就労継続支援A型事業所を運営するうえで、注意したい減算の一つが「短時間利用者が一定割合以上である場合の減算」です。
この減算については、
- 週20時間未満とは、契約時間と実労働時間のどちらで判断するのか
- 休んだ週も短時間利用者に含まれるのか
- 50%以上になったら、どの程度減算されるのか
- どの期間の利用実績を使って判定するのか
- 障害特性や体調を理由に短時間勤務としている場合も対象になるのか
- 就労継続支援B型にも同じ減算があるのか
といった疑問が生じやすいところです。
就労継続支援A型は、利用者と雇用契約を締結し、就労の機会や必要な支援を提供する障害福祉サービスです。短時間利用減算は、その雇用型サービスとしての趣旨を踏まえ、週20時間未満の利用者が事業所内で一定割合以上となった場合に、基本報酬を調整する仕組みです。
この記事では、短時間利用減算の対象となる利用者、割合の計算方法、減算率、実務上の注意点を整理します。
A型の短時間利用減算とは
短時間利用減算とは、就労継続支援A型事業所において、雇用契約を締結している利用者のうち、週20時間未満の利用者が一定割合以上を占める場合に、所定単位数を減額する制度です。
厚生労働省の留意事項では、次の2段階に分けて減算するとされています。
| 短時間利用者の割合 | 算定する所定単位数 |
|---|---|
| 50%未満 | 通常どおり |
| 50%以上80%未満 | 所定単位数の90% |
| 80%以上 | 所定単位数の75% |
つまり、50%以上80%未満の場合は10%相当、80%以上の場合は25%相当が減額されます。
「短時間利用者」とは誰を指すのか
短時間利用者とは、週20時間未満の利用者を指します。
ここでいう利用者は、就労継続支援A型事業所と雇用契約を締結している人です。雇用契約を締結していない利用者や職員を、短時間利用者の割合計算へ含めるものではありません。
注意したいのは、単に雇用契約書上の所定労働時間を見るだけではなく、対象となる週の利用実績を確認する必要があることです。
事業所としては、少なくとも次の資料が相互に一致しているか確認しておきましょう。
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 出勤簿
- タイムカード
- シフト表
- サービス提供実績記録票
- 賃金台帳
契約上は週20時間以上でも、実際の利用時間が継続的に週20時間を下回っている場合には、減算判定に影響する可能性があります。
分母となる「現員数」とは
短時間利用者の割合を計算するときの分母は、単純な契約者数や利用定員ではありません。
厚生労働省の留意事項では、現員数を次のように定義しています。
雇用契約を締結している利用者で、1週間のうち1日でも利用があった人の合計数
つまり、対象となる週に1日でも利用した雇用契約利用者を、現員数として数えます。
その週に一度も利用していない人の取扱いについては、欠勤理由や利用実績の状況も含め、指定権者へ確認した方が安全です。
短時間利用者の割合の計算方法
基本的な計算式は、次のとおりです。
短時間利用者の割合
=週20時間未満の利用者数÷その週の現員数×100
たとえば、ある週の現員数が20人で、そのうち週20時間未満の利用者が12人だった場合、
12人÷20人×100=60%
となります。
この週だけを見れば、50%以上80%未満の範囲です。
ただし、実際の減算判定は、単独の1週間だけで決めるものではありません。
直近3か月の「週平均」で判定する
短時間利用者の割合は、直近の過去3か月について、1週間ごとの割合を計算し、その期間の週平均を用いて判定します。
つまり、次の手順になります。
- 各週の現員数を確認する
- 各週の短時間利用者数を確認する
- 各週の短時間利用者割合を計算する
- 直近3か月分の各週の割合を合計する
- 対象となる週数で割り、週平均を出す
厚生労働省の留意事項では、算定対象となる3か月の最初または最後の週が対象外の月をまたぐ場合、その週を除いて計算するとされています。
計算例
直近3か月の対象週が12週あり、各週の短時間利用者割合が次のとおりだったとします。
| 週 | 短時間利用者の割合 |
|---|---|
| 第1週 | 45% |
| 第2週 | 50% |
| 第3週 | 55% |
| 第4週 | 60% |
| 第5週 | 50% |
| 第6週 | 55% |
| 第7週 | 65% |
| 第8週 | 60% |
| 第9週 | 55% |
| 第10週 | 50% |
| 第11週 | 45% |
| 第12週 | 50% |
合計は640%です。
640%÷12週=約53.3%
