障がい者福祉事業所には、理念を掲げるオーナーと、現場で支援にあたる管理者・支援員がいます。
どちらも「利用者の幸せ」のために頑張っているはずなのに、気づけばお互いの不満がつのり、深い溝ができてしまうことも──。
どうしてこんな“ボタンのかけ違い”が起こるのでしょうか。
その背景を紐解き、改善の糸口として「利用者満足度調査」の意外な役割にも注目します。
オーナーと現場、それぞれが“正しい”からこそズレるんです
福祉事業所を立ち上げたオーナーの方には、きっと熱い想いや、揺るぎない理念があるはずです。
「こんな場所を作りたい」「障がいのある人の人生に、こう関わりたい」と──。
一方で、現場を任されている管理者や支援員も、毎日必死です。
制度に則った支援記録の作成、利用者対応、家族への連絡、請求業務…。きれいごとではない「現場」が、そこにはあります。
どちらも真剣。どちらも“利用者さんのため”を考えている。
でも、それでもぶつかってしまうのはなぜか。
それはきっと、「立ち位置」が違うからなんです。
見ている景色が違えば、同じ目的地に向かっているはずなのに、まるで正反対の方向に進んでいるように感じることもある。
そんなすれ違いが、時間とともに“大きな誤解”になっていくこと、ありますよね。
どうして理念が伝わらないの?──よくある“ズレ”のパターン
「どうして私の想いが伝わらないんだろう」
「現場の気持ち、なんでわかってくれないの?」
そんな声、よく聞きます。でも、それには“ズレ”が起こりやすい理由がちゃんとあるんです。
パターン①:理念が抽象的すぎて、現場では活かしにくい
「その人らしい人生を支える」「地域共生社会の実現を」──。
もちろん素晴らしい理念ですが、現場では「それって今日の支援にどう活かせばいいの?」と迷ってしまうことも。
現場には、理念を“現場言葉”に翻訳する工夫が必要です。
パターン②:経営と現場が分断されている
経営会議と現場支援の時間が完全に切り離されていると、お互いの苦労が見えにくくなります。
「口ばっかり」「現場を知らない」と感じるのも、ある意味当然なんです。
パターン③:話し合う“場”や“時間”がない
日々の業務に追われ、理念について語り合う時間が持てない事業所も多いです。
スタッフ会議も報告や業務連絡だけで終わってしまうと、そもそも「理念を共有する場」が不足してしまいます。
パターン④:中間管理職(管理者)が板挟みに
オーナーの意向と、現場の本音。その間に挟まれた管理者が、消耗してしまうことも少なくありません。
ときに“伝書鳩”のようになってしまい、本来の役割を果たせなくなることも。
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関係が悪化すると、こんなリスクが起きてしまいます
「まあ、多少すれ違ってても業務は回ってるから大丈夫」
そう思っていませんか? でも、じつはその小さなズレが、事業所の大きなリスクになることがあるんです。
たとえば──
- 管理者や支援員が、会社への不満をぽろっと利用者に話してしまう
- 愚痴の多い職場になり、新人スタッフが定着しなくなる
- 利用者が「ここにいても大丈夫なのかな」と不安になる
- 結果、支援の質が落ち、事業所の評価も下がってしまう
これは、ほんの一例です。
オーナーが悪いわけでも、現場が悪いわけでもない。
でも、“信頼関係”が揺らいでしまうと、誰も得しない状況が生まれてしまう。
だからこそ、どこかのタイミングで「ちゃんと向き合う」ことが大切なんです。
利用者満足度調査を、現場の“鏡”として使ってみませんか?
利用者満足度調査というと、「利用者さんの満足度を測るだけのもの」と思われがちですが、実はそれだけじゃないんです。
外部の専門家が入って調査を行う場合、
実はその過程で、支援員や管理者の方に“ヒアリング”を行うこともよくあります。
現場の温度感、支援の中で感じている課題、ちょっとした不満…。
普段の業務では見えにくい“声”を拾うことができるんです。
このとき、支援者は“オーナーへの悪口”を言うわけではありません。
むしろ、「もっと良くしたい」「でも難しい」と悩んでいる声が多いんです。
それって、事業所を良くしたいという想いの裏返しなんですよね。
その声を、オーナーに“第三者のフィルター”を通して伝えることで、
図らずも「そうか、現場も同じように悩んでいたんだ」と気づいてもらえることがあります。
満足度調査は、「数字を見る」ためのものではなく、
“理念と現場の温度差”を見直すきっかけにもなるんです。
すれ違いを減らすために、今すぐできる3つのこと
理念が伝わらない。現場がわかってもらえない。
そんな“もやもや”を抱えたままにしないために、今できることを3つ紹介します。
① 経営者が現場に“聴きに行く”姿勢を持つ
「見に行く」ではなく「聴きに行く」。
この違いが、信頼関係を築くうえでとても大事です。
日常の業務の合間に、現場の声にじっくり耳を傾けてみてください。
② 理念を“現場言葉”に翻訳して共有する
理念がふわっとしたままだと、どう支援に活かせばいいか分かりません。
支援の中で「この場面、うちの理念だとこう捉えられるよね」といった実例を使って話し合うことが有効です。
③ 外部の力を借りる
理念と現場をつなぐ“通訳”役として、外部の行政書士や第三者支援者が介入することも有効です。
利用者満足度調査の実施もそのひとつ。外部の視点が入ることで、事業所の“空気”が少し変わることもありますよ。
おわりに──“誰も悪くない”からこそ、仕組みで補おう
オーナーも、現場も、利用者さんのために頑張っている。
それはきっと、誰も疑っていないはずです。
でも、だからこそ、「どうして分かってくれないの?」と感じたときには、
その背景にある“立場の違い”や“言葉のすれ違い”を見つめなおす必要があります。
誰も悪くないなら、あとは仕組みで補うだけ。
その一つの手段として、「利用者満足度調査」を活用してみてはいかがでしょうか。
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私自身、障がい者福祉サービス(A型・B型事業所)を利用していた経験があります。
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