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就職支援は“いますぐ”じゃなくて“続くこと”が大事──A型・B型で支援者に伝えたいこと

就労系の障がい福祉サービスには、「就職」を目指している利用者さんが一定数います。でも、A型やB型など“就労訓練の場”であることが前提の事業所では、支援員やサ責が行う「就職支援」のあり方に迷いがある場面もあるのではないでしょうか。
僕自身も、就職を目指した経験があり、そのなかで感じた「ありがたさ」と「ずれ」を正直に伝えたいと思います。
この文章が、現場で悩む支援者の方に届いてほしい。そして、何よりも「本人の希望」と「就職して続く未来」が両立するような支援のあり方を一緒に考えるきっかけになれば幸いです。

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目次

A型・B型にも「就職を目指す人」はいる

就労移行支援は「就職を目的としたサービス」ですから、そこに通う方が就職を目指しているのは当然のこととして、支援体制もそれに合わせて整っています。支援員さんたちも、「就職支援の専門家」として研修を受けていたり、企業とのつながりがあったり、実際に就職までの道のりを熟知している方が多いんです。

でも、A型やB型にも「就職したい」と考える利用者さんはいますよね。特にA型事業所では、雇用契約を結んで働く中で「もっと一般就労に近づきたい」と感じる方も多いはず。B型でも、生活リズムが整ってきたり、体調が安定してきたことをきっかけに、ステップアップを考える人が出てきます。

ただ、ここで一つだけ意識してほしいのは、「就職したい」と言うその言葉の背景です。そこには、“社会とのつながりを持ちたい”、“親を安心させたい”、“将来への不安をなんとかしたい”…そんなさまざまな気持ちが混ざっています。

善意の「支援」が、時に“タイミングを間違える”こともある

就職したいという言葉を聞いたとき、支援者としては「よし、応援しよう!」と思うのが当然です。その姿勢自体は、すごく尊いと思いますし、僕自身も過去にたくさん助けてもらいました。でも、時にはその“応援”が少し早すぎたり、順番が違ったりすることで、うまくいかないこともあるんです。

たとえば、僕自身の話ですが、昔、朝と夜の2回服薬していた時期がありました。ある種類の薬を飲んでいたことで、昼過ぎに猛烈な眠気に襲われるようになっていたんです。そんな状態で就職活動をしようとすると、面接中に意識が飛びそうになったり、集中できなかったり…。

そんなときに、支援員さんが求人票を探してきてくれたり、ハローワークに同行してくれたりすることもありました。本当にありがたい。でも、そのときの僕にとっては、まず「眠気を抑えられるように主治医と相談する」といった支援のほうが先だったかもしれません。

支援は、善意だけではうまくいかないこともあります。順番が違うだけで、せっかくの努力が空回りしてしまうこともあるのです。

社会性の課題を抱えたままでは、長くは続かない

もうひとつ、自分の経験として感じたことがあります。注意の向け方に少し特性があるタイプで、どうしてもデスクの上が散らかりがちな人がいるとします。飲みかけのペットボトルをそのまま置いて帰ることも多くて…。
自分では気にしていないことでも、職場では「マナーがなっていない」と見られることがある。それが原因で評価が下がったり、人間関係でつまずいたりすることもあるかもしれません。

そうした「社会人としてのふるまい」や「最低限の職場マナー」を伝えることも、支援のひとつだと思うんです。就職するというのは、「働きたい」と思う気持ちだけで成り立つわけではありません。
むしろ、“働き続けられるか”がもっとも大事なポイントです。

「就職したい」=今すぐ応募する、ではない

利用者さんが「就職したいです」と言ったとき、すぐに求人票を渡すのも一つの選択です。でも、その前に「今のあなたなら、どういう準備が必要かな?」と一緒に考える時間を取ってみてほしいのです。

たとえば、

  • 睡眠や服薬のリズムは安定しているか?
  • 毎日、安定して通所できているか?
  • 人とのやりとりや指示理解は、ある程度できているか?
  • 職場に出たあと、ストレスを溜めずに対処できそうか?

こうした点を一緒に確認しながら、「じゃあ、半年後に就職を目指すとして、まずはこの1ヶ月は○○に取り組んでみようか」と、ロードマップを描いていく。その過程で、「もしかしたら、就労移行の方が合ってるかも」と感じることもあるかもしれません。

就職活動に最適な“土壌”を整えるなら、就労移行支援がベストな場面も

もちろん、A型やB型でも就労移行支援体制加算があり、事業所としても就職実績を上げたいという思いはあるかもしれません。でも、だからといって無理やり今の事業所の枠内で就職まで支援しようとすると、どうしても限界が出てきます。

履歴書の添削、模擬面接、企業見学、実習…これらを継続的に提供できる体制があるのは、やっぱり就労移行支援です。必要に応じて医療や相談支援専門員とも連携し、就職後の定着支援まで見据えることができます。

「今はうちじゃなくて、移行に行くのがいいかもしれないですね」と伝えるのは、支援の手放しではなく、本当の意味でのバトンパス。僕はそう思っています。

「就職したい」という言葉を、一緒に翻訳してみませんか?

「就職したい」という言葉の裏には、「今の自分を変えたい」「誰かに必要とされたい」「自立したい」という切実な願いが隠れていることもあります。
その気持ちに寄り添って、一緒に“続けられる就職”に向かって進むためのサポートができたら――それが支援者の本当の役割なのではないかと思います。

おわりに:続く就職のために、“急がない”という支援の選択を

「就職したい」という気持ちは、間違いなく前向きな一歩です。でも、それを焦って“結果”に結びつけようとするあまり、準備が足りないまま飛び出してしまうと、つまずく可能性も高くなります。

支援者の皆さんには、ぜひ「いま何が必要か」を丁寧に見極めながら、就職後の未来まで見据えた支援をしていただけたらうれしいです。
求人票をすぐに持ってきてくれる支援は、その瞬間にはありがたい。でも、長い目で見て支えてくれる存在のほうが、心強く、記憶にも残ると思うのです。

📩 ご相談・伴走支援も行っています

私は「制度のプロ」である行政書士であり、就労を経験してきた「当事者」でもあります。だからこそ、利用者さんの小さな変化や、言葉にならない願いにも気づけることがあると信じています。

  • 「本人が就職を希望しているが、このまま進めていいのか不安」
  • 「どの支援につなげるべきか悩んでいる」
  • 「家族としてどうサポートすればいいかわからない」

そんな現場の声にも、一緒に向き合い、最適な選択肢を考えるお手伝いができます。
ご本人・ご家族・事業所スタッフの方からのご相談も、お気軽にどうぞ。

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