もしもグループホームがなかったら――「施設から地域へ」の先にある当事者のリアル

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入所系施設は本当に減っていないのか?—データから見る現状

最新の厚生労働省「社会福祉施設等調査」(令和4年10月1日現在)によると、障害者支援施設(入所型)は全国に2,575施設あり、その入所者数は127,111人にのぼります 。
また、施設の総数には大きな変化が見られず、入所支援の利用者数も重度の方(区分5・6。特に区分6)は増加傾向にあります。
すなわち、「施設から地域へ」という政策推進にもかかわらず、入所系施設は一定規模を維持しつつ、むしろ必要とされる支援度は高まっているという現実が見えてきます。

かつての隔離施設から、現代の“生活拠点”へ

かつて、精神障害者・知的障害者は「隔離のため」に大規模施設に収容され、家族との交流すら制限されていました。この過去への反発から、「入所施設=負」のイメージが根強いのは仕方ないことです。
一方で現在は、障害者支援施設は生活拠点として機能し、職員(サービス管理責任者・生活支援員等)が個別支援を提供。ここで暮らす利用者の多くは、特別支援学校卒業後に長期間滞在し、「見慣れた場所」となっているのが実態です 。

なぜ入所施設は必要とされ続けるのか?—当事者の声と家族の現実

  • 重度支援が必要な方の拠り所:特に区分6など重度支援の必要な方については、在宅で24時間対応する体制の構築が困難。入所施設こそが安全・安定の場となっています。
  • “誰かに駆けつけてほしい”という安心感:在宅では夜間や緊急時の対応に不安があり、特に一人暮らしや高齢の家族だけではサポート体制に限界があります。
  • 孤立からの解放:施設に入る=慣れた土地を離れることへの抵抗感はあるものの、日中の見守り、医療対応、生活サポートなどが充実している安心感と天秤にかけると、安定を求める選択として一定の支持があります。

地域共生社会の最前線—成功事例から見える光と課題

  • 愛知県半田市「CBID原理によるグループホーム」では、少人数ホームを地域の空き家に設置し、利用者の得意・好きに合わせた事業と地域参加をセットで構成。
  • 京都府舞鶴市「地域共生型総合福祉施設」では、高齢・障害・子育て関係者が一体となった施設を舞鶴市内に整備し、世代や障害種別を越えて日常的な交流を促しています。
  • 福岡市区単位の取り組みでは、町内会・企業・商店・福祉施設が協働し見守りネットワークを構築。災害時の避難支援や日々のサロン活動を通じて、本当の地域参加を実現しています 。

課題としては、地域資源や人手が足りず、特定の自治体に偏在している点。また、利用者個々の障害実態に応じて支援の質が担保できるかが依然として問われています。

「想像」と「現実」—未来の暮らしに向けた問い

「自宅でずっと暮らす」ことは、多くの人が望む理想的なイメージです。しかし、重度の当事者や孤立しやすい家族にとっては、24時間体制・緊急対応・専門ケアのある施設が不可欠です。
つまり、「自宅か施設か」の二択ではなく、“地域と密につながる入所的生活拠点”という第3の道をどう設計するかが、今後の大きな課題です。

当事者の本音をどう聞く?—幸せはどこにあるのか

今のところ、当事者や家族の声を反映した「事前検討」や「模擬体験」を通じた意思形成は十分とは言えません。
たとえば、「コミュニティとの関係性」「安心して暮らせるインフラ」「居場所としての感覚」などは、自身が体験しないと分かりにくいものです。
政府・自治体は本気で地域共生社会への舵を切るなら、当事者の声を設計の中央に据えた議論と試行機会を拡充する必要があります。

まとめ—“地域移行”のその先にある、より多様な幸せのかたち

  • ✅ データ上、入所系施設は減っておらず、重度支援需要はむしろ増加しています。
  • ✅ かつての隔離型ではなく、「生活拠点」としての意味合いが変化している。
  • ✅ 地域共生の成功事例も増えているが、地域格差や支援体制の限界は依然存在
  • ✅ 「自宅に住み続ける」ことが当事者・家族全員にとってベストとは限らない。快適な暮らし方は人それぞれであり、多様性を設計に取り込む必要があります。

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