“恥ずかしい”じゃない、“権利”として知ってほしい生活保護制度のこと

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生活保護は「制度」であり、「権利」でもある

日本国憲法第25条には、こう書かれています。

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」

生活保護は、まさにこの「生存権」を具体的に保障するための制度です。
そして、それは困窮した状況にあるすべての人に開かれた「権利」でもあります。

でも現実には、「生活保護=恥ずかしい」「後ろ指をさされる」と感じてしまう方が多いのも事実です。
特に、障がいや病気による困窮が一時的なものと分かっていても、「周囲に親がいるから」「兄弟がいるから」と申請をためらうケースも少なくありません。

僕自身、うつ病で休職し、一人暮らしの中で家賃や光熱費に毎月10万円近くが消えていく不安を経験しました。
傷病手当金も、一度復職して再度休職したときにはもらえず、「これはもう、生活保護しかないのか…」と思った瞬間もありました。

迷っている人ほど、本当は“いま”必要としている人かもしれない

「生活保護に頼ったら、もう戻れないんじゃないか」
「親や兄弟に知られたくない」
「審査に落ちたら、絶望しそうで動けない」
――そんな声を、これまでたくさん聞いてきました。

でも僕は、そうやってためらっている人ほど、
“少しの扶助があればすぐに立ち直れる人”が多いと感じています。

逆に、「生活保護があるから何とかなるやろ」と安易に考える人は、
他の支援策や就労・福祉制度を探そうともせず、制度に過度に依存してしまう危うさもあります。

だからこそ、本当に困っている人が「頼れるものを頼れる」ように、社会全体の理解や仕組みが必要です。

家族が市内にいると、本当に申請できないのか?

よくある誤解のひとつに、
「親や兄弟が同じ市内に住んでいると、生活保護は通らない」
というものがあります。

確かに、申請時には「扶養照会(家族に支援できるかどうかの確認)」があります。
でもこれは 扶養の義務を強制するものではなく、生活保護の可否を直接決定する要素ではありません。
(参考:厚生労働省「生活保護制度の見直し(2021)」)

扶養照会に対して家族が「支援できません」と答えた場合、それ以上の強制はされませんし、申請者の状況を総合的に見て保護が決定されます。

つまり「親や兄弟がいる=申請NG」という単純な話ではありません
この誤解によって、必要な人が制度にアクセスできなくなるのは、本当に切ないことです。

制度利用の流れ(図解)

以下に、生活保護申請の一般的な流れを図解形式でまとめました。

① 困窮状態・生活が立ちゆかない
   ↓
② お住まいの区役所に相談(保健福祉課など)
   ↓
ヒアリング(収入・資産・家族状況などの確認)
   ↓
必要書類の提出(収入証明・通帳・賃貸契約書など)
   ↓
扶養照会(親族へ支援の可否確認)
   ↓
⑥ 家庭訪問(実際の生活状況を確認)
   ↓
⑦ 保護の決定(または却下)【通常2週間〜1ヶ月程度】
   ↓
⑧ 支給開始(生活扶助・住宅扶助など)
   ↓
⑨ 定期的な収支報告や就労支援(必要に応じて)

支援する側(役所・相談機関)にも求められる“寄り添いの視点”

