障がい者家族の安心な将来のための備え方~任意後見制度を中心に~

目次

はじめに

障がいをお持ちの方はもちろん、そのパートナーの方や親御さん、ご家族様にとって、「私が高齢になった時はどうなるんだろう。」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。というのも、私自身が、障がい者として、母親が年老いてきている現実に直面しているからです。

親御さんが元気なうちに将来に備えて準備しておくことは、障がいを持つお子さんの生活の安定に直結します。具体的な対策とその活用例を挙げながら、任意後見制度を中心に詳しく説明いたします。

【1】任意後見制度

■ 任意後見契約の特徴

項目内容
契約の時期本人に判断能力があるうち
効力が発生する時本人が認知症などで判断能力が低下した時に、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点
後見人の業務内容財産管理、福祉サービスの契約、介護費・施設費の支払い、各種手続きなど
契約方法公正証書で作成(必須)

■活用例(障がいのある子どもを持つ親の場合)

● 状況

親御さんが、将来、自分が認知症や病気で判断力がなくなることを心配している場合は、任意後見制度を活用して以下のような準備ができます。

任意後見の活用方法
  • 信頼できる第三者(例えば、長男や専門家)を「任意後見人」として任命する
  • 将来、自分の判断能力が落ちたら、その後見人が財産を管理し、障がいのある子の生活費や通院などを代行支援してもらうよう契約書を作成しておく

■行政書士に相談した場合の流れ

任意後見契約は、法律的な文書作成や家庭裁判所との連携が必要なため、行政書士への相談が非常に有効です。

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(1)相談予約・初回面談

  • 現在の状況やご希望の内容を聞き取り
  • 任意後見以外の選択肢(信託など)との比較も提案してくれる

(2)任意後見契約の設計

  • 誰を後見人にするか
  • どのような支援内容を契約に盛り込むか(例:子供の施設費の支払い、医療契約代行など)
  • 必要に応じて、生活・財産の管理方法も整理

(3)公証人との打ち合わせ・契約書の作成

  • 行政書士が公証役場と調整
  • 本人と後見人候補が公証役場で契約を締結(必ず本人の意思確認がされる
    • 本人に判断能力があるうちは、何度でも内容を変更・解約が可能

(4)契約成立・将来に備えて保管

  • 契約が公正証書として保管され、効力はまだ発生しない
  • 将来、本人の判断能力が低下したとき、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任し、そこで契約が発動

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■ 任意後見制度のまとめ

  • 任意後見契約は、元気なうちに「自分が支援してほしい内容」を決められる安心な制度
  • 子どもの生活を誰がどう支援していくかを明確にできる
  • 行政書士に相談すれば、複雑な手続きも安心して進められる

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【2】信託制度(福祉型信託・家族信託)

■ 内容

親の財産を子供のために信託(預ける)し、信頼できる人がそれを管理・運用する制度。財産の使い道や期間を契約で指定できる。

■ 活用例

親が持つ不動産や預貯金を信託し、兄弟姉妹や専門家を「受託者」として、障がいを持つ子供の生活費や医療費の支払いに使えるようにする。

【3】障がい者扶養共済制度(しょうがい共済)

■ 内容

親が毎月掛金を納めておくことで、親が亡くなった後に障がいのある子供に生涯にわたり給付金(年金)が支給される制度。

■ 利点

  • 国や自治体が実施(自治体の福祉課などに相談)
  • 月々の負担が比較的少なく、長期的な支援になる

■ 例

親が加入し、月額1~2万円の掛金で、親が亡くなった後、子供(障がい者)に月額2-4万円程度の年金が支給される。

※加入時の親の年齢により、掛け金は変更されます。

【4】親なきあと相談会・支援機関の利用

■ 内容

「親なきあと」問題に詳しい弁護士、社会福祉士、行政書士などが関わる相談会・サポート体制があります。

■ 活用例

  • 地元の社会福祉協議会
  • NPO法人(例:親なきあと相談室)
  • 地域包括支援センター

事例に応じてオーダーメイドで対策を練ってもらえます。

【5】障がい者向けグループホームや施設の検討

■ 内容

将来的に親と同居が難しくなった場合に備え、入所可能なグループホームを探しておく。

■ 例

  • 役所の障がい福祉課に登録・申請
  • 数年待機が必要な施設も多いため、早めの準備が必要

【6】エンディングノート・遺言書の作成

■ 内容

親としての思いや、子供の生活に必要な情報・財産分配の希望を文書で残す。

■ 例

  • どの病院・施設が合っていたか
  • 日々の生活で配慮が必要なこと
  • 財産は信頼できる兄弟に管理を委ねたい旨など

まとめ

ご自身もご家族も若いから、まだ先の話・・・、と思われている方もいらっしゃるかと思いますが、ご家族皆さまがご健康のうちだからこそ、将来の不安を少しでも解消できるアクションを起こしてみてはいかがですか。

どの様な制度を利用しても、完全に不安や心配が拭いきれるものではないと思います。それでも、障がい者ご本人はもちろん、周りのご兄弟をはじめとしたご家族様のためにも、皆さんの末永く将来にわたっての幸せを考えてみるのもよいのかなと思います。

対策項目目的ポイント
任意後見契約財産管理・生活支援の継続判断能力があるうちに契約を
福祉型信託/家族信託財産の長期管理柔軟な財産運用・管理が可能
障がい者扶養共済子供の生活費の補填死後に安定した年金支給が可能
グループホーム等の検討居住の選択肢を準備空き状況や相性確認が必要
エンディングノート・遺言書子供への思いや財産分配書き残すことでトラブル防止・家族間での理解促進

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