障がい福祉事業を合同会社で始めるメリット・注意点|株式会社との違いを解説

※この記事は、2026年8月時点の制度・実務に合わせて内容を確認し、全面的に更新しています。

現在は大阪市中央区で行政書士事務所を開業し、障がい福祉事業所の開設支援・運営支援を行っています。

目次

障がい福祉事業は合同会社でも始められる

障がい福祉サービス事業を始めるには、原則として法人格が必要です。

法人の種類は、社会福祉法人やNPO法人に限られていません。株式会社、合同会社、一般社団法人などの法人も、指定基準を満たせば障がい福祉サービス事業者の指定を受けることができます。

したがって、合同会社でも、就労継続支援B型、生活介護、共同生活援助、放課後等デイサービスなどの事業を始めることは可能です。

ただし、「合同会社であれば障がい福祉事業に向いている」と一概に言えるわけではありません。

法人を選ぶ際は、設立費用だけでなく、経営に参加する人、利益の分配、資金調達、将来の事業承継なども考える必要があります。

合同会社とは

合同会社は、会社法に基づく営利法人の一つです。

合同会社に出資する人を、法律上は「社員」と呼びます。ここでいう社員は、一般的な従業員という意味ではなく、会社の構成員・出資者という意味です。

合同会社では、原則として社員自身が会社の業務を執行します。

定款で業務を執行する社員を限定したり、その中から代表社員を決めたりすることも可能です。

株式会社では、株主が出資し、取締役が会社を経営するというように、出資と経営が分かれています。

これに対して合同会社では、出資者と経営者が原則として一致する点が大きな特徴です。

合同会社で障がい福祉事業を始めるメリット

1.設立時の費用を抑えやすい

合同会社の定款は、公証人による認証を受ける必要がありません。

株式会社では定款認証が必要ですが、合同会社では定款認証手数料が発生しないため、設立時の法定費用を抑えられます。

合同会社の設立登記にかかる登録免許税は、資本金の額に1,000分の7を乗じた金額です。その金額が6万円に満たない場合は、最低額の6万円となります。

なお、紙の定款を作成する場合には、原則として収入印紙が必要です。電子定款を利用すれば、紙の定款に対する収入印紙は不要になります。

2.会社内部のルールを比較的柔軟に決められる

合同会社では、業務の執行方法や利益の配分などについて、定款で一定の範囲を柔軟に定めることができます。

たとえば、出資割合とは異なる利益配分を定款で定めることも可能です。

複数の人で設立する場合には、それぞれの役割、業務執行権、代表権、利益配分などを、会社の実情に合わせて設計できます。

ただし、柔軟に決められるからこそ、定款の内容が曖昧だと、後になって社員間の意見が対立する可能性があります。

3.少人数で意思決定しやすい

一人で合同会社を設立し、その人が代表社員として経営することもできます。

少人数で運営する場合は、株主総会や取締役会を設ける必要がなく、会社内部の意思決定を比較的簡素にできます。

障がい福祉事業所を一人または少人数の経営陣で立ち上げる場合には、意思決定の仕組みが分かりやすいという利点があります。

もっとも、意思決定が速いことと、質の高い支援ができることは別の問題です。

支援の質は、法人形態ではなく、人員配置、職員教育、アセスメント、個別支援計画、記録、組織内の情報共有などによって決まります。

4.決算公告の義務がない

株式会社には、定時株主総会の終結後に決算公告を行う義務があります。

合同会社には、株式会社と同じ決算公告の義務はありません。

ただし、税務申告や会計帳簿の作成・保存が不要になるわけではありません。

また、障がい福祉事業者には、経営情報の報告や情報公表制度など、法人形態とは別の報告義務が課される場合があります。

合同会社を選ぶ際の注意点

1.合同会社だから支援の自由度が高くなるわけではない

合同会社は会社内部の運営ルールを柔軟に決められますが、障がい福祉サービスの支援内容を自由に決められるという意味ではありません。

指定障がい福祉サービス事業者は、サービスごとに定められた人員、設備、運営の基準を守らなければなりません。

個別支援計画の作成、サービス提供の記録、虐待防止、身体拘束等の適正化、感染症対策、業務継続計画、研修・委員会などについても、定められた基準に沿って運営する必要があります。

「小規模だから柔軟に運営できる」という理由で、必要な人員や書類、会議、研修などを省略することはできません。

2.社員が複数いる場合は合意形成が難しくなることがある

合同会社では、定款に別段の定めがなければ、業務に関する意思決定を社員の過半数で行います。

重要事項について社員全員の同意が必要になる場合もあります。

二人で合同会社を設立し、持分や権限が同じ場合、意見が分かれると意思決定が止まるおそれがあります。

複数人で設立する場合は、少なくとも次の事項を事前に決めておく必要があります。

  • 誰が業務執行社員になるか
  • 誰が代表社員になるか
  • それぞれの担当業務
  • 意思決定の方法
  • 利益と損失の分配方法
  • 社員が退社する場合の取扱い
  • 死亡や判断能力低下が生じた場合の取扱い
  • 意見が対立した場合の解決方法

