯誤」を許容する環境を整えることです。
専門家は「正解」ではなく「座標軸」を授ける存在
私たち行政書士のような専門家もまた、あなたに「これが唯一の正解です」と押し付ける存在ではありません。法令という「客観的な座標軸」を提示し、皆さんが現場で判断を下すための「材料」を整理する。それが私たちの役割です。現場の皆さんが自信を持って「暫定的な正解」を導き出せるよう、その背後にある根拠を支える存在でありたいと考えています。
新年度、最初の一歩
もしよければ、4月の最初のミーティングでスタッフに一つだけ問いかけてみてください。 「もし現場で迷ったとき、私たちは何を一番大切にしたい?」
完璧な計画よりも、この「問いへの答え」をチームで共有することが、新しい年度の最初の、そして最強の判断軸になります。
最後に
4月1日。スタッフに伝えるべきは、完成されたマニュアルではありません。「正解はまだわからないけれど、一緒に考えていこう。迷ったらその都度、この判断軸に戻って話し合おう」という、誠実な呼びかけです。その一言が、スタッフの肩の荷を下ろし、チームを前向きに動かし始めます。
