はじめに|「人数は足りている」だけでは判断できません
就労継続支援B型事業所の人員配置を確認するとき、職員の人数だけを見て「基準を満たしている」と判断していないでしょうか。
常勤換算で確認する職種については、単純な在籍人数ではなく、職員の勤務時間をもとに計算する必要があります。
そのため、職員名簿上は十分な人数が在籍していても、勤務時間、休憩時間、欠勤、兼務状況などを反映すると、想定していた常勤換算数と異なることがあります。
この記事では、大阪市の就労継続支援B型事業所を念頭に、常勤換算の基本と、シフト表・勤務実績を確認するときの注意点を整理します。
常勤換算とは
大阪市は、常勤換算について、事業所の従業者の勤務延べ時間数を、その事業所で常勤職員が勤務すべき時間数で除して計算すると説明しています。
たとえば、常勤職員が勤務すべき時間が週40時間で、非常勤職員2人の勤務時間がそれぞれ週32時間と週20時間である場合、次のように計算します。
(32時間+20時間)÷40時間=1.3
この場合、2人の非常勤職員を合わせた常勤換算数は1.3人です。
在籍人数は2人ですが、常勤換算では2.0人ではありません。常勤換算は、人数ではなく勤務時間を基礎として計算するためです。
就労継続支援B型で必要となる主な職員
就労継続支援B型では、職業指導員、生活支援員、サービス管理責任者、管理者などを配置します。
職業指導員と生活支援員については、両職種を合わせた総数を、常勤換算方法により必要数以上配置することが求められます。
また、職業指導員と生活支援員は、それぞれ1人以上必要です。両職種のうち少なくとも1人は、常勤でなければなりません。
サービス管理責任者についても、利用者数に応じた配置が必要であり、少なくとも1人は常勤であることが求められます。
なお、必要となる職業指導員・生活支援員の配置数は、事業所が算定している基本報酬の人員配置区分などによって異なります。
単に最低基準だけを確認するのではなく、現在届け出ている報酬区分や加算の要件も含めて確認する必要があります。
1.計算の分母を確認する
常勤換算を行うとき、最初に確認したいのが分母です。
分母となるのは、その事業所で定めている「常勤職員が勤務すべき時間数」です。
大阪市は、原則として事業所が定める常勤の勤務時間数を用い、1週間の勤務時間が32時間を下回る場合は、32時間を基本とすると案内しています。
たとえば、就業規則で常勤職員の勤務時間を週40時間としている事業所で、非常勤職員が週20時間勤務している場合、その職員の常勤換算数は原則として次のようになります。
20時間÷40時間=0.5
一方、事業所ごとに就業規則や雇用条件が異なるため、すべての事業所が必ず週40時間を分母にするとは限りません。
次の資料で、事業所の常勤時間数が一致しているかを確認します。
- 就業規則
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 運営規程
- 勤務形態一覧表
書類ごとに常勤の勤務時間が異なっている場合は、どの時間数を基準としているのか説明しにくくなります。
2.勤務時間から休憩時間を除いているか
常勤換算の計算に含めるのは、原則として勤務した時間です。
シフト上の拘束時間をそのまま計算に使ってしまうと、休憩時間まで勤務時間として計上している可能性があります。
たとえば、午前9時から午後6時まで勤務し、休憩が1時間ある場合、拘束時間は9時間ですが、実働時間は8時間です。
勤務形態一覧表や常勤換算表を作成するときは、次の資料に記載された時間が一致しているか確認します。
- シフト表
- タイムカード
- 勤怠管理システム
- 雇用契約書
- 休憩時間の定め
特に、勤務時間帯によって休憩時間が異なる事業所では、職員ごとの実働時間を正しく反映できているか注意が必要です。
3.予定表ではなく勤務実績も確認する
月初に作成したシフト表では人員基準を満たしていても、実際には欠勤、遅刻、早退、有給休暇、勤務変更などが発生します。
そのため、シフト表だけでなく、月末の勤務実績をもとに常勤換算を確認することが重要です。
確認する資料は、主に次のとおりです。
- 月間シフト表
- 確定後の勤務実績表
- タイムカード
- 出勤簿
- 有給休暇や欠勤の記録
- 勤務変更の記録
予定と実績に差がある場合は、勤務形態一覧表や常勤換算の計算にも、その差を反映させます。
「予定では勤務していることになっているが、タイムカードでは欠勤している」という状態を放置すると、実際の人員配置を正確に説明できません。
4.急な欠勤が出たときの考え方
職員が1日休んだからといって、その日だけを見て直ちに人員欠如減算になるとは限りません。
人員欠如減算については、必要な職員数を下回った程度や期間に応じて、減算が始まる時期が定められています。
職業指導員や生活支援員などが必要数から1割を超えて不足した場合は、原則として翌月から減算対象となります。