生活保護の窓口対応が、申請者の人生を左右することもあります。
特に障がいや精神疾患を抱える方にとって、最初の面談や対応で心が折れてしまうことも珍しくありません。

行政としての線引き・判断が必要なのは当然です。
ですが、申請者が「申請すらできない」ほど追い詰められている場合には、柔軟な姿勢や初期支援の姿勢が求められます。

支援者の側が、「制度の厳格な運用」「目の前の人に必要な支援」とのバランスをどう取るか――
そこに、制度を生かすか殺すかの分かれ目があるのかもしれません。

“恥ずかしい”ではなく、“生きるために必要なこと”として

生活保護は、不正に利用されるべきものではありません。
でも、不正受給への過度な注目が、本当に必要な人を萎縮させている現実もあります。

僕が伝えたいのは、
「制度に頼ることは、弱さではない」ということ。
「一時的に支えてもらって、また歩き出せばいい」ということ。

制度を「利用する」ことが“恥”ではなく、
「利用できずに潰れてしまうこと」の方が社会全体にとって大きな損失です。

最後に|「生活保護も、あなたを支える選択肢のひとつです」

もしあなたが今、経済的に苦しい状況にいて、
「もうどうしたらいいか分からない」と感じているなら、
まずは一度、行政の窓口に話をしてみてください。

そして、行政の側も、当事者が声をあげられるような雰囲気づくりを進めていただければと願っています。

僕も行政書士として、制度の橋渡しができるよう努めていきます。
あなたが、生きることをあきらめず、必要なときに必要な支援を受けられるように――
その一歩を、どうか怖がらないでください。

障がいがあるからこそ、「制度にアクセスすること」自体に大きなハードルがあるかもしれません。
でも、その“しんどさ”ごと、生活保護という制度が受け止めてくれるようにあるべきだと、私は思っています。

✅ 【障がいがある方・精神疾患がある方へ】生活保護申請時の注意点(補足)

① 医師の診断書や意見書を準備できると安心

  • 精神疾患(うつ病・統合失調症など)の場合、「就労が困難な状態」であることを第三者が説明できる資料が重要です。
  • 主治医がいる場合は、「生活保護の申請を考えていること」を相談し、病状・就労制限に関する意見書を書いてもらいましょう。
  • 書式は自由なことが多いですが、区役所によっては指定書式があるため、事前確認がベストです。

② 通帳残高や支出履歴のチェックに注意

  • 精神的に不安定な時期には、家計管理が難しくなることがあります。
  • 説明がつかない出金や浪費がある場合、「なぜそうなったのか」を自分で話すのが難しいことも。
    支援者や家族と一緒に申請に行く・メモを持参することで誤解を防げます。

③ 「扶養照会」は義務だが、絶対に援助を受けろという意味ではない

  • 生活保護の申請時には、親や兄弟に「援助が可能か」の問い合わせ(扶養照会)が原則あります。
  • ただし、実際に援助を強制されるものではありませんし、援助がないと申請できないわけでもありません。
    → **家庭内の事情が複雑な場合(虐待・疎遠・精神的に苦しい関係など)**は、そのことを率直に伝えましょう。

④ 一人での申請が不安な場合は「同行支援」も可能

  • 精神的に不安定な状態で、窓口で話すことが難しい場合もあります。
    → その際は、家族・支援者・相談支援専門員・ピアサポーター・行政書士などの第三者が同行し、状況説明をサポートできます。
  • 大阪市では、地域包括支援センターや社会福祉協議会でも、申請のサポートに応じてもらえることがあります。

⑤ 「通院」や「服薬状況」も正確に伝えよう

  • 特に精神疾患の場合、「症状が安定しているように見える」ため、窓口で深刻さが伝わらないこともあります。
    通院頻度・薬の副作用・就労に支障がある具体例をメモして持参するのがおすすめです。
  • 言いにくいことは、紙に書いて提出してもOK。

⑥ 申請が却下された場合も「不服申立て」ができる

  • 一度却下されても、行政の判断に異議を唱える仕組み(不服申立て)があります。
  • 自分一人では難しい場合は、行政書士や法律相談窓口(法テラス・大阪弁護士会など)にも相談を。

「行政書士田中慶事務所(開設申請準備中)ホームページはこちら

具体的な相談先(浪速区役所・大阪市福祉局など)

制度の詳細や申請について相談したい場合は、以下の窓口が利用できます。

■ 浪速区役所 生活支援課(生活支援グループ)

  • 住所: 〒556-8501 大阪市浪速区敷津東1-4-20
  • 電話番号: 06-6647-9872
  • 最寄駅: 地下鉄御堂筋線・四つ橋線「大国町」駅 徒歩約5分
  • 備考: 区役所5階

■ 大阪市福祉局(制度全体の問い合わせ窓口)

■ 大阪市よろず支援窓口(生活困窮者支援)

  • 内容: 生活保護に至る前の段階の支援や、多重債務、家計相談、住宅確保などをサポート
  • 相談先: 各区に設置されており、浪速区では浪速区社会福祉協議会が対応
  • 関連リンク: 大阪市社会福祉協議会
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