はじめに:「きょうだい児」が抱える見えない不安
障がいのあるお子さんを育てる中で、もう一人の子ども――いわゆる「きょうだい児」――のことを考えるとき、不安を抱える保護者の方は少なくありません。
「自分たちが亡くなったあと、あの子にすべての責任がのしかかるのではないか…」
「将来の結婚や仕事にも影響が出るのでは…」
そうした不安を口にできず、一人で抱えている親御さんは多くいらっしゃいます。
この記事では、きょうだい児が抱えがちな心の葛藤と、法的・制度的な備えによってその負担を軽減する方法について、行政書士(開業準備中)の立場から解説します。
よくあるお悩みと声
親亡き後、自分が支えなければならない?
きょうだい児の多くが、幼いころから“自分は障がいのある兄弟姉妹を支えなければならない”という意識を自然と身につけています。
「大人になったら、自分が面倒を見るんだろうな…」
「親がいなくなったら、どうなるんだろう…」
こうした無言のプレッシャーを感じながら成長し、それが進路選択や自立に影響することもあります。
就職・結婚に影響するかもしれないという心配
自分の人生においても、兄弟姉妹の存在が“足かせ”になるのではと感じることもあります。
- 就職時に「障がいのあるきょうだいがいる」ことを理由に内定を辞退した
- 結婚を考えても、相手やその家族から反対された
- 経済的に支える必要があると思い、夢を諦めた
このような声は決して珍しくありません。本人も親も、誰かが悪いわけではないことを分かっていても、心にしこりが残るケースが多いのです。
親に「任せたい」と言い出せない葛藤
親御さんにとって「何とかなるだろう」と思っている気持ちと、きょうだい側が「本当は負担を担いたくない」と思っている気持ちにはギャップがあります。
- 「お兄ちゃんに将来お願いね」と軽く言われたが、本音はつらかった
- 親に「自分には無理」と言えなかった
- 心の距離ができてしまい、家族関係にヒビが入った
こうした葛藤を避けるためにも、親としてできる備えが必要です。
法的な備えで不安を軽くする方法
成年後見制度・任意後見制度の活用
将来、障がいのあるごきょうだいが一人で判断ができない状況になる場合には、「成年後見制度」を利用することで、家庭外の専門職(司法書士や行政書士など)に後見人を任せることができます。
きょうだいが「自分が後見人にならないといけない」と思い込まずに済む選択肢を残しておくことができます。
任意後見制度を使えば、親が生前に「将来この人に支援をお願いしたい」と指名しておくことも可能です。
家族信託による財産管理と責任の分離
「お金の管理を誰がするのか」というのも、大きな不安のひとつです。
家族信託を利用すれば、障がいのあるお子さんの生活資金をあらかじめ信託し、その管理を信頼できる親族に託すことができます。
これにより、きょうだいが“自分の財布から援助しなければならない”というプレッシャーを避けることができ、生活の安定性も確保できます。
遺言書で「誰が何を担うか」を明確に
遺言書には、財産の分け方だけでなく「このように支援してほしい」という親としての希望も記すことができます。
たとえば:
- ○○の預金は障がいのあるAの生活費に充ててほしい
- ○○の不動産はAの住まいとして残し、管理をBにお願いしたい
- Aの生活支援については、市の相談支援事業所と連携してほしい
明文化された希望は、きょうだいにとって「親の考えが分かった」という安心につながります。
心のケアと兄弟姉妹の関係づくり
きょうだい児支援(ピアサポートなど)の存在
最近では「きょうだい児支援」を行うNPOや自治体が増えており、同じ境遇の仲間と話せる場が提供されています。
- きょうだいの思いを語り合える「つどい」
- 保護者向けの情報共有会
- カウンセリングや心理相談の紹介
親だけで抱え込まず、外部の力を借りることも有効です。
小さいうちからの対話と感謝の伝え方
「ありがとう」や「無理しなくていいよ」という言葉は、きょうだい児にとって大きな支えになります。
また、小さいうちから「もし困ったら、こうしてね」と話しておくことで、将来の負担を一人で背負い込まないための“地ならし”ができます。
「責任を背負わない」という選択肢を残す
親としては「将来お願いしたい」という気持ちがあるかもしれませんが、きょうだいにはきょうだいの人生があります。
だからこそ、「自分が支えなくても生きていける仕組み」を整えておくことが、結果的に家族の絆を守ることにつながります。
行政書士ができること
行政書士は、家族の思いを「法的なかたち」にするお手伝いができます。
- 遺言書の作成
- 任意後見契約の支援
- 家族信託の設計
- 成年後見制度の申立て支援
- きょうだい間での合意形成のサポート
「うちの家族には、どの制度が合うのか?」といったご相談から、「実際の手続きを代わってほしい」といったご依頼まで幅広く対応可能です。
まとめ:将来の不安を“見える形”で減らすということ
きょうだいに負担をかけたくない――その気持ちを、ただの思いやりで終わらせず、制度や書類で“見える形”にしておくことで、不安は大きく減らすことができます。
「自分に何ができるかまだわからないけれど、準備しておきたい」
そんなお気持ちをお持ちの方は、まずは行政書士にご相談ください。ご家族それぞれの立場を尊重しながら、最善の選択肢をご一緒に考えていきましょう。
「行政書士田中慶事務所(開設申請準備中)ホームページはこちら」