2025年6月25日、厚生労働省が発表した資料で、「障がい者の解雇者数が過去最多(9,312人)」となったことが公表されました。
なかでも、就労継続支援A型事業所に関係する解雇が多く、背景には「廃業」「事業縮小」、そして令和6年度の報酬改定が影を落としているとも言われています。
この記事では、制度設計の構造や経営判断の現実を読み解きながら、福祉事業の「責任」と「覚悟」について考えます。
(※厚生労働省 「令和6年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などを公表します」より)
制度が守ってくれているはずのはずだった──A型事業所の許可の仕組み
A型事業所をはじめとする福祉サービス事業所の開設には、
- 法人による申請
- 市区町村や都道府県による許可
という明確なフローが存在します。
しかしその前提には、各自治体が策定する「障害福祉計画」があり、そこでは地域ごとに事業所数や定員の「上限枠」が設定されているはずです。
つまり、「A型事業所が増えすぎた」「飽和状態だ」と言われること自体、制度的に矛盾しています。
本来であれば、需給バランスを行政が管理する仕組みが機能しているはずだからです。
報酬改定のせいなのか?──“本気の運用”が問われる制度の転換点
令和6年度の報酬改定では、一律の減額ではなく、支援の質と人員配置への評価軸が大きく見直されました。
これにより、支援体制をしっかり整えてきた事業所にはむしろ報酬増となるケースもある一方で、
- 支援員の配置が不十分
- 就労支援の質に課題があった
とされる事業所にとっては、厳しい経営環境になったとも言えます。
ここで重要なのは、制度が本気になったとき、経営者側も“本気の運用”が求められるということ。
これは単なる減額ではなく、「就労支援の質」を可視化し、問い直す制度側からの強いメッセージなのです。
A型事業所の倒産がもたらす、本当の“被害者”
一般企業であれば、倒産しても従業員には再就職の選択肢があるかもしれません。
しかし、A型事業所が閉鎖すると、雇用と支援の両方を失う利用者にとっては、生活基盤そのものが崩れてしまうのです。
「じゃあ、別のA型に行けばいいじゃないか」という声もありますが、
- 通所距離
- 職場の雰囲気
- 特性への理解
- 環境変化による体調への影響
など、当事者にとっては「命がけの再出発」であるケースも多々あります。
就労支援とは、人の人生を一部引き受ける覚悟を伴う事業です。
それを担う事業者の経営の責任は、通常よりもさらに重みが増すといえるでしょう。
今こそ、行政も事業者も“本気”でかじを取るべきとき
今回の大量解雇は、単に「弱い事業者が淘汰された」だけでは済ませられません。
むしろ、これまでの制度運用や許認可、経営支援の在り方を行政自身が振り返る必要があるのではないでしょうか。
- 廃業や倒産に至った背景分析の公表
- 支援員の人材確保対策
- 利用者の就労継続支援のためのセーフティネット構築
こうした“再発防止”の観点での制度強化と、支援の質向上が、今求められています。
だからこそ、私は「ピア行政書士」として伴走したい
私は、制度のプロとしてだけでなく、当事者としての経験を持っています。
だからこそ、事業所の経営責任の重みも、障がい者としての働くことのしんどさも、両方分かっているつもりです。
これから福祉事業に真剣に取り組もうとする経営者様や、
「このままでは終わらせたくない」と再起をかけるオーナー様にこそ、
ピア行政書士として、伴走し続けたいと考えています。
結び:
制度と現場のギャップが噴き出した今、必要なのは「誰かのせいにする」ことではありません。
制度を活かすも殺すも、人。
制度の“本気”に、私たちも本気で応えていくときが来ているのではないでしょうか。