2026年12月25日に、こども性暴力防止法が施行されます。
大阪市内の児童発達支援・放課後等デイサービス等については、こども性暴力防止法関連システムへの一括登録に向けて、GビズIDを含む事業者情報の報告期限が2026年7月15日とされていました。
しかし、事業者情報の報告は、法施行に向けた準備の入口にすぎません。
事業所では施行までに、対象職員の整理、職員への説明、研修、相談・報告体制、事案発生時の対応、犯罪事実確認を行う体制、情報管理などを整える必要があります。
この記事では、児童発達支援・放課後等デイサービスが、2026年8月から12月25日の施行までに進めたい準備を時系列で整理します。
大阪市への報告が済んでいるかを最初に確認する
まず、大阪市への事業者情報の報告が完了しているかを確認します。
大阪市は、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援、障がい児入所施設を対象として、GビズIDを含む事業者情報の報告を求めていました。
期限までに報告がない場合、法施行日からシステムを利用できないおそれがあると案内されています。
報告したつもりでも、次のような点に問題がないか確認しておきましょう。
・対象となるすべての事業所を報告したか
・GビズIDのアカウント種別に誤りがないか
・法人番号、事業所番号等に誤りがないか
・複数事業所の報告漏れがないか
・オンライン申請の完了画面や受付通知を保存しているか
・法人内で報告結果を共有しているか
期限までに報告できていない場合や、報告内容に誤りがある可能性がある場合は、自己判断で放置せず、大阪市の担当部署へ速やかに確認する必要があります。
施行までの準備は4段階で考える
2026年8月から施行日までの準備は、大きく次の4段階に分けると整理しやすくなります。
第1段階|8月:現在地と対象職員を確認する
8月は、いきなり規程や様式を作るのではなく、現在の事業所に何があり、何が不足しているのかを確認する時期です。
主に次の作業を行います。
・大阪市への事業者情報報告の完了確認
・法人内の対象事業所の確認
・犯罪事実確認等の対象となる職員の洗い出し
・既存の規程、研修、相談窓口、報告ルールの確認
・現在の採用手続や職員への説明方法の確認
・情報管理の責任者候補の確認
・不足している対応の一覧化
・施行準備を担当する者の決定
この段階で重要なのが、対象職員の整理です。
児童発達支援・放課後等デイサービスでは、管理者、児童発達支援管理責任者、児童指導員、保育士、機能訓練担当職員、看護職員など、職種全体として対象になるものがあります。
一方、送迎担当者、事務職員、調理員などは、実際の業務内容によって個別判断が必要になる場合があります。
職種名だけで判断せず、こどもへの支配性、継続性、閉鎖性がある業務かを確認します。
対象職員一覧には、氏名、職種、担当業務、こどもと接する場面、一対一になる可能性、対象・対象外の判断、判断理由などを記録しておくとよいでしょう。
第2段階|9月から10月:ルールと担当者を決める
対象職員と現在地を整理した後は、事業所内のルールを具体化します。
この時期に確認したいのは、主に次の内容です。
・職員からの相談・報告ルール
・相談や報告を受けた後の対応ルール
・相談窓口と緊急連絡先
・管理者本人が関係者となった場合の別ルート
・こどもの安全を確保する方法
・行政、警察、児童相談所等への連絡経路
・写真撮影、SNS、私的な連絡等に関するルール
・一対一で支援する場面のルール
・送迎中の安全管理
・情報管理責任者と担当者
・犯罪事実確認情報を閲覧できる者
・システム外で情報を保存するかどうか
こども家庭庁からは、報告ルール、対応ルール、対応フロー、保護者・児童等向け周知資料、情報管理規程、権限設定表、取扱記録などのひな型や参考例が公表されています。
ただし、ひな型をそのまま保存するだけでは、事業所内のルールとして機能しません。
