「声の大きさ」で決まっていいの？〜“声なき声”に寄り添う福祉と、ピア行政書士としての挑戦〜

「声が大きい人の意見が通りやすい」…そんな場面、見たことありませんか？

障がい福祉の利用者として関わる中で、ふと気になることがあります。

それは、「強く」「はっきり」と主張できる人の意見が、結果として通りやすいという空気です。もちろん、障がい特性によって「感じたことをすぐ言葉にする」「我慢が難しい」という方もいますし、それ自体が悪いわけではありません。

ただ、その一方で、「意見を言うのが苦手」「遠慮してしまう」方の声が、埋もれてしまっているように感じることはありませんか？

「空調設定ひとつ」で起きる、小さな“声の不均衡”

例えば、ある事業所に「暑がりでもあり寒がりでもある」利用者さんがいるとします。その方は、「暑いです！」「寒いです！」とその時々に強く主張します。スタッフも、その方の訴えを基準に空調を調整するようになりました。

一方で、夏場に冷房が効きすぎると血流障害が起こる持病のある方は、声を上げず、ひざ掛けや厚手の靴下でなんとか対処している…。

こういった場面は、実は“どこにでもある”小さな問題かもしれません。でも私は、こうした状況が積み重なることで「本当に心地よい事業所」とは遠ざかってしまうのではないかと感じています。

「強い声＝わがまま」ではないけれど、「拾いやすい声」ばかりが優先される構造には注意したい

もちろん、強く意見を言える方には、その背景に「特性」や「自己防衛」の理由があることがほとんどです。自分の感覚や不快さをすぐに伝えることは、生きづらさを軽減する重要な手段です。

支援員の方も、日々の多忙な業務の中で「分かりやすく表現される困りごと」から対応せざるを得ないのが現実でしょう。

でもだからこそ、気をつけたいのです。

強く表現された声ばかりを拾い続けてしまうと、支援者自身が「支援できている」と思い込んでしまい、実はその陰で苦しんでいる声が見えなくなる…。そんな“構造的な偏り”が生まれていないかどうかを、一歩引いて見直す視点が必要なのではないかと、私は考えています。

「声なき声」を拾うとは、“努力しないと見えない声”に目を向けるということ

「声なき声」という表現がありますが、それは「何も言っていない人」ではなく、「伝えたいけれど、言葉にできない人」「我慢することを選んでいる人」の声です。

• 違和感があっても「迷惑をかけたくない」と飲み込んでしまう人
• 自分だけが困っている気がして「気のせいかも」と思ってしまう人
• 自分の困りごとを“うまく言語化できない”人

こうした声を汲み取るには、「聞こうとする姿勢」と「見えないものを見ようとする意識」が必要です。

ピア行政書士として、“声の大小”にかかわらず拾える仕組みをつくりたい

私は障がい当事者として、そしてピア行政書士として、こうした“声の大小に左右されない支援”を実現したいと考えています。

その一歩として、私が力を入れていきたいのが「利用者満足度調査」です。

これは、ただアンケートを配って数字を集めるものではありません。
・日々の過ごしやすさ
・支援者との関係性
・困りごとを表現しやすい雰囲気
・「配慮が行き届いている」と感じるかどうか

こういった“目に見えにくい部分”を丁寧に聞き取る工夫をこらした、現場に役立つ調査を目指しています。

声の大小ではなく、「誰が何を感じているか」に焦点を当てる。
その結果が、スタッフの気づきや支援の質の向上につながる。
そんな好循環を一緒につくりたいのです。

「全員が“ちょうどよく”過ごせる場所」へ

誰かの声が届くということは、誰かの声が埋もれている可能性がある。
そのことに、私たちはもっと敏感になってもいいのではないでしょうか。

声の大小に関係なく、それぞれの「心地よさ」が大切にされる福祉の現場。
利用者さんも、支援者さんも、みんなが安心して関われる場所。

ピア行政書士として、私はこれから
“小さな声”をすくい上げられる仕組みづくりに取り組んでいきます。

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