はじめに
就労継続支援A型・B型では、一定の要件を満たす場合、自宅で支援を受ける「在宅利用」が認められることがあります。
通所が難しい方にとって、在宅利用は就労や福祉サービスへの参加を継続するための選択肢の一つです。
ただし、在宅利用は単に「自宅で作業すればよい」「本人が希望すれば利用できる」という仕組みではありません。
利用者本人が在宅でのサービス利用を希望していることに加えて、在宅で支援を行うことによる支援効果が認められることが必要です。
また、事業所側にも連絡、支援、評価、記録など一定の運営が求められます。
特に大阪市では、2026年7月から就労継続支援A型・B型事業所への予告なしの現地確認を開始しています。
この記事では、大阪市における就労系サービスの在宅利用について、利用する側・事業所側の双方から、2026年8月時点の制度と注意点を整理します。
就労継続支援A型・B型の「在宅利用」とは?
就労継続支援A型・B型は、原則として事業所への通所を基本とする障害福祉サービスです。
一方で、一定の要件を満たす利用者については、自宅で訓練や作業等を行いながら、事業所から支援を受ける在宅利用が認められています。
大阪市では、就労移行支援、就労継続支援A型・B型について、在宅利用に関する申立書の様式を設けています。
重要なのは、在宅利用が「通所と完全に切り離された別のサービス」ではないということです。
在宅で訓練・作業を行う場合でも、利用者の状況を把握し、必要な支援を提供し、訓練目標に対する評価を行うことが事業所には求められます。
本人が希望するだけでは在宅利用にならない
大阪市が示している在宅利用の取扱いでは、在宅でのサービス利用について、
利用者本人が在宅利用を希望していること
に加え、
在宅でサービスを利用することによる支援効果が認められること
が必要とされています。
したがって、
「通所するより自宅の方が楽だから」
「パソコン作業なので自宅でもできるから」
という理由だけで当然に在宅利用になるわけではありません。
利用者本人の状況や希望、在宅で支援する必要性・効果などを具体的に整理したうえで判断されます。
大阪市では、在宅利用を希望する場合に「在宅利用に係る申立書」を用いる取扱いが示されています。
在宅利用でも「支援」は必要
在宅利用で特に注意したいのが、
「自宅で仕事や作業をしてもらえば、それで支援になるわけではない」
という点です。
在宅利用は、あくまで障害福祉サービスとして提供される就労支援です。
そのため事業所には、利用者に作業を渡すだけではなく、
- 利用者の状況確認
- 作業・訓練への助言
- 進捗状況の確認
- 訓練目標に対する評価
- 必要に応じた訪問や通所による支援
- 緊急時に対応できる体制
などを確保することが求められます。
事業所に求められる在宅支援の主な要件
大阪市が掲載している在宅利用に関する事務連絡では、事業所側に具体的な運営要件が示されています。
運営規程に在宅で行う支援内容を明記する
在宅でサービスを提供する場合には、在宅で実施する訓練や支援の内容を運営規程に明記しておく必要があります。
実際の支援内容と運営規程が一致しているかは、基本的な確認事項になります。
在宅でも継続的に利用者と関わる
在宅利用では、事業所と利用者が離れた場所にいるからこそ、意識的な支援体制が必要です。
電話、パソコン等のICT機器、訪問、通所などを活用して、利用者の状況を把握しながら支援を行います。
「作業内容を送って、終わったら成果物だけ返してもらう」といった形だけでは、障害福祉サービスとして必要な支援を実施しているとは言いにくいでしょう。
少なくとも週1回は評価等を行う
大阪市が示している取扱いでは、
事業所職員による訪問、利用者の通所、電話やパソコン等のICT機器を活用して、少なくとも週1回は評価等を行う
こととされています。
単に「連絡を取った」というだけではなく、訓練目標に対してどのような状況なのかを確認することが重要です。
原則として月1回は訪問または通所で評価する
さらに在宅利用者については、原則として月の利用日数のうち1日は、
