A型・B型から一般就労につながらないとき|個別支援計画と支援記録の見直し方

就労継続支援A型・B型事業所から、一般就労を希望する利用者がいるものの、なかなか具体的な支援へ進まないことがあります。

たとえば、個別支援計画には、

将来的に一般就労を目指す

と記載されている一方で、日々の支援記録には作業内容や体調だけが残され、就職に向けた支援がほとんど記録されていないケースです。

この状態では、本人が何を希望し、どのような課題があり、事業所が何を支援してきたのかが見えません。

一般就労につながらない原因を、本人の能力や意欲だけに求めるのではなく、まず確認したいのが、個別支援計画と実際の支援がつながっているかという点です。

目次

A型・B型は、全員を一般就労へ移行させるサービスではない

就労継続支援A型・B型は、就労移行支援とは目的や対象者が異なります。

A型は、通常の事業所に雇用されることが難しい人に対し、雇用契約に基づく就労の機会と、就労に必要な知識・能力の向上に向けた支援を行うサービスです。B型も、一般企業への雇用が難しい人に、生産活動などの機会と必要な支援を提供します。

そのため、A型・B型の利用者全員について、一般就労への移行を一律の目標にする必要はありません。

本人によっては、

  • 現在の事業所へ安定して通う
  • 作業時間を少しずつ延ばす
  • 生活リズムを整える
  • 対人関係の負担を減らす
  • 工賃や賃金を安定させる
  • A型やB型で長く働き続ける

ことが重要な目標になる場合もあります。

一方で、本人が一般就労を希望しているのであれば、その希望を個別支援計画へ記載するだけで終わらせず、具体的な支援へ落とし込む必要があります。

「一般就労を目指す」だけでは支援計画にならない

個別支援計画に「一般就労を目指す」と書いてあっても、それだけでは職員が何をすればよいのか判断できません。

まず整理したいのは、本人が考える「一般就労」がどのようなものかです。

  • どのような仕事を希望しているか
  • 週に何日、何時間働きたいか
  • 通勤できる範囲はどこか
  • 障がい者雇用を希望するか
  • 配慮事項を勤務先へ伝えたいか
  • いつごろの就職を考えているか
  • 収入面でどのような希望があるか
  • 現在、不安に感じていることは何か

「就職したい」という言葉だけでは、本人の希望を十分に把握できません。

本人の希望が曖昧な段階では、すぐに求人応募を目標にするのではなく、仕事の希望や働き方を一緒に整理すること自体を短期目標にする方法もあります。

一般就労を妨げている課題を具体化する

支援計画では、本人の希望だけでなく、現在の状況との間にどのような課題があるかを整理します。

たとえば、次のような課題が考えられます。

勤怠や体調が安定していない

欠席や遅刻が多い場合、その理由を単に「本人の意欲不足」と判断してはいけません。

  • 睡眠リズム
  • 通院や服薬
  • 通勤の負担
  • 作業内容との相性
  • 人間関係
  • 感覚過敏
  • 家庭環境
  • 疲労の蓄積

など、背景を確認する必要があります。

希望する仕事と現在の訓練がつながっていない

パソコンを使った仕事を希望しているのに、日々の活動が軽作業だけであれば、現在の支援と就職目標が結びついていない可能性があります。

事業所内ですべての訓練を提供できない場合は、外部機関や他サービスとの連携も検討します。

自分の得意・不得意を説明できない

就職活動では、本人が自身の得意なこと、苦手なこと、必要な配慮を整理する必要があります。

職員がすべて代わりに説明するのではなく、本人が自分の言葉で伝えられるよう支援することも重要です。

求人応募へ進む段階が決まっていない

「もう少し安定してから」「準備ができたら」と考えているうちに、支援が長期間止まることがあります。

何ができれば次の段階へ進むのか、判断基準を具体的に決めておく必要があります。

短期目標は、日々の支援へ落とし込める形にする

一般就労は大きな目標です。

そのままでは日々の支援内容が曖昧になるため、段階に分けて考えます。

たとえば、長期目標が「障がい者雇用で週20時間以上働く」であれば、短期目標として次のような内容が考えられます。

  • 週4日の通所を3か月継続する
  • 1日の作業時間を30分延ばす
  • 希望する職種を3種類まで絞る
  • 自分に必要な配慮事項を整理する
  • 企業見学へ1回参加する
  • ハローワークへ登録する
  • 履歴書を作成する
  • 模擬面接を行う
  • 実習へ参加する

短期目標は、達成できたかどうかをモニタリングで確認できる内容にします。

「意欲を高める」「社会性を身につける」といった抽象的な目標だけでは、評価が職員の主観に偏りやすくなります。

支援記録には「目標に向けて何をしたか」を残す

個別支援計画に一般就労の目標が記載されていても、支援記録に関係する記載がなければ、実際にどのような支援を行ったのか説明できません。

支援記録には、作業内容や体調だけでなく、必要に応じて次のような事実を残します。

  • 就職希望について本人と話した内容
  • 本人が希望する職種や勤務条件
  • 求人情報を一緒に確認したこと
  • 履歴書作成を支援したこと
  • 企業見学や実習の準備
  • 面接練習で確認した課題
  • ハローワークや支援機関との連携
  • 本人が不安に感じていること
  • 目標に対する本人の意向の変化
  • 次回までに行う支援

