はじめに:変わりゆく浪速区と、見えにくい“困りごと”
浪速区は、大阪の中心地からほど近いエリアでありながら、昔ながらの下町風情が色濃く残るまちです。木造の古い住宅、長年営まれてきた町工場、空き家となった長屋、そして倉庫街。最近では単身者向けのマンションも増え、新しい住民も少しずつ増えてきました。
しかしその一方で、「なんとなく寂しくなってきた」「昔に比べて地域のつながりが薄くなった」という声も耳にします。
そして、このまちのなかには──
“支援を必要としているのに、制度からこぼれてしまっている人たち” がいます。
制度の存在だけでは、すべての人が救われるわけではありません。私は、行政書士としてこの「支援の谷間」をどう埋めていけるかを、開業前の今こそ、真剣に考えておきたいと思っています。
支援の谷間にいるのは、どんな人?
「制度があっても、届かない」現実
福祉制度は、たしかにたくさんあります。障がい者手帳、生活保護、成年後見、介護保険、医療支援…
でも、「何らかの理由で使えない」「どれにも該当しない」と感じている人が、意外と多いのです。
たとえば──
- 障がい者手帳は取得していないが、精神疾患で働けない人
- 年金だけでは生活できず、でも生活保護には抵抗がある高齢者
- 引きこもり状態の若者や、家族が高齢化している「8050問題」の家庭
- 外国籍で、日本の制度にアクセスしにくい方
- 書類や手続きが苦手で、支援を諦めてしまっている方
こういった方々は、どこに相談してよいかわからず、孤立の中で暮らしていることも少なくありません。
なぜ支援の“はざま”が生まれるのか?
制度がつながっていない
公的支援は、それぞれが縦割りになっているため、たとえば「医療と福祉」「福祉と法律」「行政と民間」がスムーズに連携できていない場合があります。
相談窓口が多すぎて、たどり着けない
「包括支援センター」「障がい者就労支援センター」「区役所の窓口」「福祉事業所」…
名前はたくさんあっても、それぞれの役割の違いや入り口の選び方がわからないという声も多いです。
地域のつながりの希薄化
浪速区のような下町では、かつては「近所のおばちゃんが教えてくれた」「町会長が何とかしてくれた」ような人間関係がありました。でも、時代とともにそのつながりが薄れ、誰に頼ればいいかも分からなくなっています。
「橋渡し役」として、行政書士ができること
私は、まだ行政書士としての実務経験はありません。ですが、自分自身が制度を利用する立場だった経験や、福祉の現場での関わりの中で感じてきたのは、
「誰かが制度と人の間に立ってくれるだけで、助かる人がいる」ということです。
たとえば──
- 「この制度は使えないけど、こういう制度なら届くかもしれません」と一緒に探す
- 申請書の書き方や準備のしかたを丁寧にサポートする
- 本人の代わりに役所や支援機関に同行する
- 制度ではカバーできない“思い”や“背景”をくみ取って伝える
行政書士は、書類作成や手続きの専門家であると同時に、「制度の隙間」をつなぐ翻訳者であり橋渡し役にもなれるのではないか──
そんな思いを、私は持っています。
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地域の中で、「支援の声」を見逃さないために
浪速区には、まだまだ「顔が見える支援」が根付いています。
- 浪速区社会福祉協議会
- 地域包括支援センター
- 民生委員さん
- 地元の福祉事業所
- 子ども食堂や地域食堂
- 小さな自治会、町会
こうした地域の資源を、行政書士の視点から改めてつなぎ直していくこと。制度の“外側”にこぼれてしまった人と、地域の“内側”にある資源をマッチングすること。
それこそが、浪速区というまちの「小さな一歩」につながるはずだと思うのです。
おわりに:制度の外にいる人の声に、耳を澄ませていきたい
私は今、行政書士としての開業準備を進めている最中です。まだ、誰からも相談を受けたことはありません。けれど、自分が障がい当事者として制度と向き合ってきた経験や、周囲の人の困りごとを見てきたことが、私の出発点です。
「制度があれば救われる」ではなく、
「制度があるけれど救われない人がいる」という現実に、目を向ける行政書士でありたい。
そして、浪速区というこのまちで、誰ひとり取り残さないための“小さな一歩”をともに踏み出せる支援者になれるよう、これからも学び、歩んでいきます。
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私自身、障がい者福祉サービス(A型・B型事業所)を利用していた経験があります。
「現場の実際を知りたい」
そんな“制度と現実の間”で迷っている方の相談相手として、利用者側と支援者側、両方の視点を持つピア行政書士として、一緒に最適な道を探します。

