※この記事は行政書士事務所の開業準備中に執筆し、2026年8月時点の制度・実務に合わせて内容を確認・更新しています。
現在は大阪市中央区で行政書士事務所を開業し、障がい福祉事業所の運営支援・開設支援を行っています。
株式会社は一人でも設立できる
株式会社は、一人でも設立できます。
一人の発起人がすべての株式を引き受け、その人が一人で取締役に就任する形でも、株式会社を設立することが可能です。
設立時に複数の株主や取締役を置かなければならないわけではなく、取締役会を設置しない株式会社であれば、取締役一人から始められます。
ただし、一人で設立できることと、すべての手続を簡単に済ませられることは別です。
会社の基本事項、定款、資本金、登記書類、設立後の税務・社会保険手続などを順番に整理する必要があります。
株式会社を設立するまでの流れ
1.会社の基本事項を決める
最初に、会社の基本的な内容を決めます。
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金の額
- 発起人
- 設立時に発行する株式数
- 1株当たりの払込金額
- 役員構成
- 事業年度
- 公告方法
障がい福祉事業所の開設を予定している場合は、定款の事業目的に、予定している障害福祉サービスや児童福祉サービスを適切に記載する必要があります。
法人を設立した後で事業目的を追加すると、定款変更や変更登記が必要になる場合があります。指定申請で行う予定の事業を、法人設立前に整理しておくことが大切です。
2.同一商号や本店所在地を確認する
現在は、同じ市区町村内に同じ商号の会社が存在することだけを理由として、会社を設立できないわけではありません。
ただし、同一の所在場所に同一の商号で登記することはできません。また、他社と誤認される名称や、他人の商標・著名な名称を無断で使用すると、紛争になる可能性があります。
会社名を決める際は、法務局の商号調査だけでなく、インターネット検索や商標の確認も行っておくと安心です。
3.会社の印鑑を準備する
会社設立登記では、会社代表者印の届出は任意となっています。
ただし、金融機関との取引や契約実務などで会社印を使用する場面はあるため、代表者印、銀行印、角印などを準備する会社も多くあります。
実際にどの印鑑が必要になるかは、会社の運用方法や取引先、金融機関の取扱いによって異なります。
4.定款を作成する
定款とは、会社の基本的なルールを定めた書類です。
株式会社の定款には、少なくとも次の事項を記載します。
- 事業目的
- 商号
- 本店所在地
- 設立時に出資される財産の価額または最低額
- 発起人の氏名または名称と住所
本店所在地は、定款に具体的な番地まで記載する方法と、市区町村までを記載する方法があります。
具体的な住所まで定款に記載すると、同じ市区町村内で移転した場合でも定款変更が必要になります。市区町村までの記載にとどめる場合は、具体的な住所を発起人の決定書などで定めます。
5.公証人による定款認証を受ける
株式会社を設立する場合、作成した定款について、公証人の認証を受ける必要があります。
紙の定款には、原則として収入印紙が必要です。一方、電子定款には紙の文書に対する収入印紙は必要ありません。
ただし、電子定款であっても、公証人の定款認証手数料や定款の謄本などに関する費用は必要です。
また、電子定款を自分で作成する場合は、電子署名を行うための環境などを準備しなければなりません。
6.資本金を払い込む
定款認証後、発起人が資本金を払い込みます。
会社設立前には会社名義の銀行口座が存在しないため、通常は発起人個人の銀行口座へ払い込みます。
払込みをしたことが分かる通帳の写しや取引明細などを使用して、払込みがあったことを証明する書類を作成します。
法律上、資本金1円から株式会社を設立することは可能です。
ただし、実際には設立後の家賃、人件費、備品購入、広告費、指定申請までの運転資金などが必要です。特に障がい福祉事業では、指定を受けてサービス提供を始めてから報酬が入金されるまでの資金も考慮しなければなりません。
7.設立登記に必要な書類を準備する
会社の内容によって異なりますが、一般的には次のような書類を準備します。
- 株式会社設立登記申請書
- 認証済みの定款
- 発起人の決定書または発起人会議事録
- 設立時取締役の就任承諾書