重要なのは、「就労支援を実施した」とだけ記載するのではなく、何を確認し、本人がどう反応し、次に何をするのかが分かることです。

モニタリングで「未達成」の理由を確認する

短期目標を達成できなかった場合でも、すぐに本人の努力不足と判断する必要はありません。

モニタリングでは、次の点を確認します。

  • 目標が本人の希望に合っていたか
  • 目標の難易度が高すぎなかったか
  • 支援方法が適切だったか
  • 必要な支援を実際に提供できたか
  • 体調や生活環境に変化がなかったか
  • 本人の就職希望が変わっていないか
  • 他機関との連携が必要ではないか

目標を達成できなかった理由が、事業所側の支援不足や計画の不具体性にある場合もあります。

モニタリングは、本人を評価するだけの場ではなく、事業所の支援方法を見直す機会でもあります。

一般就労を希望しなくなった場合も計画を見直す

利用開始時には一般就労を希望していても、体調や家庭環境、実際の作業経験などによって、本人の希望が変わることがあります。

その場合、過去の希望をそのまま計画へ残し続けるのは適切ではありません。

  • 一般就労を引き続き希望しているか
  • 今の事業所で働き続けたいのか
  • 就職時期を延期したいのか
  • 別の働き方を検討したいのか

を改めて確認します。

本人が希望していないにもかかわらず、事業所の実績づくりを優先して就職活動を進めることは避けなければなりません。

就労移行支援体制加算は、体制を整えただけでは算定できない

A型・B型などには、一般就労後の定着実績を評価する「就労移行支援体制加算」があります。

名称には「体制加算」とありますが、職員配置や支援体制を整えただけで算定できる加算ではありません。

前年度に、事業所の支援を受けた後に一般就労し、6か月以上就労を継続した利用者が1人以上いることなどが要件となります。そのうえで、指定権者への届出を行い、就労定着者数や利用定員などに応じて算定します。

したがって、利用者が一般企業へ就職しただけでは足りず、就職後6か月の継続実績まで確認する必要があります。

事業所内だけで抱え込まない

一般就労に向けた支援は、A型・B型事業所だけで完結するとは限りません。

本人の状況に応じて、

  • ハローワーク
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 就労移行支援事業所
  • 相談支援事業所
  • 医療機関
  • 地域障害者職業センター
  • 企業の採用担当者
  • 特別支援学校

などとの連携を検討します。

ただし、連携先へ情報提供する場合は、本人への説明と同意を前提に、必要な情報だけを共有します。

「連携した」という事実だけでなく、誰と何を共有し、その後の支援へどう反映したかを記録しておくことも重要です。

事業所で確認したいチェック項目

一般就労を希望する利用者への支援について、次の項目を確認します。

本人の希望

  • 一般就労を現在も希望しているか
  • 希望する仕事内容や勤務条件が整理されているか
  • 就職時期について本人の考えを確認しているか

個別支援計画

  • 長期目標と短期目標がつながっているか
  • 目標が具体的で評価できる内容か
  • 事業所が行う支援内容が明記されているか
  • 本人へ説明し、同意を得ているか

支援記録

  • 計画に沿った支援が記録されているか
  • 本人の発言や反応が残されているか
  • 就職準備の進捗が分かるか
  • 次に行う支援が共有されているか

モニタリング

  • 目標の達成状況だけでなく、未達成の理由も確認しているか
  • 本人の意向の変化を確認しているか
  • 支援方法を見直しているか
  • 計画変更が必要な場合に更新しているか

外部連携

  • 必要な支援機関と連携しているか
  • 本人の同意を得ているか
  • 連携内容を記録しているか
  • 連携結果を計画へ反映しているか

行政書士田中慶事務所が支援できること

行政書士田中慶事務所では、大阪市の障がい福祉事業所を対象に、個別支援計画と支援記録の整合性を確認する支援を行っています。

主な対応内容は次のとおりです。

  • アセスメントから個別支援計画へのつながりの確認
  • 長期目標・短期目標の具体性の点検
  • 個別支援計画と日々の支援記録の整合性確認
  • モニタリング記録の整理
  • 会議録や関係機関との連携記録の確認
  • 加算の根拠書類の点検
  • 運営指導時に説明しやすい書類整理
  • 計画・記録様式の見直し

行政書士が利用者の就職先を紹介したり、職業あっせんを行ったりするものではありません。

事業所が実施した支援と、その根拠となる計画・記録が適切につながっているかを、制度と書類の面から整理します。

まとめ|一般就労につながらないときは、計画と支援の間を見る

A型・B型事業所から一般就労につながらない場合、本人の意欲や能力だけを原因と考えるのは適切ではありません。

まず確認したいのは、

  • 本人の希望を具体的に把握しているか
  • 一般就労までの課題を整理しているか
  • 短期目標が具体的か
  • 計画に沿った支援を実施しているか
  • 支援内容が記録に残っているか
  • モニタリングで支援方法を見直しているか

という点です。

一般就労を希望する利用者に対して、「一般就労を目指す」と計画へ書くだけでは、支援は前へ進みません。

本人の希望を段階的な目標へ落とし込み、日々の支援と記録を積み重ね、その結果をモニタリングで見直す必要があります。

個別支援計画、実際の支援、支援記録が一本の線でつながっているか。

そこを確認することが、一般就労へ向けた支援を見直す第一歩になります。

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今の状況を整理し、事業所に必要な対応を一緒に確認します。

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