「今いる職員を、就労選択支援員として配置できるのか」
「養成研修を受けるためには、5年以上の実務経験が必要なのか」
就労選択支援への参入や、既存事業所との一体的な運営を検討する場合、就労選択支援員の要件は早い段階で確認しておきたい事項です。
ただし、就労選択支援員については、
- 就労選択支援員として配置されるための要件
- 就労選択支援員養成研修を受講するための要件
- 令和9年度末までの経過措置
を分けて考える必要があります。
この記事では、2026年7月29日時点で厚生労働省が公表している告示、通知、研修案内をもとに、就労選択支援員になるための要件と、2026年度の養成研修について整理します。
就労選択支援員は何をする職員なのか
就労選択支援は、障がいのある本人が、就労先や働き方についてよりよい選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して支援する障害福祉サービスです。
本人の希望、就労能力、適性、生活面の状況などを整理し、その結果をもとに、本人や関係機関と今後の方向性を検討します。
就労選択支援員は、このアセスメントやケース会議、関係機関との連絡調整など、就労選択支援の中心となる業務を担います。就労選択支援は2025年10月から新たな障害福祉サービスとして実施されています。
就労選択支援員として配置されるための原則
就労選択支援員は、原則として、厚生労働大臣が定める就労選択支援員養成研修を修了した人であることが求められます。
養成研修では、次の内容を学びます。
- 就労選択支援の目的と役割
- 就労アセスメントの目的と手法
- ニーズアセスメントの手法
- アセスメントシートの具体的活用
- 関係機関との連携
- アセスメント情報の整理と活用
2026年度の研修は、オンデマンド講義6時間と対面演習5時間で構成されており、両方を受講する必要があります。
令和9年度末までは経過措置がある
就労選択支援員については、2028年3月31日まで経過措置が設けられています。
この期間中は、就労選択支援員養成研修をまだ修了していなくても、次のいずれかを修了している人は、就労選択支援員とみなされます。
- 障害者の就労支援に関する基礎的研修
- 基礎的研修と同等以上とされる研修
基礎的研修と同等以上の研修として、厚生労働省の通知では、主に次の研修が示されています。
- 就業支援基礎研修(就労支援員対応型)
- 訪問型職場適応援助者養成研修
- サービス管理責任者研修専門コース別研修の就労支援コース
- 相談支援従事者研修専門コース別研修の就労支援コース
したがって、2028年3月31日までは、これらの研修を修了している人について、養成研修を修了する前でも就労選択支援員として配置できる可能性があります。
ただし、これは「養成研修を受けなくてよい」という意味ではありません。
経過措置終了後も引き続き就労選択支援員として配置するためには、経過措置期間中に養成研修を修了しておく必要があります。
養成研修を受講するための要件
就労選択支援員養成研修を受講するためには、原則として、次のいずれかを満たす必要があります。
- 障害者の就労支援に関する基礎的研修を修了している
- 障害者の就労支援分野における勤務実績が通算5年以上ある
また、2028年3月31日までは、基礎的研修と同等以上の研修を修了している人も、養成研修を受講できます。
ここで注意したいのは、5年以上の勤務実績は、就労選択支援員として直ちに配置されるための要件ではなく、養成研修の受講要件の一つだという点です。
5年以上の実務経験があっても、それだけで経過措置終了後の就労選択支援員になれるわけではありません。原則として、養成研修の修了が必要です。
「障害者の就労支援分野の勤務実績」に含まれる職種
厚生労働省の通知では、5年以上の勤務実績として認められる職種・勤務先について、次のように示されています。
就労系障害福祉サービス事業所
次の事業所における勤務実績が対象となります。
- 就労移行支援事業所
- 就労継続支援A型事業所
- 就労継続支援B型事業所
- 就労定着支援事業所
対象職種は、次のとおりです。
- 管理者
- サービス管理責任者
- 職業指導員
- 生活支援員
- 就労支援員
- 就労定着支援員
障害者職業センター
- 障害者職業カウンセラー
- 職場適応援助者
※企業在籍型を除く
障害者就業・生活支援センター
- 就業支援担当者
- 生活支援担当者
障害者職業能力開発に関する機関
障害者職業能力開発助成金による能力開発訓練事業を行う機関の就職支援責任者や訓練担当者なども対象として示されています。
複数の事業所や機関で勤務していた場合は、それぞれの対象期間を通算して5年以上となるかを確認します。
ただし、個別の経歴が受講要件に該当するか判断しにくい場合は、研修運営事務局ではなく、研修の主催元または事業所所在地を管轄する自治体の障害福祉担当部署へ確認することが案内されています。
2026年度の養成研修は東京・大阪で計20回
2026年度の就労選択支援員養成研修は、次の規模で実施されます。
- 東京会場:10回
- 大阪会場:10回
- 合計:20回
- 各回の定員:100人予定
- 受講料:無料
交通費、宿泊費、通信費などは受講者の負担です。
対面演習はオンラインではなく、東京会場または大阪会場で受講する必要があります。どちらの会場に申し込んでも差し支えありません。
2026年7月29日時点の今後の研修日程
東京会場
第5回・第6回
- 申込期間:2026年8月17日10時から8月31日17時まで
- オンデマンド視聴期間:2026年9月9日から10月2日まで
- 対面演習:2026年10月9日または10月10日
- 会場:戸山サンライズ
第7回・第8回
- 申込期間:2026年11月2日10時から11月16日17時まで
- オンデマンド視聴期間:2026年11月24日から12月14日まで
- 対面演習:2026年12月21日または12月22日