不足が1割以内の場合は、原則として翌々月から減算対象となりますが、翌月末までに人員基準を満たした場合は、この取扱いの例外があります。
ただし、これは「多少不足しても問題がない」という意味ではありません。
指定基準上必要な人員配置は継続して満たす必要があり、厚生労働省の通知でも、人員欠如を未然に防止するよう求めています。
急な欠勤が発生した場合は、少なくとも次の点を確認しておきたいところです。
- その月の常勤換算数
- 必要配置数との差
- 不足が一時的か継続的か
- 代替職員を配置できたか
- 翌月以降の勤務体制
- 加算や報酬区分への影響
人員基準と人員欠如減算の開始時期は、分けて考える必要があります。
5.管理者やサービス管理責任者が兼務している場合
管理者やサービス管理責任者が、職業指導員や生活支援員を兼務する事業所もあります。
兼務が認められる場合でも、1人の勤務時間を複数の職種に重複して計上することはできません。
たとえば、1日8時間勤務した職員について、
- 管理者として8時間
- 生活支援員として4時間
の合計12時間勤務したものとして扱うことはできません。
実際の8時間の中で、どの時間にどの職務を行っていたのかを整理する必要があります。
勤務形態一覧表では、主な職種と兼務職種を記載するだけでなく、必要に応じて勤務時間の配分を確認します。
特に、管理者業務やサービス管理責任者業務を行いながら、常時、直接支援職員としても勤務している形になっている場合は、実態に即した配置になっているかを点検する必要があります。
6.「管理者が現場に入った」だけでは説明が足りないことがある
欠勤者が出た日に、管理者やサービス管理責任者が現場の支援に入ることもあります。
ただし、後から勤務実績表を見たときに、誰がどの職務を担ったのか分からなければ、職業指導員や生活支援員として勤務した時間を説明しにくくなります。
このような場合は、実態に応じて次のような記録を残します。
- 勤務変更後のシフト
- 職種別の勤務時間
- 欠勤者と代替職員
- 直接支援に入った時間帯
- 管理業務との区分
色分けされたシフト表でなければならないという一律のルールがあるわけではありません。
大切なのは、後から見ても、職員ごとの勤務時間と職務内容を確認できる状態にしておくことです。
7.月ごとに確認したい資料
常勤換算は、運営指導の通知が届いてからまとめて計算するものではありません。
毎月の請求前後に、次の資料を突き合わせておくと、配置不足や計算誤りに気づきやすくなります。
- 勤務形態一覧表
- シフト表
- タイムカード
- 出勤簿
- 有給休暇・欠勤記録
- 雇用契約書
- 職員名簿
- 資格証・研修修了証
- 利用者数が分かる資料
- 基本報酬や加算の届出書
確認したいのは、単に計算式が合っているかだけではありません。
- 分母となる常勤時間数は正しいか
- 休憩時間を除いているか
- 欠勤や早退を反映しているか
- 職種を重複して計上していないか
- 必要配置数の計算に用いる利用者数は正しいか
- 届け出ている報酬区分の要件を満たしているか
こうした点を毎月確認することで、人員配置の不足を早い段階で把握できます。
よくある誤解
非常勤職員が2人いれば2.0人になる
常勤換算は在籍人数ではなく勤務時間で計算します。
非常勤職員が2人在籍していても、勤務時間によっては常勤換算1.0人未満になることがあります。
予定シフトで足りていれば問題ない
常勤換算の確認では、実際の勤務状況も重要です。
欠勤、遅刻、早退などがあれば、勤務実績に反映する必要があります。
管理者が兼務していれば不足分をすべて補える
兼務職員の勤務時間を複数職種に重複して計上することはできません。
また、管理業務など本来の職務を行いながら、必要な直接支援業務を実際に担える勤務体制であるかも確認が必要です。
0.1人不足したら直ちに数百万円を返還する
人員欠如減算の適用時期は、不足の程度や継続期間によって異なります。
不足が判明したからといって、常にその日から過去分すべてが一律に返還対象となるわけではありません。個別の状況、算定している報酬、行政の確認内容などによって判断されます。
まとめ|シフト表と勤務実績をつなげて確認する
就労継続支援B型の常勤換算で重要なのは、計算式そのものよりも、その計算に使った勤務時間を資料で説明できることです。
確認したい主なポイントは次のとおりです。
- 事業所の常勤時間数を確認する
- 実働時間で計算する
- 予定と勤務実績を突き合わせる
- 欠勤や早退を反映する
- 兼務職員の勤務時間を重複させない
- 届け出ている報酬区分まで確認する
職員数だけを見て判断するのではなく、勤務時間、職種、利用者数、報酬区分を一つの流れとして確認することが大切です。
人員配置の確認を毎月の運用に組み込んでおけば、運営指導の通知後に慌てて過去の勤務実績を計算し直す事態も避けやすくなります。