- 事業所職員が利用者宅を訪問する
- 利用者が事業所へ通所する
いずれかの方法で、訓練目標に対する達成度の評価等を行うこととされています。
つまり、オンラインだけで支援が完結することを当然の前提とした制度ではありません。
在宅支援と対面支援を適切に組み合わせるという考え方が重要です。
在宅利用と通所を組み合わせることもできる
「在宅利用になったら、毎日在宅で利用しなければならない」というわけでもありません。
大阪市が示している取扱いでは、在宅と通所を組み合わせて支援することも可能とされています。
例えば、
- 体調に応じて一部の日を在宅利用にする
- 作業は在宅で行い、定期的に通所して面談・評価を受ける
- 訓練内容によって在宅と通所を使い分ける
など、本人の支援目標や状態に応じて組み合わせることが考えられます。
大切なのは、
「在宅か通所か」という二者択一ではなく、その人にとってどのような支援方法が有効なのか
という視点です。
A型とB型では「働き方」が違う
在宅利用を考える際には、A型とB型の違いにも注意が必要です。
就労継続支援A型
A型では、原則として事業所と利用者の間で雇用契約を締結します。
したがって、在宅でサービスを利用する場合でも、障害福祉サービスとしての支援だけでなく、雇用契約に基づく労働関係についても整理する必要があります。
就労継続支援B型
B型では、事業所と利用者との間で雇用契約を締結しません。
生産活動等によって得られた収入から、利用者に工賃が支払われます。
そのため、同じ「在宅で作業する」という形に見えても、A型とB型では法律上の位置づけが異なります。
大阪市では2026年7月からA型・B型事業所への現地確認を開始
2026年、大阪市の在宅支援をめぐる状況には大きな動きがありました。
大阪市は、2026年7月1日から就労継続支援A型・B型事業所への現地確認を開始しています。
大阪市によれば、最近、
- 在宅支援のみでサービスを実施している
- 管理者が事業所にいない
- サービス管理責任者が事業所にいない
- 従業員が不在
- 営業時間中にもかかわらず事業所が開いていない
といった状況が散見されていることが、その背景にあります。
現地確認は事前連絡なし
大阪市の現地確認では、事前の通知や連絡を行わず、市職員が事業所を訪問します。
そして、
- 指定時の開設計画
- 運営規程
などに基づいて実際の運営状況を確認します。
特別に「現地確認用の書類を準備して待っておく」という性質のものではありません。
普段から、届け出ている内容どおりに事業所が運営されていることが重要です。
不適切な状況があれば運営指導・監査に移行する可能性も
大阪市は、現地確認の結果、不適切な状況が確認された場合には、その場で運営指導へ切り替えるとしています。
さらに、状況によっては監査へ移行する場合もあると明記しています。
ここから分かるのは、大阪市が「在宅支援そのもの」を問題視しているわけではないということです。
問題になるのは、
在宅支援という形を理由として、本来必要な事業所運営や支援体制が確保されていない状態
です。
大阪市では「在宅利用のあり方」そのものも検討中
さらに大阪市は2026年7月22日、「障がい福祉サービス等における支給決定等のあり方検討会議」の第1回会議を開催しました。
その検討テーマの一つとして、
「就労継続支援等における在宅利用(支援)の現状等」
が取り上げられています。
つまり2026年8月時点の大阪市では、
- 現行ルールに基づいた在宅支援の適正運営
- 実際の事業所への現地確認
- 今後の在宅利用・支給決定のあり方
が並行して動いている状態です。
次回の検討会議は2026年10月に予定されています。
今後、大阪市独自の運用や支給決定の考え方が整理される可能性もあるため、引き続き最新情報を確認する必要があります。
利用を検討する人が確認したいポイント
利用者側から見ると、在宅対応の有無だけで事業所を選ぶのはおすすめできません。
次のような点も確認してみてください。
どのような支援を受けられるのか