この場合、直近3か月の週平均が50%以上80%未満となるため、所定単位数の90%を算定する区分に該当します。
毎週50%を超えていなくても、直近3か月の週平均が50%以上になれば対象となる点に注意が必要です。
反対に、一時的に50%を超えた週があっても、3か月の週平均が50%未満であれば、この基準による減算には該当しません。
週20時間の考え方
短時間利用減算を確認するときは、「1日4時間勤務だから大丈夫」といった1日単位の判断では不十分です。
判定基準は週20時間未満であるため、1週間の合計時間を確認します。
たとえば、1日4時間でも、
- 週5日なら20時間
- 週4日なら16時間
- 週3日なら12時間
となります。
勤務日数だけでなく、実際の勤務時間や利用時間の合計を週ごとに集計する必要があります。
また、休憩時間は通常、労働時間には含まれません。雇用契約書に記載された拘束時間ではなく、労働時間として何時間になるのかを確認しましょう。
欠勤や早退があった場合はどう考えるか
欠勤、遅刻、早退があった週は、結果として週20時間未満になることがあります。
短時間利用減算の判定は、利用者ごとの週の利用実態を踏まえて行われます。そのため、契約上は週20時間以上でも、欠勤等により実績が20時間未満となった週をどのように扱うかが問題になります。
特に注意が必要なのは、次のようなケースです。
- 体調不良による欠勤が多い
- 通院のため毎週早退する
- シフトの都合で勤務日数が減った
- 事業所の仕事不足により休業となった
- 段階的に勤務時間を増やしている
- 在宅利用と通所を組み合わせている
個別事情がある場合でも、事業所の判断だけで集計から除外できるとは限りません。
継続的に週20時間未満となる利用者がいる場合は、指定権者へ計算上の取扱いを確認し、その回答を記録として残しておくことが安全です。
障害特性により短時間勤務としている場合
利用者の障害特性や体調に配慮し、短時間勤務を設定すること自体が、直ちに不適切というわけではありません。
A型事業所には、利用者の状態に応じた支援を行いながら、雇用契約に基づく就労の機会を提供する役割があります。
一方で、個別支援上の必要性があることと、短時間利用減算の計算から除外されることは別の問題です。
短時間勤務が必要な場合には、
- なぜ短時間勤務が必要なのか
- 現在の勤務時間は何時間か
- 将来的に勤務時間を増やす予定があるか
- 本人の希望と事業所の支援方針が一致しているか
- 個別支援計画にどのように位置付けているか
- 雇用契約や労働条件と整合しているか
を整理しておくことが重要です。
短時間勤務の理由を記録していても、自動的に減算対象から除外されるとは限らないため注意しましょう。
事業所都合で勤務時間を短くしていないか
短時間利用者が増える原因は、利用者本人の体調や障害特性だけとは限りません。
たとえば、
- 生産活動の仕事が不足している
- 職員体制が整わず長時間の支援ができない
- 送迎時間を優先して勤務時間を短縮している
- 事業所の営業時間が短い
- 利用者数を増やすため、一人当たりの時間を短くしている
といった事業所側の事情によって、週20時間未満となることも考えられます。
A型事業所は雇用契約に基づく就労の場であるため、単に利用者を受け入れるだけでなく、継続的に仕事を提供できる生産活動と支援体制を整える必要があります。
短時間利用者の割合が上昇している場合は、個々の利用者の事情だけでなく、事業所全体の仕事量やシフト設計も見直しましょう。
毎月確認したい実務項目
短時間利用減算は、年度末にまとめて確認するのではなく、毎月継続して確認することが重要です。
最低限、次の数字を管理しておきましょう。
1.利用者ごとの週の労働時間
日単位ではなく、週単位の合計時間を集計します。
2.各週の現員数
雇用契約を締結している利用者のうち、その週に1日でも利用した人を確認します。
3.各週の短時間利用者数
週20時間未満となった利用者を抽出します。
4.各週の短時間利用者割合
短時間利用者数を現員数で割って計算します。
5.直近3か月の週平均
各週の割合を平均し、50%または80%の基準に近づいていないかを確認します。
管理表に入れておきたい項目
Excelや業務ソフトで管理する場合は、次の項目を用意すると確認しやすくなります。
- 利用者氏名
- 雇用契約の有無
- 対象週
- 各日の労働時間
- 週合計時間
- 週20時間未満か
- その週の現員数
- その週の短時間利用者数
- その週の割合
- 直近3か月の週平均
- 欠勤・早退等の理由
- 指定権者への確認内容
