概要
- 対象条件:前年度に「一般就労へ移行し、6か月以上定着した元利用者」が1名以上いること。
- 区分:算定している基本報酬(サービス費(Ⅰ)=7.5:1、サービス費(Ⅱ)=10:1)で加算区分が決まる。
- 単位数:前年度の評価点に応じて、1日あたり 最大93単位(A型(Ⅰ))/最大90単位(A型(Ⅱ))。
1)そもそも「就労移行支援体制加算」とは?
就労移行支援体制加算は、就労継続支援A型(およびB型)から一般就労へ移行し、一定の定着(6か月以上)を達成した実績がある事業所を評価するための加算です。前年度の就労定着実績に基づき、所定単位数に該当人数を乗じて算定します(年度ごとに判定)。
2)「就労定着者」とは? — カウントのルール(実務でここを押さえる)
要点
- 「就労定着者」=就労継続支援を受けた後に企業等に雇用され、継続して6か月以上在職している者。この条件を満たす者が前年度に1名以上いることが必要です。
- 注意:前年度実績のカウントに関する注記があり、「就労継続支援A型事業所への就職」は除外される等の細かな扱いがあります。実際の判定では厚生労働省の表記・注釈を確認してください。
具体的な日付例(分かりやすく)
- 例:令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)に加算を算定する想定なら、前年度(令和7年度=2025年4月1日〜2026年3月31日)の実績を基に判定します。
- 前年度内(~2026/3/31)に「就職開始日」から6か月以上継続していることが必要 → 最終的に2026/3/31時点で6か月以上在職していればカウント可能です。この点は現場での誤解が多いので、就職開始日と在職の証明(雇用証明書・タイムカード等)を必ず残してください。
3)加算区分(Ⅰ/Ⅱ)と人員基準の違い
- サービス費(Ⅰ):人員配置7.5:1以上を満たす事業所が算定可能(A型で手厚い人員配置の区分)。
- サービス費(Ⅱ):人員配置10:1以上の区分。配置比率に応じて基本報酬・加算が異なります。
4)算定単位(概略) — 定員別・評価点別のイメージ
(※評価点は事業所の体制や実績により算出されます。詳細は厚生労働省のコード表・算定表をご確認ください。)
主要な目安(A型):
- A型(Ⅰ:7.5:1)→ 定員20人以下:評価点に応じて 50〜93 単位/日(評価が高いほど上限に近づく)。
- A型(Ⅱ:10:1)→ 定員20人以下:評価点に応じて 47〜90 単位/日。
(実務例)
- 前年度の就労定着者が1名、自事業所がA型(Ⅰ)・定員20人以下、評価点で上位なら 93単位/日 × 利用日数 がその年の加算単位になる(人数が複数なら人数分を乗じる)。地域単価を掛け算すると加算額になります。
5)請求・証拠書類:実務チェックリスト
- 前年度に「就職→6か月継続」した利用者の就労開始日が分かる書類(雇用契約書、給与支払証明、雇用主からの在職証明など)。
- 利用者が当該事業所の支援を受けていた記録(支援計画、面談記録、就職支援の記録)。
- 事業所の人員配置計算(常勤換算)と過去1年間の平均利用者数(定員判定要)を整理。
- 評価点(体制等スコア)計算に使う資料(体制の整備・訓練記録など)。
- 月ごとの算定対象日数を整理(当該年度の請求で日単位に乗じられる)。
- (大阪の事業所向け)工賃や目標工賃に関する都道府県への報告・公表対応:大阪府の工賃実績公表や様式を確認・保存。
6)よくある間違い・注意点
- 「就職が決まった=すぐカウント」は×:6か月継続が必須(開始日と継続を証明する書類が必要)。
- A型→A型への移動(A型事業所間の就職)は加算の前年度実績に含まれない(厚生労働省表注記参照)。扱いは要確認。
- 評価点(スコア)で単位が大きく変わるため、体制整備(支援記録・訓練実績・職員の配置)を年間通して整えることが重要。
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7)大阪の事業所向けワンポイント
- 大阪府は工賃(賃金)実績を毎年集計・公表しています。事業所は都道府県の指示に従い、工賃目標や実績を整理・報告する必要があるケースがあります。大阪府の様式や相談窓口を活用すると実務がスムーズです。
8)計算の簡単なサンプル
- 事業所:A型(Ⅰ)、定員20人以下、評価点で「上位(93単位/日)」を適用
- 前年度の就労定着者:1名
- 今月の利用日数:20日
→ 93単位 × 1名 × 20日 = 1,860単位(これに地域の1単位当たり単価を掛ける)
(※実際の請求では該当する月・日数の取り扱いや他加算との併用制限などに注意してください)
9)Q&A
Q1:就職先が派遣や短時間雇用でもカウントできますか?
A1:就労形態自体(正社員/派遣など)よりも「6か月以上の継続就労」がポイント。具体的な証明は雇用主名のある在職証明や給与支払記録などが有効です。
Q2:前年度の「いつからいつまで」をどう扱えば良い?
A2:加算を算定したい対象年度の「前年度」全体(例:2026/4/1算定→前年度は2025/4/1〜2026/3/31)を基準に、前年度末時点で6か月以上在職しているかを確認します。
Q3:複数名いる場合の扱いは?
A3:前年度に6か月以上定着した人数分を所定単位数に乗じて算定します(人数が増えるほど加算は大きくなります)。
Q4:大阪独自のルールは?
A4:基本は国(厚労省)ルールに従いますが、大阪府が求める工賃公表や計画書の提出などの運用面の指示があります。大阪府の事業者様式を確認してください。
参考資料(主要ソース)
- 令和6年度 障害福祉サービス等報酬関係(厚生労働省 公表資料) — 報酬改定等の総合ページ。
- 就労継続支援A型 サービスコード表(厚生労働省:単位表・注記) — 加算の単位表・注記(前年度の取扱い等)。
- 就労移行支援に関する報酬・基準PDF(厚生労働省) — 加算等の説明。
- 大阪府:工賃(賃金)実績の公表・工賃向上支援情報(事業所向け参考)。
- 大阪府:事業者様式ライブラリー(報告様式など)。
最後に
この記事を読んで「自分の事業所は条件を満たしている?」と不安な場合、前年度の就労定着者の証明(雇用開始日・継続の裏付け)をまず集めてください。集めた資料をもとに算定可否を一次チェックします。お問い合わせはお気軽にどうぞ。
B型事業所版の就労移行支援体制加算についても、近日中にブログを公開予定です。A型事業所とは異なる算定要件や注意点について詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。
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私自身、障がい者福祉サービス(A型・B型事業所)を利用していた経験があります。
「現場の実際を知りたい」
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