障がい者就労継続支援の制度には、A型とB型があります。でも実際には、そのどちらにもすんなり収まらない“狭間”にいる人たちが少なくありません。
このブログでは、実際にA型に通所している私自身の体験も交えて、「A型でもない、B型でもない」その間にいる人たちのリアルと、制度の構造的課題を考えます。
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A型=最低賃金、でも「安定稼働」が求められる現実
A型事業所は、「雇用契約がある」ことが前提であり、最低賃金(大阪府:2025年6月現在で時給1,114円)が保障されています。
これは一見、安心できる制度に思えますが、実際には以下のようなハードルがあります。
- 利用者の賃金は、事業収益から出す必要がある(=給付金では補填不可)
- つまり、事業所側は「ある程度の作業効率・稼働率」を求めざるを得ない
- 欠勤や遅刻・体調不良が続くと、自信喪失につながるし、収入面でも厳しい業況に陥る
安定的な出勤と生産性が求められる中で、「体調に波がある」「日によって集中力が落ちる」人たちは、居場所を失いやすくなります。
B型=無理せず通える場所、でも「工賃では生活できない」現実
B型事業所は、雇用契約のない「非雇用型」の就労支援。体調に合わせて無理なく通える利点がある一方、経済的自立は難しい現状があります。
- 工賃の平均は、全国平均で月額16,507円(令和4年度、厚労省データ)
- 時給換算すると約50~200円程度
- 生活保護や障がい年金と組み合わせて生活している人が多い
とくに障がい年金については、国民年金の場合は2級以上でないと支給されないため、3級相当の人には年金が支給されません。
このような方がB型を選択しても、工賃だけで生活を支えるのはほぼ不可能なのが現実です。
「A型に行くには不安定」「B型では暮らせない」──その狭間にいる人たち
この“狭間”にいる人たちは、こんな状況に置かれています。
- 障害等級が3級。基礎年金が出ない。
- 体調に波があり、毎日決まった時間に出勤するのが難しい。
- A型に挑戦してみるが、欠勤や早退が多くなり、自己否定感が強くなる。
- それでも「B型では生活できない」から、無理をしてA型を継続する。
- 結果、さらに体調を崩し、就労の継続が困難になる悪循環。
誰も悪くないのに、制度の構造そのものが「狭間の人」を苦しめているのです。
就労選択支援がはじまっても、「狭間」の問題は解消されるのか?
2025年10月から始まる新制度「就労選択支援」は、アセスメントにより客観的に就労支援事業所の利用を目指す制度です。ですが、この”狭間”の方々についての問題は、何も解決しません。それどころか、従来では、生活のためにA型事業所に通所すると、自己決定で決めれていたところに、第三者の目が入って通所する種別が決まることとなります。その際に、就労選択支援員が、その当事者の生活状況や収入面まで加味して下さるのか、就労系の事業所の決定と併せて、生活面での扶助(生活保護など)の案内や手続きのサポートをしてくださるのか、まだ何とも言えません。しかし、あくまで「就労選択支援事業所」は、就労選択の支援を行う事業所でしかないのだと考えます。
「できる/できない」で切り分けない支援のあり方を
本来、制度は一人ひとりの「段階」や「希望」に合わせて柔軟であるべきです。
でも今の現場では、「A型=フル出勤できる人」「B型=それ以外」…という、
白か黒かの二者択一で仕分けされているケースも少なくありません。
中には、「工賃が月額100,000円以上も可能!!」と謳っているB型事業者もあれば、ご自身のペースに合わせて出勤時間数や日数を柔軟に対応しますとおっしゃっているA型事業所もあります。しかし、あくまでも、ご自身で探せばあると言う事です。
「週3日、2時間から」「波があるけど、意欲がある」──そんな声に応える余地が
もっとあっていい。そうでなければ、どこにも行き場がない人が増えてしまいます。
「制度の隙間」を生きる人たちに、社会のまなざしを
誰もが、働ける日もあれば、働けない日もある。
それが「人間らしい」と思うのに、制度の中ではその揺らぎが「不適応」とされてしまう。
私は、この“狭間”にいる人たちの存在を、当事者としても、制度に向き合う立場としても、
これからも発信し続けたいと思っています。