事業所の規模、法人本部との関係、営業時間、送迎体制、職員配置などに合わせて、担当者名、報告先、連絡方法、記録方法を具体化します。
既存の規程との重複や矛盾を確認する
児発・放デイには、既に次のような規程や体制があります。
・虐待防止
・身体拘束等の適正化
・事故発生時の対応
・苦情解決
・個人情報保護
・安全計画
・緊急時対応
・就業規則、服務規律
こども性暴力防止法への対応として、新しい規程や様式を増やす前に、既存の仕組みへ追加できる部分を確認します。
たとえば、虐待防止規程と新たな報告ルールで相談先が異なると、職員がどこへ報告すべきか分からなくなる可能性があります。
事故対応フローと性暴力に関する対応フローで、責任者や緊急連絡先が食い違うことも避けなければなりません。
書類の数を増やすことではなく、現場で迷わず使える一つの仕組みに整えることが重要です。
第3段階|10月から11月:職員研修と周知を行う
ルールを整えた後は、対象職員への研修と周知を行います。
研修では、制度の概要だけでなく、少なくとも次の内容を扱います。
・児童対象性暴力等に該当する行為
・こどもとの適切な関わり方
・不適切な行為を防ぐためのルール
・児童対象性暴力等の兆候や変化
・こどもから相談を受けた場合の対応
・疑いを把握した場合の報告方法
・事案発生時に行ってはならない対応
・犯罪事実確認の基本的な仕組み
・犯罪事実確認情報の取扱い
・自事業所の相談窓口と報告先
こども家庭庁からは、従事者向けの研修資料、動画、演習資料、確認テストが公表されています。
これらを利用しながら、自事業所の支援場面やルールを補足します。
研修を実施した場合は、実施日時、内容、使用教材、講師、参加者、欠席者、補講の実施状況などを記録します。
非常勤職員や欠席者が研修を受けないままにならないよう、補講や動画視聴などの方法も決めておきます。
保護者やこどもへの周知も準備する
事業所の取組や相談窓口について、保護者やこどもへ伝える資料も準備します。
主に次の内容を整理します。
・事業所が行う防止措置
・相談できる内容
・相談窓口と連絡方法
・緊急時の連絡先
・相談者の秘密に配慮すること
・相談を理由とした不利益な取扱いをしないこと
・外部の相談機関
こどもの年齢や障がい特性によっては、文章だけでは内容を理解しにくい場合があります。
ふりがな、やさしい言葉、イラスト、写真、読み上げなど、事業所を利用するこどもに伝わる方法を検討します。
第4段階|11月から12月上旬:犯罪事実確認と情報管理の準備を固める
施行が近づいた段階では、犯罪事実確認を実際に行う担当体制と、情報管理方法を確定します。
主に次の事項を決めます。
・犯罪事実確認の責任者
・システムを操作する担当者
・犯罪事実確認書を閲覧する者
・職員へ手続を説明する者
・確認結果を踏まえた措置を検討する者
・責任者不在時の代行者
・担当者の異動・退職時の引継ぎ方法
・システム外で情報を保存するか
・紙・電子データの保存場所
・保存期間と廃棄方法
・漏えい等が疑われる場合の報告方法
情報管理規程は、犯罪事実確認書を閲覧する人数と、システム外で犯罪事実確認記録等を作成・保存するかどうかに応じて選びます。
必要性を検討せずに、確認結果を印刷したり、担当者のパソコンへ保存したりすることは避けなければなりません。
必要な情報だけを、必要な者が、必要な期間、定められた方法で取り扱う体制をつくります。
就業規則や採用関係書類も確認する
法施行後は、新たに対象業務へ従事させる職員の採用手続にも、犯罪事実確認が関係します。
そのため、次の書類や手続を確認します。
・募集要項、求人票
・応募者への説明
・誓約書
・内定通知書
・労働条件通知書、雇用契約書
・就業規則
・服務規律
・懲戒事由
・配置変更に関する手続
こども家庭庁からは、募集要項・求人票、誓約書・内定通知書、就業規則の参考例が公表されています。
ただし、国の参考例をそのまま追加すればよいわけではありません。
既存の就業規則や採用手続との整合性を確認し、必要に応じて社会保険労務士へ相談します。
