大阪市の就労継続支援B型事業所が運営指導へ備えるとき、まず確認するのは「必要な書類がそろっているか」だと思います。
しかし、書類が存在しているだけでは十分とはいえません。
個別支援計画、日々の支援記録、勤務実績、運営規程などを並べたときに、記載内容や日付が一致しているか。実際の運営を、書類から説明できる状態になっているかが重要です。
この記事では、書類があっても説明しにくくなりやすい4つのズレを整理します。
1.個別支援計画と支援記録のズレ
個別支援計画には、利用者の意向、長期目標・短期目標、具体的な支援内容などを記載します。
一方、日々の支援記録が、
「作業に集中していた」
「体調は良好だった」
「特に問題なく過ごされた」
という状況説明だけになっていると、計画に基づいて何を支援したのかが読み取りにくくなります。
ただし、毎回「短期目標①に基づき」と書けばよいわけではありません。
支援記録から、次の流れが読み取れることが大切です。
・利用者の状態や出来事
・職員が行った働きかけ
・利用者の反応や変化
・今後の支援につなげる事項
個別支援計画と記録を照合したときに、計画で定めた支援が日々の支援へ反映されているかを確認します。
2.勤務予定と勤務実績のズレ
月初に作成した勤務予定表があっても、実際の勤務状況が反映されていなければ、人員体制を正確に説明できません。
現場では、急な欠勤、遅刻、早退、研修、他事業所への応援などが発生します。
その場合は、勤務予定だけでなく、実際に誰が何時から何時まで勤務し、どの職種・役割を担当したのかを確認できる状態にしておく必要があります。
確認したいのは、次のような点です。
・勤務予定と出勤実績が一致しているか
・欠勤や勤務変更が実績へ反映されているか
・兼務する職員の勤務時間が重複していないか
・管理者やサービス管理責任者の勤務状況を説明できるか
・人員配置に関係する加算の要件を満たしているか
大阪市も、運営指導の事前提出資料として「勤務予定・実績一覧表」を公表しています。予定上の人数だけでなく、実際の勤務状況との一致を確認しておきましょう。
3.届出・規程と現在の運営とのズレ
開設時に作成した運営規程や重要事項説明書も、時間の経過とともに実際の運営とズレることがあります。
たとえば、次のような変更です。
・営業日や営業時間
・サービス提供時間
・利用定員
・通常の事業の実施地域
・職員の職種や員数
・利用者から受領する費用
・苦情相談窓口
・緊急連絡先
運営規程だけでなく、重要事項説明書、利用契約書、変更届、事業所内の掲示、ホームページなども含めて確認します。
なお、制度改正で新しい義務が加わったからといって、その内容をすべて運営規程へ追記するとは限りません。
業務継続計画、感染症対策、虐待防止、身体拘束等の適正化などは、それぞれ必要となる計画、指針、委員会、研修、訓練、記録を分けて確認する必要があります。
「運営規程に特定の言葉がない」という一点ではなく、必要な体制が実際に整っているかを確認します。
4.個別支援計画に関する日付のズレ
個別支援計画では、完成した計画書だけでなく、作成までの手続も確認します。
主に関係するのは、次の資料です。
・アセスメント記録
・個別支援計画の原案
・担当者会議等の記録
・完成した個別支援計画
・説明・同意の記録
・計画の交付記録
・モニタリング記録
これらの日付を並べ、必要な手続が適切な順序で行われているかを確認します。
署名の日付がサービス提供開始日より後であることだけをもって、直ちに特定の日数分の減算が決まるとは限りません。
一方で、個別支援計画の作成、説明、同意、交付などの一連の業務を適切に行ったことが確認できなければ、個別支援計画未作成減算につながる可能性があります。
重要なのは、署名欄だけを見るのではなく、計画作成に関する一連の手続を確認することです。
一人の利用者と一日の運営を横断して確認する
書類同士のズレは、書類を種類別に確認するだけでは見つけにくいことがあります。
まず、一人の利用者を選び、次の資料を時系列で並べます。
・契約関係書類
・アセスメント
・個別支援計画
・会議記録
・説明・同意・交付の記録
・支援記録
・モニタリング
・請求や加算の根拠資料
次に、特定の一日を選び、勤務実績、利用者の出欠、支援記録、業務日誌、送迎記録、請求内容などを照合します。
この二つの確認を行うことで、書類単体では見つけにくい矛盾を把握しやすくなります。
不足が見つかっても、過去の記録を作り直さない
確認の結果、記録や手続の不足が見つかることがあります。
その場合でも、過去に実施していない手続を、実施済みであるかのように作成してはいけません。署名日を遡らせたり、事実と異なる記録を追加したりすることもできません。
現在確認できる事実を整理し、今後の運用を改善します。
過去の不備については、原因、影響範囲、現在行っている改善策を説明できる状態にすることが重要です。
まとめ
大阪市の就労継続支援B型事業所が確認したいのは、書類の有無だけではありません。
特に、次の4つのズレを確認します。
1.個別支援計画と日々の支援記録
2.勤務予定と実際の勤務実績
3.届出・規程と現在の運営
4.個別支援計画に関する手続と日付
書類同士を横断して確認し、実際の運営を第三者へ説明できる状態にしておくことが、運営指導への備えになります。
運営指導の通知が届く前に、書類と記録を確認しませんか
行政書士田中慶事務所では、大阪市内の就労継続支援B型事業所様を対象に、運営指導の通知が届く前の書類・記録リスク点検を行っています。
運営規程、重要事項説明書、勤務関係資料、個別支援計画、支援記録、モニタリング、研修・委員会・訓練記録などを横断して確認し、書類同士のズレや説明しにくい点を整理します。
過去に実施していない手続を、実施済みであるかのように作成することはできません。
現在確認できる事実をもとに、今後優先して改善すべき事項を整理します。
