就労継続支援B型事業所で工賃向上に取り組む際、検討される加算の一つが「目標工賃達成指導員配置加算」です。
この加算は、目標工賃達成指導員を配置し、工賃向上へ取り組むための人員体制を手厚くした事業所を評価するものです。
ただし、職員を一人配置すれば自動的に算定できるわけではありません。
職業指導員・生活支援員を含めた常勤換算数、算定している基本報酬、工賃向上計画、届出などを確認する必要があります。
この記事では、目標工賃達成指導員の資格要件、兼務、人員配置基準を整理します。
目標工賃達成指導員とは
目標工賃達成指導員は、就労継続支援B型事業所が作成する工賃向上計画に基づき、工賃目標の達成に向けて取り組む職員です。
単に利用者の作業を見守るだけではなく、例えば次のような役割を担います。
- 生産活動の売上や原価の確認
- 新しい受注先・販売先の開拓
- 作業工程や役割分担の見直し
- 利用者の特性に合った作業の検討
- 工賃向上計画の進捗確認
- 管理者、サービス管理責任者、現場職員との連携
具体的な業務内容は、事業所の生産活動や工賃向上計画によって異なります。
資格や実務経験は必要?
目標工賃達成指導員について、特定の国家資格や研修修了要件は原則として定められていません。
そのため、社会福祉士、介護福祉士などの資格がなければ配置できない職種ではありません。
一方で、名前だけを配置表に記載すればよいわけではありません。
実際に工賃向上計画へ関与し、売上、原価、受注、作業工程などを確認しながら、工賃向上へ取り組める職員を配置する必要があります。
目標工賃達成指導員配置加算の主な要件
算定に当たっては、少なくとも次の要件を確認します。
1.対象となる基本報酬を算定していること
目標工賃達成指導員配置加算は、原則として就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)を算定する事業所が対象です。
自事業所がどの基本報酬区分を算定しているか、最初に確認します。
2.目標工賃達成指導員を常勤換算で1人以上配置すること
目標工賃達成指導員は、常勤換算方法で1人以上必要です。
「常勤職員を必ず一人採用する」という意味ではありません。
複数の非常勤職員の勤務時間を合計して常勤換算1人以上となる場合や、既存職員が勤務時間を区分して担当する場合も考えられます。
3.職業指導員・生活支援員が6対1以上であること
職業指導員と生活支援員の常勤換算数の合計が、利用者数に対して6対1以上となっている必要があります。
目標工賃達成指導員を配置したことで、通常必要な職業指導員・生活支援員が不足してはなりません。
4.3職種の合計が5対1以上であること
次の3職種の常勤換算数を合計して、利用者数に対して5対1以上の人員体制を確保します。
- 目標工賃達成指導員
- 職業指導員
- 生活支援員
例えば、前年度の平均利用者数が20人であれば、3職種の合計で常勤換算4.0人以上が一つの目安になります。
ただし、実際の算定では平均利用者数、各職員の勤務時間、休職・欠勤、他職種との兼務状況まで確認する必要があります。
5.工賃向上計画を作成すること
事業所は、都道府県の工賃向上計画を踏まえて、自事業所の工賃向上計画を作成します。
計画には、単に「工賃を上げる」と書くのではなく、例えば次の内容を整理します。
- 現在の平均工賃
- 目標とする工賃額
- 現在の生産活動と課題
- 売上・原価・利益の状況
- 新規受注や販路開拓の方針
- 作業工程の改善
- 実施時期と担当者
- 計画の評価・見直し方法
計画を作るだけでなく、実際に計画に沿った取組を行い、進捗を確認することが重要です。
他の職種と兼務できる?
兼務が一律に禁止されているわけではありません。
ただし、同じ勤務時間を、
- 職業指導員
- 生活支援員
- 目標工賃達成指導員
として重複して常勤換算へ算入することはできません。
例えば、1日8時間勤務する職員が、午前4時間は職業指導員、午後4時間は目標工賃達成指導員として勤務する場合、それぞれの勤務時間を分けて記録します。
そのうえで、各時間帯において必要な人員配置を満たしているか確認します。
勤務形態一覧表だけでなく、雇用契約書、辞令、職務分担表、勤務実績なども整合させておくことが大切です。
目標工賃達成加算との違い
「目標工賃達成指導員配置加算」と「目標工賃達成加算」は別の加算です。
目標工賃達成指導員配置加算は、工賃向上へ取り組むための人員配置体制を評価します。
一方、目標工賃達成加算は、所定の方法で設定した工賃目標を実際に達成した場合に評価される加算です。
名前が似ているため、届出時にはどちらを申請するのか、要件を分けて確認する必要があります。
算定前に確認したい書類
届出前には、少なくとも次の書類を確認します。
- 前年度の平均利用者数
- 勤務形態一覧表
- 職員の雇用契約書・辞令
- 各職員の勤務時間
- 職務分担表
- 工賃向上計画
- 体制等状況一覧表
- 基本報酬区分の届出
- 前年度の工賃実績
- 生産活動収支の資料
加算届の数字だけを合わせるのではなく、実際の職員配置と工賃向上への取組が説明できる状態にしておく必要があります。
加算額だけでなく人件費も確認する
目標工賃達成指導員配置加算を算定すると、利用定員に応じた単位数が利用者一人・一日当たり加算されます。
一方で、常勤換算1人以上の人員を追加的に確保するため、人件費も発生します。
利用定員、実利用者数、開所日数、人件費、既存職員の配置状況によっては、加算額より人件費の方が大きくなることもあります。
算定できるかだけでなく、実際に配置を維持できるか、工賃向上の取組へつながるかまで検討することが重要です。
まとめ
目標工賃達成指導員配置加算を検討する際は、次の点を確認します。
- 対象となるB型サービス費を算定しているか
- 目標工賃達成指導員を常勤換算1人以上配置できるか
- 職業指導員・生活支援員が6対1以上となっているか
- 3職種の合計が5対1以上となっているか
- 工賃向上計画を作成し、実際に取り組めるか
特定の資格が不要だからといって、簡単に算定できる加算ではありません。
現在の職員配置、勤務時間、基本報酬、工賃向上計画を一体として確認し、指定権者への届出内容と実態を一致させることが大切です。
