新年度が始まり、特別支援学校の高等部3年生のご家庭では、いよいよ本格的な進路指導の時期がやってきました。
「卒業後、どこで過ごすのが一番いいのだろうか」
「働けるのか、それとも通所なのか」
18歳という大きな節目を前に、正解が分からなくて当然です。なぜなら、進路は「制度」に合わせるものではなく、お子様の「これからの暮らし」を作るための手段に過ぎないからです。
こんにちは。行政書士の田中慶です。
私は普段、事業所の支援や「親なきあと」の仕組み作りをお手伝いしていますが、進路選択はお子様が社会と繋がるための大切な「構造」の第一歩です。
今回は、主要な3つの進路を整理し、「今、何をすべきか」を明確にします。
1. 卒業後の進路を比較する(就労系サービス)
卒業後の「働く」場所には、主に3つの選択肢があります。それぞれの特徴を「お子様らしさ」に照らして比較してみましょう。
| サービス種別 | 主な目的 | 雇用契約と賃金・工賃 | 注意点 |
| 就労移行支援 | 一般企業への就職を目指す訓練(原則2年) | なし(工賃の有無・額は事業所により異なる) | 企業就労を希望する方が対象。必ずしも工賃が出るとは限りません。 |
| 就労継続支援A型 | 働きながらスキルアップを目指す | あり(最低賃金法が適用される) | 労働契約を結ぶため、勤務継続が難しい場合は契約終了の可能性もあります。 |
| 就労継続支援B型 | 体調やペースに合わせた日中活動 | なし(出来高に応じた工賃) | 工賃は出来高制であり、生活費をすべて賄える水準とは限りません。 |
2. 新しいステップ「就労選択支援」を知っておく
2024年度から段階的に導入されている「就労選択支援」という仕組みをご存知でしょうか。これは、移行・A型・B型などのサービスを利用する前に、「本人の強みや、どのような環境なら働きやすいか」を第三者的な視点で整理するアセスメント(評価)のステップです。
地域によっては、卒業後すぐに就労系サービスを利用する際の前提プロセスとなる場合もあります。 これは「合否判定」の試験ではありません。ご本人の得意なことや、**「どういう環境(静かな場所、指示が明確な作業など)なら、より力を発揮しやすいか」**を、専門のスタッフと一緒に整理するためのステップです。
進路を“決める”前に、お子様に合った環境を“見つける”ための協力者がいることを、ぜひ頭の片隅に置いておいてください。
3. 保護者が「今」やるべき3つのアクション
① 「体験実習」で安心の根拠を探す
実習は「作業ができるか」を確認するだけの場ではありません。**「スタッフとの相性」や「トイレ・休憩場所の安心感」**など、お子様がリラックスして過ごせているか、を注視してください。
② 障害年金との関係を正しく理解する
「働くと年金がもらえない?」という不安を耳にしますが、年金審査の核心は就労の有無そのものではなく、**「日常生活でどの程度の援助が必要か」「労働にどのような制限があるか」**という点です。今のうちから、日々の支援の実態を記録しておくことが将来の安心に繋がります。
③ 「進路は何度でも選び直せる」と心に留める
進路は一度決めたら一生そのまま、ではありません。B型からA型へ、A型から一般就職へ、あるいはその逆も可能です。「今」のベストが、10年後のベストである必要はありません。
整理の視点:18歳の壁は、一人で越えなくていい
特別支援学校の卒業は、学校という手厚い「守り」から、福祉サービスという「社会」へ飛び出す大きな変化です。
私自身、支援を受ける立場として感じてきたのは、進路選びで一番大切なのは、優秀な施設を選ぶことではなく、「お子様が一番、自分らしくいられる環境」を見つけることでした。親が「ここなら安心」と思える場所は、お子様にとっても安心できる場所であることが多いものです。
まとめ|「正解」を探すより「納得」を重ねる
進路選択は、お子様にぴったりの形をパズルのように探していく作業です。
新年度は「気合い」で乗り切るものではなく、「構造」で安定させるもの。
- 「移行・A型・B型、うちの子の適性をどう見極めればいい?」
- 「新制度の『就労選択支援』、うちの地域ではどうなってるの?」
- 「将来の親なきあとを見据えた、年金と進路の組み合わせを知りたい」
そのようなときには、良ければ頼ってください。
