私は、自分のことを「ピア行政書士」と表現しています。
ピア行政書士は、法律上の資格名や認定制度の名称ではありません。
障がい当事者として制度や福祉サービスを利用してきた経験と、行政書士として制度・書類・事業所運営を支える専門性。その両方を生かしたいという思いから、私自身の目指す行政書士像を表した言葉です。
「ピア」とは、同じ立場や経験を持つ人
「ピア(peer)」には、仲間、同じ立場にある人、似た経験を持つ人という意味があります。
同じ制度を利用した経験があるからといって、ほかの人の気持ちをすべて理解できるわけではありません。障がいの種類、生活環境、家族関係、受けてきた支援は、一人ひとり異なります。
それでも、制度を使うことへのためらいや、支援を受けることへの複雑な気持ち、書類上の説明と実際の生活との間にある距離を、自分自身の経験として知っています。
この経験は、制度を説明するときだけでなく、障がい福祉事業所の運営を考えるうえでも大切な視点になっています。
制度を利用する側と、運営する側の間にあるもの
障がい福祉サービスは、法令や指定基準、報酬制度、個別支援計画、支援記録など、多くの仕組みによって運営されています。
事業所が適正に運営されるためには、これらの制度や書類を整えることが欠かせません。
一方で、書類だけが整っていても、実際の支援内容や本人の希望と一致していなければ、制度が本来目指している支援にはつながりません。
例えば、個別支援計画には本人の希望が書かれているのに、日々の支援記録からは、その目標に向けた支援が読み取れないことがあります。
現場では丁寧な支援が行われていても、記録に残っていなければ、第三者には伝わりません。反対に、書類上は整っていても、実際の支援と離れていれば、利用者本人にとって意味のある計画とはいえません。
私は、制度を守ることと、本人の生活や気持ちを大切にすることは、対立するものではないと考えています。
その二つをつなぐことが、ピア行政書士としての役割です。
当事者経験だけで判断しない
当事者経験は、私の大切な土台です。
しかし、自分の経験だけを基準にして、ほかの利用者や事業所の状況を決めつけることはしません。
「自分のときはこうだったから、この人も同じだろう」
「当事者なら、この支援を望むはずだ」
このような考え方は、本人中心の支援から離れてしまいます。
当事者経験は、答えを決めるためではなく、見落とされやすい疑問に気づくために使います。
本人は本当にこの目標を望んでいるのか。支援者の意図は本人に伝わっているか。記録上の表現と、実際に行われた支援は一致しているか。
そうした点を、法令や行政実務と照らし合わせながら確認します。
事業所を責めるためではなく、一緒に整理するために
障がい福祉事業所の運営では、制度改正への対応、職員への周知、日々の記録、研修や委員会、行政への届出など、多くの業務が同時に発生します。
管理者やサービス管理責任者が、現場の支援と運営業務の両方を抱えていることも珍しくありません。
そのため、書類の不足や記録のずれが見つかったとしても、単純に「事業所の意識が低い」とは限りません。
何を、誰が、いつまでに行うのかが整理されていない。制度改正の情報が現場まで届いていない。丁寧な支援をしていても、記録のルールが共有されていない。
こうした背景を確認せず、できていないことだけを指摘しても、改善は続きません。
私が大切にしているのは、事業所を責めることではなく、現在の状況を一緒に整理し、実行可能な改善方法を考えることです。
ただし、実施していない研修や支援を、実施済みであるかのように記録することはできません。
過去を取り繕うのではなく、現状を正しく確認し、これから適正な運営を続けられる仕組みを整える。その姿勢を大切にしています。
制度と現場の間をつなぐ行政書士として
ピア行政書士として私が目指しているのは、制度だけを見る人でも、気持ちだけを代弁する人でもありません。
行政が求める基準を確認しながら、事業所の実情や職員の負担、利用者本人の生活にも目を向ける。
書類の形式を整えるだけでなく、なぜその書類が必要なのか、日々の支援とどのようにつながるのかを一緒に考える。
制度を守ることを前提に、現場で継続できる方法を探す。
それが、私の考えるピア行政書士です。
行政書士田中慶事務所の支援
行政書士田中慶事務所では、大阪市を中心とする障がい福祉事業所に対して、次のような支援を行っています。
- 支援記録と個別支援計画の整合性確認
- 運営書類や記録のリスク点検
- 法定研修・委員会・訓練の年間運用支援
- 障がい福祉事業所の開設や運営に関する手続き
- 制度や行政対応についての状況整理
事業所ごとに、サービス種別、職員体制、利用者の状況、これまでの運営方法は異なります。
最初から一つの正解を当てはめるのではなく、現在の状況を確認したうえで、必要な対応を一緒に整理します。
まとめ
「ピア行政書士」は、正式な資格名ではありません。
障がい当事者として制度を利用してきた経験と、行政書士として制度や事業所運営を支える専門性を組み合わせた、私自身の行政書士像です。
当事者経験だけで判断せず、制度だけで現場を切り取らない。
利用者本人、支援する職員、事業所を運営する方、そして行政。それぞれの立場を確認しながら、制度と現場の間をつなぐ。
私は、そんな行政書士として、障がい福祉事業所と伴に走り続けたいと考えています。
当事者・福祉現場・行政実務の視点をつなぎ、現在の状況を一緒に整理することを大切にしています。
田中慶が障がい福祉分野に特化した経緯と、相談者や事業所に向き合う際の支援姿勢をご紹介します。
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