特定障害者扶養信託とは?|障がいのあるご家族の「将来の安心」のための制度
特定障害者扶養信託とは、障がいのあるご家族の将来の生活を経済的に支えるために、信託制度を活用する国の支援策です。
この制度を使えば、親やきょうだいなどが贈与する財産のうち、最大6,000万円まで贈与税が非課税になります。
信託とは「財産を信頼できる第三者(信託銀行など)に託し、定められた目的のために管理・運用してもらう仕組み」のこと。
この制度を使うことで、障がいのある方が将来にわたって安心して生活できる仕組みを準備できます。
制度の仕組みと特徴|どんな財産が非課税になるの?
贈与税が非課税になるのは「6,000万円まで」
この制度では、一生に一度、最大6,000万円までの金銭などを障がいのあるご家族のために信託することで、贈与税がかかりません。
例えば…
- お子さんが重度の障がいをお持ちの場合
- ごきょうだいが将来的に面倒を見てくれる保証がない場合
- 親御さんご自身の老後を見据えて備えたいと考えている場合
このようなケースで、生前にまとまった財産を信託することができるのが大きな特徴です。
信託財産はどう使われるの?
信託した財産は、障がいのある方のための
- 生活費
- 医療費
- 住居費
- その他福祉に必要な支出
などに充てられます。
※本人が亡くなった後の残額の行き先も、あらかじめ契約で指定できます。
対象となる「特定障がい者」とは?|制度の利用条件
この制度を利用するには、受益者となる方が「特定障がい者」に該当する必要があります。
具体的には、以下のいずれかに当てはまる方です(※一部抜粋):
特定障がい者の主な要件(2024年時点)
- 身体障害者手帳で1級または2級の方
- 療育手帳でA判定(重度)の方
- 精神障害者保健福祉手帳で1級の方
- 特別児童扶養手当1級の対象者
- その他、常時特別な介護が必要と認められる重度の障がい者
障がいの程度が中〜軽度の場合、この制度は利用できません。
制度の対象となるかどうか不安な場合は、専門家(行政書士、信託銀行、税理士など)に確認するのがおすすめです。
どんな人が使っている?|活用事例とニーズ
ケース①|知的障がいのある息子さんの将来に備えて
70代のご夫婦が、将来ひとりになった息子さんの生活に不安を感じ、特定障害者扶養信託を活用。
退職金の一部から3,000万円を信託し、生活費や福祉サービスの支払いに使われるよう契約。
「親なきあとのことを考えると、この制度に本当に助けられた」と話されています。
ケース②|重度身体障がいのある姉の生活を、弟が信託で支援
親亡き後、障がいのある姉の生活を支えるため、弟がまとまった資金を信託。
毎月一定額が生活費として支払われる仕組みになっており、ご本人の意思にかかわらず生活が安定しています。
制度を利用する際の注意点
- 使えるのは信託契約を結んだ時点で一度限り
- 6,000万円を超える部分には贈与税が課税される
- 信託契約は信託銀行などの金融機関との契約が必要
- 手数料や管理費などが発生する場合がある
- 受益者(障がい者本人)の生活状況の変化により、柔軟な見直しが必要なことも
まとめ|特定障害者扶養信託は「家族の愛情を形にする制度」
障がいのあるご家族の将来の生活に、経済的な安心を用意できる制度。
それが特定障害者扶養信託です。
「まだ早いかも」と思っていても、制度の内容だけでも知っておくことが、将来の選択肢になります。
将来に備えるために、行政書士や信託銀行などの専門家に早めに相談することが安心への第一歩です。
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