- 会場:戸山サンライズ
第9回・第10回
- 申込期間:2026年12月24日10時から2027年1月12日17時まで
- オンデマンド視聴期間:2027年1月18日から2月5日まで
- 対面演習:2027年2月15日または2月16日
- 会場:戸山サンライズ
大阪会場
第5回・第6回
- 申込期間:2026年9月9日10時から9月25日17時まで
- オンデマンド視聴期間:2026年10月2日から10月23日まで
- 対面演習:2026年10月30日または10月31日
- 会場:KITENA新大阪
第7回・第8回
- 申込期間:2026年11月6日10時から11月20日17時まで
- オンデマンド視聴期間:2026年11月30日から12月18日まで
- 対面演習:2026年12月25日または12月26日
- 会場:KITENA新大阪
第9回・第10回
- 申込期間:2027年1月6日10時から1月20日17時まで
- オンデマンド視聴期間:2027年1月28日から2月18日まで
- 対面演習:2027年2月26日または2月27日
- 会場:KITENA新大阪
大阪会場の第3回・第4回については、2026年7月27日17時に申込みが締め切られています。次に申し込める大阪開催は、9月9日受付開始の第5回・第6回です。
申込みは先着順ではない
2026年度の養成研修は、申込順に受講者が決まる先着方式ではありません。
申込期間終了後、原則として6営業日以内に、受講可否がメールで通知されます。
受講不可となった場合は、別の日程へ改めて申し込む必要があります。申込開始直後に申し込んだからといって、必ず受講できるわけではありません。
養成研修を修了するための条件
研修は、申込みをして対面演習へ参加するだけでは修了できません。
主な修了条件は次のとおりです。
- 指定期間内にオンデマンド講義をすべて視聴する
- オンデマンド講義の確認テストですべて満点を取る
- 対面演習をすべて受講する
- 対面演習後2週間以内にアンケートへ回答する
オンデマンド講義の視聴が確認できなければ、対面演習を受講できません。
また、対面演習では、遅刻、早退、途中離席があると未修了となり、再度申込みからやり直す必要があります。
就労選択支援員は他の職種と兼務できるのか
就労選択支援員は、原則として就労選択支援事業所の職務に専従する職員です。
ただし、利用者への支援に支障がない場合は、兼務が認められることがあります。
厚生労働省の通知では、一体的に運営する就労移行支援事業所などの常勤の職業指導員等について、サービス提供に支障がない場合は、就労選択支援員として従事できるとされています。
その場合、就労選択支援員として勤務した時間は、就労選択支援員の常勤換算上の勤務時間に算入できます。
ただし、兼務が認められるからといって、同じ勤務時間を複数の職種の配置時間として重複して算入できるとは限りません。
実際に兼務体制を組む場合は、次の事項を確認する必要があります。
- それぞれのサービスの人員配置基準
- 職員ごとの勤務時間
- 就労選択支援員として従事する時間
- 兼務元の職種に求められる常勤・専従要件
- 就労選択支援の利用者数と業務量
- 利用者への支援に支障がない体制か
就労選択支援員の資格要件を満たすことと、実際の勤務体制が人員基準を満たすことは、別々に確認しなければなりません。
就労選択支援員の配置数
就労選択支援員は、常勤換算方法により、利用者数を15で除した数以上を配置する必要があります。
利用者数は原則として前年度の平均値を用い、新規指定の場合は推定数を用います。
計算結果が1人未満となる場合も、1人を常勤で配置することまで求められているわけではありません。ただし、利用者に適切な就労選択支援を提供できる体制を確保する必要があります。
事業所が今から確認しておきたいこと
就労選択支援員の候補者がいる場合は、次の事項を職員ごとに整理します。
- 現在までの勤務先
- 各勤務先での職種
- 就労支援分野での勤務期間
- 基礎的研修の修了状況
- 同等以上の研修の修了状況
- 各研修の修了証
- 養成研修の受講状況
- 2028年4月以降も配置する予定があるか
- 他職種と兼務する場合の勤務時間
特に経過措置を利用して配置する場合は、どの研修を根拠として就労選択支援員とみなしているのか、修了証とともに説明できる状態にしておく必要があります。
また、養成研修への申込みが必ず受講につながるわけではないため、一度の申込みだけを前提とした配置計画は避けた方が安全です。
当事者として考える就労選択支援員の役割
就労選択支援員には、制度やアセスメントに関する知識が求められます。
しかし、本人にとって就労選択支援は、単に能力を判定される場ではありません。
「働きたい気持ちはあるけれど、体調が続くか不安」
「A型とB型のどちらが合っているのか分からない」
「支援者に自分の希望をうまく伝えられない」
そのような迷いを抱えながら利用する人もいます。
本人の一部分だけを見て、最初から特定の働き方へ当てはめるのではなく、本人の希望、不安、得意なこと、必要な配慮を一緒に整理することが、就労選択支援員の大切な役割です。
研修の修了は配置要件ですが、本人が安心して話せる関係をつくることも、就労選択支援を実効性のあるものにするための土台になります。
まとめ
就労選択支援員は、原則として、就労選択支援員養成研修を修了した人を配置します。
ただし、2028年3月31日までは、基礎的研修または同等以上の研修を修了した人を就労選択支援員とみなす経過措置があります。
養成研修の受講要件は、原則として次のいずれかです。
- 基礎的研修を修了している
- 障害者の就労支援分野で通算5年以上の勤務実績がある
2026年度の養成研修は、東京会場10回、大阪会場10回の計20回が予定されています。
事業所としては、候補者の職歴、研修歴、修了証、配置後の兼務体制を整理したうえで、経過措置の終了時期から逆算して養成研修の受講を進めることが重要です。