「在宅OK」というだけでは、その事業所がどのような支援を行うのか分かりません。
例えば、
- どのくらいの頻度で連絡があるのか
- 困ったときに相談できるのか
- 定期的な面談や評価があるのか
- 必要な場合に通所や訪問による支援を受けられるのか
- どのような作業・訓練を行うのか
などを確認しておくことが重要です。
自分にとって在宅利用が本当に合っているか
通所する負担が減ることは、在宅利用のメリットの一つです。
一方で、
- 人との接点が少なくなる
- 生活リズムを作りにくい
- 自宅では集中しにくい
- 困ったときに支援員へ相談しづらい
と感じる人もいます。
「通所できるか、できないか」だけではなく、自分の就労目標や生活状況を含めて考えることが大切です。
事業所が今確認しておきたいポイント
大阪市でA型・B型を運営し、在宅利用者を支援している事業所であれば、少なくとも次の点は改めて確認しておきたいところです。
- 在宅利用について必要な手続きを行っているか
- 運営規程に在宅で行う訓練・支援内容を記載しているか
- 個別支援計画と実際の在宅支援が一致しているか
- 必要な連絡・助言・評価を実施しているか
- その内容を記録しているか
- 訪問・通所による評価を適切に実施しているか
- 緊急時に支援できる体制があるか
- 営業時間中に必要な職員配置・事業所運営が行われているか
- 指定時の開設計画や運営規程と現在の運営実態が一致しているか
在宅利用だからといって、事業所そのものを事実上無人で運営してよいわけではありません。
大阪市の2026年の現地確認は、この点を改めて意識しておく必要がある動きといえます。
「在宅だから記録が少なくてよい」わけではない
在宅支援では、利用者と職員が同じ場所にいない分、
何を確認し、どのような助言を行い、本人がどのような状態だったのか
を記録として残すことが特に重要です。
例えば、
「在宅支援実施」
だけでは、その日にどのような支援を行ったのか分かりません。
- 作業内容
- 本人からの報告
- 進捗状況
- 職員から行った助言
- 体調や生活状況
- 支援上気になったこと
- 次回の支援につなげる内容
など、実際に行った支援が分かる記録を残すことが基本になります。
大切なのは記録を多く書くことではなく、実際に行った支援と記録が一致していることです。
まとめ|在宅利用は「自宅で作業する制度」ではなく「在宅で支援する制度」
就労継続支援A型・B型の在宅利用は、通所が難しい人などにとって重要な選択肢です。
一方で、
「自宅で作業できれば在宅利用になる」
という仕組みではありません。
本人の希望だけでなく在宅利用による支援効果が認められることが必要であり、事業所側にも継続的な支援、評価、記録、訪問・通所等による確認が求められます。
そして大阪市では2026年7月からA型・B型事業所への予告なしの現地確認を開始し、不適切な運営が確認された場合には運営指導や監査へ移行する可能性も示しています。
さらに、在宅利用を含む支給決定のあり方についても検討が始まっています。
在宅支援を行う事業所にとって今重要なのは、「在宅利用をしていること」そのものではありません。
その利用者に在宅支援が必要な理由を説明できること。
必要な支援を実際に行っていること。
そして、その事実を記録として確認できる状態にしておくこと。
この3つを改めて確認しておくことが重要です。
※本記事は2026年8月26日時点で大阪市および厚生労働省等から公表されている情報をもとに作成しています。在宅利用に関する大阪市の取扱いについては今後変更される可能性があります。実際の利用・運営にあたっては、大阪市その他の指定権者・支給決定市町村が公表する最新情報をご確認ください。
在宅での就労支援を考えるときは、働き方だけでなく、利用できる制度や支援内容、自分の体調や生活との相性も含めて整理することが大切です。
今の状況や希望を確認しながら、これから利用できる福祉制度や働き方について一緒に整理します。
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