3.外部からの出資を受ける仕組みは株式会社と異なる

株式会社は、株式を発行して外部から出資を受けることができます。

合同会社には株式がありません。新たに出資を受ける場合は、その人や法人が原則として社員として会社に加わることになります。

将来、複数の投資家から資金を集めたい場合や、株式による資金調達を想定している場合は、株式会社の方が適している可能性があります。

融資の受けやすさは、合同会社か株式会社かだけで決まるものではありません。

金融機関は、事業計画、自己資金、収支見込み、経営者の経験、返済能力などを総合的に判断します。

4.役員という名称を使わない

合同会社には、株式会社の「取締役」に相当する役職はありません。

経営に関与する人は「業務執行社員」、会社を代表する人は「代表社員」となります。

障がい福祉事業の指定申請書や法人内部の書類を作成する際は、株式会社の書式をそのまま流用せず、合同会社の機関設計に合った役職名を使用する必要があります。

5.社会保険や税務の負担は株式会社と大きく変わらない

合同会社も法人です。

法人事業所は、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。

代表社員一人だけの会社であっても、代表社員へ報酬を支払う場合などは、社会保険への加入手続が必要になることがあります。

また、法人税、法人住民税、法人事業税などの申告も必要です。

設立費用が株式会社より低いことだけを理由に合同会社を選んでも、設立後の税務・社会保険・会計にかかる負担が大幅に軽くなるわけではありません。

障がい福祉事業の指定申請で確認すること

法人の定款目的

障がい福祉サービス事業者の指定を受けるには、定款と登記事項証明書の事業目的に、実施する事業に対応した内容が記載されている必要があります。

たとえば、障害者総合支援法に基づくサービスを行う場合には、次のような目的を記載します。

「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障がい福祉サービス事業」

児童発達支援や放課後等デイサービスなどを行う場合は、児童福祉法に基づく障がい児通所支援事業に対応した目的が必要です。

自治体によって推奨する記載例が示されているため、法人設立前に指定権者へ確認することが重要です。

法人格だけでは指定を受けられない

合同会社を設立しただけで、障がい福祉事業を始められるわけではありません。

指定を受けるには、少なくとも次の事項を整える必要があります。

  • サービスごとの人員配置基準
  • 管理者やサービス管理責任者等の資格・実務経験
  • 事業所の設備基準
  • 消防法、建築基準法、都市計画法等の確認
  • 運営規程や重要事項説明書等の作成
  • 収支予算と運転資金
  • 指定申請や事前協議のスケジュール

物件を契約してから設備基準を満たせないことが判明したり、人員を採用してから資格要件を満たさないことが分かったりすると、大きな手戻りが生じます。

法人設立、物件、人員、資金、指定申請を別々に進めるのではなく、全体の順序を整理して進めることが大切です。

就労継続支援A型には法人目的の注意点がある

就労継続支援A型を行う法人には、社会福祉事業を専ら行うことが求められます。

そのため、定款に障がい福祉とは関係のない事業目的を多数記載すると、指定要件との関係で問題になる可能性があります。

A型事業を予定している場合は、法人設立前に、定款目的と事業構成を指定権者へ確認してください。

株式会社と合同会社のどちらを選ぶか

合同会社が選択肢になりやすいケース

  • 一人または少人数で経営する
  • 設立時の法定費用を抑えたい
  • 外部投資家から広く出資を募る予定がない
  • 出資者自身が事業運営に関与する
  • 社員間の役割と意思決定方法を明確にできる

株式会社が選択肢になりやすいケース

  • 将来、株式による資金調達を考えている
  • 出資者と経営者を分けたい
  • 複数の出資者を受け入れる可能性がある
  • 将来の株式譲渡や事業承継を想定している
  • 取引先や金融機関への説明のしやすさを重視する

どちらの法人形態を選んでも、障がい福祉サービスの指定基準や支援の質に関する義務は変わりません。

法人形態は、理念の優劣で選ぶものではなく、経営体制と将来計画に合うかどうかで判断します。

助成金・補助金は法人形態だけで判断しない

合同会社が利用できる助成金や補助金はあります。

ただし、「合同会社だから利用できる」「障がい福祉事業だから対象になる」と一律に判断することはできません。

制度ごとに、業種、従業員数、雇用状況、所在地、事業内容、対象経費、申請時期などの要件があります。

雇用関係の助成金は社会保険労務士、税務は税理士、登記は司法書士、法人設立に伴う定款作成や障がい福祉事業の指定申請は行政書士など、内容に応じて相談先も異なります。

補助金の採択や助成金の受給を前提に、資金計画を組むことは避けるべきです。

まとめ

合同会社でも、障がい福祉サービス事業者の指定を受けることは可能です。

合同会社には、定款認証が不要で設立費用を抑えやすいこと、少人数で意思決定しやすいこと、会社内部のルールを比較的柔軟に設計できることなどの特徴があります。

一方で、社員が複数いる場合の合意形成、外部からの資金調達、利益配分、退社や事業承継については、設立前に十分な検討が必要です。

また、合同会社を設立しただけでは、障がい福祉事業を始めることはできません。

定款目的、人員配置、物件、設備、資金、運営書類、指定申請のスケジュールを一体として整理する必要があります。

株式会社と合同会社のどちらが優れているかではなく、誰が経営し、どのように資金を準備し、将来どのように事業を続けるのかに合った法人形態を選ぶことが大切です。

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開設は、物件・人員・制度を順番に整理することで、進め方が見えやすくなります。

物件・人員・制度の順序を整理しておくことで、途中の手戻りを減らしやすくなります。

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