個別の職員に対する内定取消し、懲戒、配置転換、解雇などの法的判断が必要な場合は、弁護士への相談が必要です。
12月上旬から施行直前:動作確認を行う
書類やルールを作成した後は、実際にそのとおり動けるかを確認します。
施行直前には、次のような最終確認を行います。
・対象職員一覧が最新になっているか
・全対象職員への説明が完了しているか
・研修の未受講者がいないか
・相談窓口と報告先が職員へ周知されているか
・責任者不在時の代行者が決まっているか
・緊急連絡先が最新になっているか
・情報管理規程と実際の保存方法が一致しているか
・システム利用担当者が必要な操作を理解しているか
・権限設定に不要な担当者が含まれていないか
・採用時の説明資料や書類が整っているか
・保護者やこどもへの周知方法が決まっているか
報告を受けた場面や情報漏えいが疑われる場面を想定し、担当者がどの順番で動くかを確認する方法も考えられます。
施行後も継続して行うこと
こども性暴力防止法への対応は、2026年12月25日に完了するものではありません。
施行後も、次の対応を継続します。
・新規採用者等に対する犯罪事実確認
・必要な時期の再確認
・対象職員の異動や業務変更への対応
・新任職員への研修
・既存職員への継続的な研修
・相談窓口や報告ルールの周知
・情報管理状況の確認
・担当者や権限の見直し
・事案発生時の記録と再発防止
・法令、ガイドライン、Q&A等の更新確認
作成した規程や様式も、職員体制や事業所の運用が変わった場合には見直す必要があります。
施行までの確認表
施行までの主な作業を整理すると、次のようになります。
8月
・大阪市への報告状況を確認する
・対象事業所と対象職員を整理する
・既存の規程、研修、相談体制を確認する
・不足する対応を一覧化する
・準備責任者と担当者を決める
9月から10月
・報告ルールと対応ルールを整える
・相談窓口と緊急連絡先を決める
・防止措置や支援場面のルールを整理する
・情報管理の運用方針を決める
・既存規程との重複や矛盾を確認する
10月から11月
・職員研修を実施する
・欠席者への補講を行う
・職員向け周知資料を配布する
・保護者・こども向け周知資料を準備する
・研修記録を整える
11月から12月上旬
・犯罪事実確認の担当体制を確定する
・情報管理規程を整える
・権限設定表を作成する
・取扱記録の運用方法を決める
・採用書類や就業規則を確認する
施行直前
・対象職員一覧を更新する
・研修未受講者がいないか確認する
・相談・報告ルートを再確認する
・担当者と権限設定を再確認する
・実際に動ける体制になっているか確認する
まとめ
児童発達支援・放課後等デイサービスでは、2026年12月25日の施行までに、次の順序で準備を進めると整理しやすくなります。
1.大阪市への報告状況を確認する
2.対象職員と現在の体制を整理する
3.不足するルールや書類を整える
4.職員研修と周知を行う
5.情報管理と犯罪事実確認の担当体制を確定する
6.施行直前に運用できる状態か確認する
重要なのは、国のひな型をすべてダウンロードして保存することではありません。
誰が何を担当し、相談や事案があった場合にどのように動き、犯罪事実確認情報をどのように管理するのかを、事業所内で共有できる状態にする必要があります。
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行政書士田中慶事務所では、大阪市内の児童発達支援・放課後等デイサービス等の事業所様を対象に、こども性暴力防止法の施行に向けた準備状況を整理しています。
対象職員、相談・報告体制、職員研修、保護者・こどもへの周知、情報管理規程、権限設定表、取扱記録などについて、現在の事業所の体制を確認したうえで、施行までに必要な対応を一緒に整理します。
就業規則や雇用関係書類の作成・変更、個別の労務・法律判断が必要な場合は、社会保険労務士や弁護士等の専門家と連携して対応します。