- 代表取締役の選定に関する書類
- 払込みがあったことを証する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書
- 印鑑届書
- 登録免許税に関する書類
必要書類は、取締役会を設置するか、現物出資があるか、役員が複数いるかなどによって変わります。
8.法務局へ設立登記を申請する
本店所在地を管轄する法務局へ、株式会社の設立登記を申請します。
登記申請は、窓口への持参だけでなく、郵送やオンラインで行う方法もあります。
原則として、法務局へ設立登記を申請した日が会社の設立日になります。
行政書士は、会社設立に必要な定款などの書類作成や、定款認証手続の支援を行うことができます。
一方、設立登記申請書の作成や、法務局への登記申請代理は、行政書士の業務ではありません。
登記申請は、会社の代表者本人が行うか、司法書士へ依頼します。
9.登記完了後の手続を行う
登記が完了した後も、会社の状況に応じて、さまざまな手続が必要です。
- 税務署への法人設立届出書などの提出
- 都道府県税事務所や市区町村への法人設立届
- 年金事務所への健康保険・厚生年金保険の新規適用届
- 従業員を雇う場合の労働保険・雇用保険の手続
- 法人名義の銀行口座開設
- 会計・請求・給与計算体制の整備
- 必要な許認可や指定申請
法人事業所は、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。代表者一人だけの会社であっても、代表者へ役員報酬を支払う場合などは、社会保険への加入手続が必要になることがあります。
行政書士へ依頼できること
行政書士は、会社設立に関して、主に次のような支援を行います。
- 会社の基本事項や事業目的の整理
- 定款の作成
- 電子定款の作成
- 公証役場での定款認証手続の支援
- 許認可や障がい福祉事業の指定申請を見据えた定款目的の検討
- 設立後に必要となる許認可申請
会社設立後に許認可や障がい福祉事業の指定申請を予定している場合は、法人設立とその後の手続を切り離さずに考えることが重要です。
定款目的、役員構成、本店所在地、物件、資金計画などが、予定する事業の要件と合っていなければ、設立後に修正が必要になることがあります。
司法書士へ依頼できること
司法書士は、会社設立登記に関して、主に次のような業務を行います。
- 設立登記申請書や添付書類の作成
- 法務局への登記申請代理
- 役員変更、本店移転、目的変更などの変更登記
定款作成から登記までを専門家へ依頼する場合は、行政書士と司法書士が連携して手続を進めることがあります。
ただし、行政書士報酬、司法書士報酬、定款認証費用、登録免許税などは、それぞれ必要になります。契約前に、支援範囲と費用を確認してください。
自分で設立するか、専門家へ依頼するか
株式会社は、自分で設立することも可能です。
会社の構成が単純で、必要書類や手続を自分で調べられる場合は、本人申請を選ぶ方法もあります。
一方、次のような場合は、専門家への相談を検討する余地があります。
- 定款の事業目的をどのように記載すればよいか分からない
- 設立後に許認可や指定申請を予定している
- 現物出資や複数の株主・役員がいる
- 本業の準備に時間を使いたい
- 設立後の変更や手戻りを減らしたい
- 行政書士・司法書士・税理士・社会保険労務士の役割が分からない
専門家へ依頼したからといって、必ず設立期間が短縮されるわけではありません。
書類の準備状況、公証人や法務局の処理状況、会社の内容などによって、設立までにかかる期間は変わります。
まとめ
株式会社は、発起人、株主、取締役が一人でも設立できます。
設立までの主な流れは、会社の基本事項の決定、定款の作成・認証、資本金の払込み、設立登記申請、設立後の届出です。
自分で設立することもできますが、設立後に許認可や障がい福祉事業の指定申請を予定している場合は、定款目的や資金計画などを設立前に整理しておく必要があります。
行政書士は定款作成や許認可・指定申請を、司法書士は登記申請を担当します。
専門家へ依頼する場合は、誰がどの手続を担当するのか、報酬や実費がいくらかかるのかを確認したうえで進めることが大切です。
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