はじめに|「想定外」は突然起きていない
運営指導が終わったあと、多くの管理者がこう口にします。 「そんな細かいところを見られるとは思っていませんでした……」
現場の皆さんは、日々一生懸命に支援をし、記録も残し、体制も回しているはずです。それでも指摘が出る理由は一つ。 「現場の事実」と「書類による証明」の間に、自分たちでも気づかない「1ミリのズレ」があるからです。
指導員は、あなたの「頑張り」を疑っているのではなく、ただ淡々と「証拠の有無」を確認しに来ます。この記事では、実際に起きた事例から、指導員の「本音」を読み解いていきましょう。
事例①|「記録はあるのに、根拠が弱い」と言われた
【現場の主張】「毎日、その日の利用者の様子を丁寧に、びっしり書いています!」
【指導員の視点】「日記を読みに来たのではありません。『計画に基づいた支援』の記録を出しなさい」
- 何がズレていたか: 「何をしたか(事実)」は書いてあっても、それが個別支援計画のどの目標を達成するための支援なのか(理由)が抜けていた。
- 本当にあること: 「今日は作業に集中できていた」という記録。指導員からは「それが就労に向けたどのステップなの?」と突っ込まれます。
- 防ぐには: 記録の冒頭に「計画の短期目標①に基づき〜」と一言添えるだけで、日記が「公的な証拠」に変わります。
事例②|「人は足りているのに、管理不足を指摘された」
【現場の主張】「常勤換算はクリアしているし、急な欠勤も管理者がカバーしています!」
【指導員の視点】「欠員が出た際、誰がどの役割にスライドしたのか、証拠(変更したシフト表)がありませんね」
- 何がズレていたか: 現場では臨機応変に対応していても、勤務実績表(実績ベースのシフト)にその変更が反映されていなかった。
- 本当にあること: 指導員は「この日の午後は誰が現場の責任者でしたか? この実績表のままだと、サビ管が一人で現場を回していたことになってますよ」と、物理的な矛盾を突いてきます。
- 防ぐには: 「足りているか」ではなく、欠員時に「どう体制を組み替えて、安全を確保したか」のプロセスを書類に残しておくこと。
事例③|「規程はあるのに、最新ではない」
【現場の主張】「開設の時に大阪市に提出した運営規程がちゃんとあります!」
【指導員の視点】「令和6年度の報酬改定で義務化された『虐待防止』や『BCP(業務継続計画)』の項目、規程に入っていませんね」
- 何がズレていたか: 定員や住所などの大きな変更は追っていても、制度改正による「文言の追加」を忘れていた。
- 本当にあること: 指導員は、内容を熟読する前に「最終更新日」と「目次」を見ます。そこでBCP等の文字がないと、その時点で「意識の低い事業所」というレッテルが貼られます。
- 防ぐには: 規程は「宝物」ではありません。制度が変わるたびに筆を入れる「未完成の書類」だと心得てください。
事例④|「サビ管はいるのに、機能していない」
【現場の主張】「サビ管は毎日出勤して、個別支援計画も作っています!」
【指導員の視点】「計画の同意書の日付が、支援開始日より後になっています。これは『無計画な支援』と同じです」
- 何がズレていたか: 書類は揃っていたが、作成・説明・同意の「順序(タイムライン)」が崩れていた。
- 本当にあること: 指導員は日報の日付と、計画書の署名日付を突き合わせます。「4月1日から支援しているのに、同意をもらったのは4月10日ですね? この10日間分は計画未作成減算です」という指摘は、大阪市では日常茶飯事です。
- 防ぐには: サビ管の「仕事量」ではなく、法定の「手続き順序」が守られているかを管理者がダブルチェックすること。
まとめ|すべてに共通する「想定外」の正体
指摘を受ける事業所に共通しているのは、「暗黙の了解」で運営しているという点です。
- 「いつもこうしているから」
- 「言わなくても分かっているから」
この「言葉にされない運用」こそが、運営指導では「不備」として扱われます。指導員が見ているのは、あなたの心意気ではなく、「誰が、いつ見ても、同じように理解できる客観的な記録」だけです。
最後に|「想定外」をなくすために
想定外の指摘は、あなたが「そこは見られないだろう」と無意識に除外した場所にしか起きません。
- 記録: 「計画」とのつながりが見えるか?
- 配置: 「体制の組み換え」が書類で追えるか?
- 規程: 「最新の制度」を反映しているか?
この3つを点検するだけで、運営指導当日の「冷や汗」は劇的に減ります。
「うちは大丈夫だと思いたいけれど、正直不安……」 そう感じたなら、それはプロとして正しい感覚です。一度、外部の目を入れて「指導員が突きたくなるポイント」を洗い流してみませんか?