月末に集計するだけではなく、50%に近づいた時点で分かるようにしておくと、早めに勤務状況や支援方針を見直せます。
50%を超えそうなときに確認すること
短時間利用者の割合が50%に近づいている場合、単に勤務時間を増やせばよいというものではありません。
利用者本人の体調や希望を無視して勤務時間を延ばすことは、適切な支援とはいえません。
まずは次の順に確認します。
- 集計方法が正しいか
- 対象者と現員数の数え方に誤りがないか
- 欠勤や早退が一時的なものか
- 短時間勤務が継続している理由は何か
- 個別支援計画と雇用契約が整合しているか
- 事業所の仕事量やシフトに問題がないか
- 減算該当の可能性を指定権者へ相談したか
減算を避けることだけを目的に、記録上の勤務時間を実態より長く見せることはできません。
実際の利用時間と勤務記録、賃金台帳、サービス提供実績記録票が一致していることが前提です。
減算に該当した場合の対応
短時間利用者の割合を計算した結果、減算に該当する可能性がある場合は、自己判断のまま請求を続けないことが重要です。
次の対応を行います。
- 対象となる3か月の計算を再確認する
- 出勤簿や実績記録票と照合する
- いつから減算対象となるか確認する
- 指定権者へ報告・相談する
- 必要な体制届や請求上の処理を確認する
- 過去の請求に誤りがある場合の対応を確認する
- 今後の勤務体制と生産活動を見直す
請求済みの期間に算定誤りが見つかった場合、過誤申立てや再請求などが必要になる可能性があります。
具体的な手続きや対象期間は、指定権者と国保連合会の案内に従ってください。
就労継続支援B型にも同じ減算がある?
就労継続支援B型には、A型と同じ「週20時間未満の利用者が一定割合以上」という短時間利用減算は設けられていません。
A型は利用者と雇用契約を締結する雇用型サービスであるのに対し、B型は雇用契約を結ばず、生産活動などの機会を提供するサービスです。
そのため、A型の短時間利用減算の基準を、そのままB型へ当てはめることはできません。
ただし、B型にも人員欠如、個別支援計画未作成、身体拘束廃止未実施など、別の減算があります。
サービス種別ごとに適用される減算を分けて確認する必要があります。
よくある質問
Q1.週20時間ちょうどの場合は短時間利用者ですか?
短時間利用者は「週20時間未満」とされているため、週20時間ちょうどであれば、文言上は短時間利用者には該当しません。
ただし、実際の労働時間が20時間を下回っていないかを確認してください。
Q2.1週間だけ20時間未満になったら、すぐ減算されますか?
単独の1週間だけで判断するのではなく、直近3か月における各週の割合を計算し、その週平均で判定します。
Q3.欠勤した利用者は現員数に含まれますか?
現員数は、その週に1日でも利用があった雇用契約利用者の合計数とされています。1週間を通じて利用がなかった場合の扱いについては、個別状況を指定権者へ確認してください。
Q4.障害特性により週20時間働けない場合も対象ですか?
個別支援上、短時間勤務が必要な場合でも、自動的に減算の計算対象から除外されるとは限りません。
本人の状態、勤務実績、個別支援計画を整理したうえで、指定権者へ確認してください。
Q5.利用者の割合が50%なら減算になりますか?
50%以上が対象なので、週平均がちょうど50%の場合も、所定単位数の90%を算定する区分に該当します。
Q6.割合が80%なら、どちらの区分ですか?
80%以上は、所定単位数の75%を算定する区分です。
Q7.利用定員を分母にして計算しますか?
利用定員ではなく、その週の「現員数」を分母として計算します。
現員数とは、雇用契約を締結している利用者のうち、その週に1日でも利用した人の合計数です。
まとめ
就労継続支援A型の短時間利用減算では、雇用契約を締結している利用者のうち、週20時間未満の利用者が占める割合を確認します。
判定のポイントは、次のとおりです。
- 短時間利用者は週20時間未満の利用者
- 分母は利用定員ではなく、各週の現員数
- 各週の割合を計算する
- 直近3か月の週平均で判定する
- 50%以上80%未満は所定単位数の90%
- 80%以上は所定単位数の75%
- B型には同じ短時間利用減算はない
短時間勤務が必要な利用者への配慮と、減算ルールへの対応は、どちらか一方を優先すればよいものではありません。
本人の状態に応じた勤務時間を設定しながら、個別支援計画、雇用契約、勤務実績、報酬請求の整合性を確保することが重要です。
毎週の実績を記録し、直近3か月の割合を継続的に確認できる仕組みを整えておきましょう。
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